事態は際限なく悪化し続けている

世界保健機関(WHO)は、政府が決定的な行動をとらず、国民を誤った方向へ導けば、パンデミックは手の付けられないレベルまで悪化すると警告した。

13日、テドロス事務局長は記者団に対し、「あまりにも多くの国々が誤った方向に進んでいる。進むべき道を見直さなければならない。世界中の研究者や専門家が感染予防に有効な対策を証明しているが、実践しなければ無意味だ。結果、感染経路不明ケースが増え続けている」と語った。

パンデミックの震源地がアメリカ大陸に移ってから数カ月。当初、感染ペースは1、2カ月で落ち着き、「次はアジアがホットスポットになる」と噂されていた。しかし、アメリカとブラジルの状況は収束するどころか、日を追うごとに悪化している。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月13日時点のアメリカの累計感染者数は約337万人、137,000人以上の死亡が確認された。

【コロナウイルス感染状況/7月13日時点】

累計感染者累計死者新規感染者
(7月12日)
アメリカ337万人137,000人60,719人
ブラジル187万人72,151人24,831人
中国85,522人データなし8人

ジュネーブでの記者会見の中でテドロス事務局長は、「指導者からの誤ったメッセージ」がパンデミックを制御すべく最前線で奮闘している医療関係者や国民の信頼を損ない、指揮を低下させていると述べた。

さらに、感染を抑え込まずにロックダウンを緩和もしくは解除する国に対し、「コロナウイルスの脅威は取り除かれていない。そして、発生当初から現在まで、最も危険な敵であることも変わりない。しかし、一部の政府や指導者は、これを抑えるどころか悪化させる道を選択している」と付け加えた。

テドロス事務局長は、社会的距離のルール、手洗いの励行、マスク着用などの感染予防対策の重要性を強調したうえで、「皆が基本を守り、感染予防に努めねばならない。それを怠れば我々が行き着く先はひとつ。パンデミックは激化し、さらに多くの命が失われるだろう」と警告した。

WHOの緊急対応責任者を務めるマイク・ライアン博士は、アメリカ大陸の特定地域でのロックダウン緩和もしくは解除が感染爆発につながったと述べた。

アメリカの感染状況も深刻だが、ラテンアメリカ(南アメリカ大陸)はさらに酷い事態と言ってもよい。確認されている累計死者数は145,000人以上である。ただし、PCR検査は十分に行われておらず、また、貧困地域などの死者数が全くカウントされていない、という報告もある。

ラテンアメリカの死者の半分はブラジルで確認されている。しかし、同国のボルソナロ大統領はいまだにコロナウイルスを軽視し、州政府が発出した感染予防措置(厳格なロックダウン、マスク着用義務化など)の解除を強く求めている。

ライアン博士は、経済活動とロックダウンのバランスをとることは非常に難しいと認めたうえで、「感染爆発の起きた特定地域だけを限定的に封鎖し、ウイルスの蔓延を防ぐことが重要である。これは当然痛みを伴う措置だが、人々は政府の対策を理解し、政府は人々を財政的に支援しつつ、防御態勢を取らねばならない」と述べた。

「ワクチン開発が進んでいるから大丈夫」、という淡い期待にすがるべきではない。また、ウイルスへの感染に伴い発生すると言われる抗体免疫についても同様である。

コロナウイルスと共存する方法を学び、実践している国の多くが感染の抑制に成功している。以前の震源地、欧州では、マスクの着用や社会的距離のルールが定着しつつあり、結果、新規感染者および死者は減少した。中国、韓国、ベトナム、タイ、日本、シンガポールなどのアジア地域も同様である。

キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、「コロナウイルスの免疫は短命かもしれない」と発表した。罹患者96名で試験(調査)を行った結果、コロナウイルスを中和できる抗体は3カ月程度で衰え始めたという。

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ファウチ医師vsホワイトハウス

ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は、医療関係者とトランプ大統領との関係悪化をうけ、政権の標的になった。

12日、トランプ政権はファウチ医師の誤ったコメントリストを公開。「タスクフォースを誤った方向に導いている」と批判した。

ホワイトハウスは、ファウチ医師のマスク着用アドバイスとコロナウイルス対策の厳しさと難しさに関する発言を問題視している。

ファウチ医師はパンデミックに関するトランプ大統領の誤ったコメントを否定し続けてきた

12日に公開された「ファウチリスト」によると、いくつかのホワイトハウス当局は「ファウチ医師が発信した誤った情報の数(回数)を懸念している」と書かれていた。

ホワイトハウス報道官のケイリー・マケナニー女史は記者団に対し、「このメモはワシントン・ポストからの質問に対する回答である。ただし、大統領とファウチ医師の対立を一部の野党議員のように騒ぎ立てるのは愚かな行為である。二人は良好な関係を築いてきた」と語った。

一方、トランプ大統領の経済顧問を務めるピーター・ナヴァロ氏は、「1月下旬に初めてコロナウイルス問題が取り沙汰された時、ファウチ医師はメディアに対し心配しなくてもよいと言った。また、彼は死亡率が低下したから経済活動を再開させる、という安易な考えは危険だと言った」とコメントした。

タスクフォースのメンバーのひとり、ブレットギロワール提督は、NBCニュースに出演した際、ファウチ博士の発言を尊重する一方で、常に正しいとは限らないと語った。

提督は、「ファウチ医師の発言は国益ではなく、公衆衛生に特化しており、本人もそのことを十分理解している。ゆえに、100%正しいわけではなく、衝突を生むことになった」と述べた。

先週、トランプ大統領はお膝元のFOXニュースに出演した際、「ファウチはいい人間だが、多くの過ちを犯した」と語っている。

アメリカの感染状況は一向に収まらず、日に日に激しさの度合いを増している。11月に大統領選挙を控えるトランプ大統領は、マスク着用などの感染予防対策を政治化していると非難され、対立候補のジョー・バイデン前副大統領に後れを取っている。

ファウチ医師は間違っているのだろうか?

ニューヨーク・タイムズが行った世論調査によると、26%の有権者がトランプ大統領を支持し、ファウチ医師の支持率は67%だった。

これが共和党支持層になると、66%がトランプ大統領支持に回る。しかし、ファウチ医師の発言に対しても、51%が「信頼する」と回答した。

民主党支持層でトランプ大統領を支持した有権者は4%。ファウチ医師は81%だった。なお、医療関係者の84%がファウチ医師の発言を「正確かつ適切な情報」と回答した。

2月29日、アメリカの累計感染者は100人未満だった。この日の記者会見、ファウチ医師は中国で発生したパンデミックに対し、「必要以上に恐れることはないが、状況は確実に進展している」と述べた。

3月、ファウチ医師と保健当局は、公衆の場でのマスク着用を推奨しなかった。しかし、マスクの重要性が世界中で認識され始め、「当時は医療従事者向けのサージカルマスク不足を懸念していたが、考えを改めるべきだ」と述べ、以降、屋外でのマスク着用を強く求め続けてきた。

ファウチ医師はHIV/AIDの蔓延を含む健康・公衆衛生問題について、共和党と民主党の大統領、計6名に助言を行ってきた。また、1984年からアメリカ国立衛生アレルギー・感染症研究所の所長を35年以上務めている。

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