さよならロックダウン、おかえり観光客
スペイン政府は全国に展開していたロックダウン(非常事態)および、一部を除く欧州各国との国境封鎖を解除。3か月の間、欧州で最も厳しいレベルのロックダウンを継続してきたが、コロナウイルスの新規感染者を抑えることができたと判断し、今回の措置に踏み切った。なお、ポルトガルとの国境については、マルセロ・リベラ・デ・ソウザ大統領の要請を受け、7月1日まで閉鎖を継続する。
ペドロ・サンチェス首相は、「規制は解除したが、引き続きウイルスへの警戒を怠らず、衛生管理を遵守しなければならない。第二波を引き起こさない対策が必要である」と警告した。
ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、スペインの累計感染者数は約246,000人、これまでに28,322人の死亡が確認された。
同国は3月14日に非常事態令を発令し、その後数週間、人々は散歩や運動に出かけることを許可されず、子供たちも自宅待機を余儀なくされた。
観光大国スペインは、毎年8,000万人以上の観光客を受け入れ、街は期間を問わず大いににぎわう。観光業はGDPの約12%を占める非常に重要な産業である。
観光業が一番盛り上がる時期は、夏。これから始まるサマー(ホリデー)シーズンを前に欧州各国との国境封鎖を解除することは、スペイン経済にとって非常に重要なことである。
ただし、コロナウイルス感染のリスクがゼロになったわけではない。現時点においては、空港到着時の検温、ウイルス感染有無のチェック、滞在期間中の連絡先情報開示が求められる。
サンチェス首相の言う衛生管理対策も引き続き徹底される。社会的距離のルールに伴い、同国の定める1.5mの確保はあらゆる場所で遵守しなければならず、手のアルコール消毒は必須。また、距離を確保できない店舗、公共交通機関などを利用する際はマスク着用を求められる。
スペイン当局はポルトガルを除く欧州各国との国境を開放し、旅行者に対する一定期間の自己隔離も撤廃した。しかし、同外務大臣はイギリスに限り、「英国旅行検疫規則」が継続されるのであれば、スペイン国内にイギリス人が入国する際、14日間の自己隔離を課すと提案している。
エボラ出血熱とHIVに関する研究で有名なピーター・ピオット教授はBBCの取材に対し、「感染者が減少した結果、スペインは国境を開放したが、一歩間違えれば第二波を引き起こす可能性もある。それが現実になれば、経済は甚大な損害を受けるだろう。感染防止対策ルールを継続し、ロックダウン解除が成功だったと思えるように努力しなければならない」と述べた。
【関連トピック】
・コロナウイルス/感染拡大が続くスペイン、介護施設の深刻な実態
・コロナウイルス/欧州のロックダウン緩和方法
・イタリア政府/ロックダウンの段階的な緩和に伴い、旅行制限を解除
BBC News - Coronavirus: Spain welcomes tourists back as emergency ends https://t.co/dLYm5Y8lKe
— Donald Rilea (@Catman_Rilea) June 21, 2020
英国旅行検疫規則
先に述べた「英国旅行検疫規則」は、国外からイギリス国内に入国する者全て(イギリス人も対象)に対し、14日間の自己隔離期間を課すものである。
プリティパテル内務長官は、コロナウイルスが国外から持ち込まれて実績を踏まえ、「より重大な脅威を排除するために、公衆衛生ルールを徹底する必要がある」と述べた。
飛行機、フェリー、電車などでイギリスに到着する旅行者、ビジネスマンなどは、14日間の自己隔離を遵守してもらうために、入国期間中の連絡先および滞在先の提供を求められる。なお、これを拒否した場合、罰金100ポンド(約13,000円)が科され、入国できない可能性もある。
自己隔離期間中は当局の監視下に置かれ、違反した場合は最高1,000ポンド(約130,000円)の罰金を科される。また、期間中、公共交通機関やタクシーは利用できない。さらに仕事、学校、公共施設、スーパーマーケットの利用も禁止。食料や生活必需品も購入できないため、最高レベルのロックダウンと言っても過言ではないだろう。
コモントラベルエリア(アイルランド共和国、チャネル諸島、マン島)に14日間以上滞在し、コロナウイルスに感染していないことが確認されている入国者であれば、イギリス国内に入る際の検疫は免除される。また、以下の条件を満たす者も免除対象。
●道路運送および貨物運送労働者
●基本的なヘルスケアを提供する医療従事者および専門家
●農業従事者の一部。施設(農場など)を自己隔離場所と見なすことができる
●仕事のために、少なくとも週1回海外旅行を行っているイギリス居住者
御覧の通り、同規則は非常に厳しく、イギリスのあらゆる産業に悪影響を及ぼすと指摘されている。政府は感染率が低く、ヘルスケアシステムを徹底している国に限り、検疫免除とする検討に入ったようだ。
ロックダウンの段階的な緩和もしくは解除を進める他の国々も、入国者に対する検疫等の措置を徹底している。
●フランス政府は、イギリス人入国者に対し、到着後14日間の自己隔離を要請
●アメリカ政府は、イギリス人の入国を禁止している。ただし、アメリカ国籍保有者、その家族、および特定の例外を満たす者を除く。
●アラブ首長国連邦は、外国人居住者向けの厳しい入国規制を発動している。
●オーストラリアに入国するイギリス人は、特別な免除ビザを申請、許可を得なければならない。
旅行・観光業界およびその他の関連団体は、英国旅行検疫規則に大反対している。
ブリティッシュ・エアウェイズ、イージージェット、ライアンエアーの3社は、この規則に猛反対し、裁判所に異議を申し立てた。また、フェリー会社を代表する英国港湾協会も、あまりに厳しすぎると反対を表明している。
旅行・観光業界を支える航空各社は、運行本数を徐々に増やし、ロックダウンが解除される日を待ち構えている。イージージェット社は、欧州への一部フライトを再開、全ての乗客および客室乗務員にマスク着用を義務付けた。
ライアンエアー社は、7月1日からフライトの40%を再開する予定。空港及び機内での感染予防対策は、他社と同レベル。ひとまずは英国旅行検疫規則に従い、厳しい検疫措置を講じる。
ブリティッシュ・エイウェイズ社は、7月1日から検疫規則に従い、フライトの50%を再開する。
【関連トピック】
・英国旅行検疫規則/ヤバすぎる計画に航空会社が異議申し立て
・アメリカン航空/マスク着用ルールに従わなかった乗客を追放
・コロナウイルス/飛行機への革新的な搭乗方法
Coronavirus: What are the UK travel quarantine rules? https://t.co/hlQiVx8poc
— Pramod Srivastava (@pksrivastava6) June 14, 2020