◎2021年8月から今年2月末までの間に、民間人397人が主にホラーサーン州のISIS-K(イラクのイスラム国家とレバント)の攻撃で殺害された。
2021年9月22日/アフガニスタン、首都カブール、タリバンの戦闘員(Getty Images/AFP通信)

国連の新しい報告書によると、アフガニスタンでは昨年8月以来、タリバン政権下で約400人の民間人が殺害され、その80%以上がイスラム国(ISIS)関連グループによるものだったという。

この報告書は8月の旧アフガン政府崩壊以降の人権状況などをまとめた初めての主要な報告書であり、女性やジャーナリストの権利の後退などもまとめられている。

国連は報告書の中で、「2021年8月から今年2月末までの間に、民間人397人が主にホラーサーン州のISIS-K(イラクのイスラム国家とレバント)の攻撃で殺害された」と明らかにした。

また、ISIS-Kとつながりのある50人以上が同期間に殺害され、その多くが拷問や首をはねられたり、処刑後道端に放置されたりしたという。

ミシェル・バチェレ人権高等弁務官は7日、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で行われた会議の演説で、「アフガニスタンの人権状況は危機的な状況にある」と懸念を表明した。「ISIS-Kは主にシーア派イスラム教徒に対して、いくつかの自爆テロや攻撃を行いました...」

ISIS-Kは2014年末にアフガニスタン東部で発足したと考えられており、昨年8月のタリバン政権樹立後、全国に広がった。

昨年8月にカブールの空港で発生した自爆テロもISIS-Kの攻撃と考えられている。この自爆テロでは米兵13人を含む200人近くが死亡した。

バチェレ弁務官は演説の中で、「タリバンは女性の権利と自由を抑制してきた」と述べ、対応を改めなければ西側諸国の支援は得られず、事態はさらに悪化する可能性があると警告した。

会議に合わせてジュネーブに集まった活動家やデモ参加者もタリバンの女性差別、恣意的な逮捕、表現の自由の侵害などに懸念を表明した。

ある活動家はアルジャジーラの取材に対し、「市民はタリバンの圧政に苦しみ、一部地域の女性や子供はテロリストの脅威にさらされている」と述べ、国際社会に対応を求めた。

旧タリバン政府(1996年~2001年)は女性を学校や公共の場から排除し、ブルカ(全身を覆うイスラム教のベール)の着用を強制し、公の場でむち打ちや石打の刑に処すことも珍しくなかった。

OHCHRは今月末にアフガニスタンの特別報告者を任命し、タリバンなどによる人権侵害の調査を開始する予定である。

バチェレ弁務官はアフガニスタンの人道的危機について、「多くの国民が壊滅的な飢餓に直面している」と深刻な懸念を表明した。「人口の半分以上が極度の飢餓に苦しんでいます。また、児童労働、児童婚、人身売買も蔓延しており、人権はほぼ機能していません」

国連によると、約900万人がいつ飢え死にしてもおかしくない状況に置かれているという。

しかし、旧アフガン政府を支えた西側の支援が本格的に再開する見通しは立っていない。

国際通貨基金(IMF)と世界銀行は援助を削減し、米国はアフガン中央銀行の資産を凍結した。

ジョー・バイデン大統領はアフガン中央銀行の資産70億ドル(約8,000億円)のうち35億ドルを9.11遺族の支援に充てる大統領令に署名している。残りの35億ドルは国連管理の信託基金としてアフガン国民の援助に充てられる予定だが、アフガン中央銀行がタリバンの影響を受けないと確約できるのであれば、同行に戻される可能性もある。

9.11の遺族はアフガン中央銀行の資産をすべて補償に充てるよう裁判所に求めている。同行は約90億ドル(1兆円)の資産を海外に保有しており、残りの20億ドルは主にドイツ、UAE、スイスにある。

援助機関や専門家はこれらの措置が人道的危機を悪化させているとし、タリバンに対する制裁を解除するよう求めている。米国は先月末、アフガンに課していた商業・金融取引制限の一部を緩和した。

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