石油産業終結発言がもたらす波紋
トランプ大統領はジョー・バイデン氏の「石油産業終結発言」をキャッチし、チームバイデンへの追撃を狙っている。
22日の第3回大統領討論会終盤、バイデン氏は「石油産業からの移行を目指している」と発言。これに対しトランプ大統領は「ジョーは石油産業を破壊するだろう。テキサス州、覚えているだろうか?オクラホマ、ペンシルベニア、覚えているだろうか?」と猛反撃した。
さらにバイデン氏は、石油産業は「著しく」汚染されており、それに対する連邦補助金をやめると明言した。
23日、バイデン氏は石油からの移行について語った時、「産業ではなく、連邦補助金の廃止について話していた」と主張した。
バイデン氏は世論調査でトランプ大統領を大きくリードしている。しかし、重要州のポイント差は拮抗しており、小さなつまづきが致命傷になりかねない。
バイデン氏は石油について何と言ったのか?
22日の討論会終盤、トランプ大統領はバイデン氏に「あなたは石油産業を閉鎖しますか?」と質問した。
これに対しバイデン氏は、次のように述べた。
ジョー・バイデン氏:
「私は石油産業からの移行を目指している」
「石油産業は著しく汚染されているからだ」
バイデン氏はアメリカはセロエミッションを目指し、化石燃料を再生可能エネルギーに置き換える必要があると述べた。
民主党左派は、気候変動との戦いの一環として石油、ガスへの依存を終わらせるべきと主張している。
しかし、この政策は石油産業の重要拠点の労働者から拒否される可能性が極めて高い。選挙の結果に大きな影響を与えるオハイオ州、テキサス州、そしてペンシルベニア州はシェールガスの一大生産地である。
チームバイデンは何と言った?
チームバイデンは、「バイデン氏が産業全体ではなく、化石燃料会社への連邦補助金を”段階的に”廃止することを検討している」と声明を発表した。
またバイデン氏も23日のテレビ演説の中で、「化石燃料は2050年まで排除されないだろう」と述べた。
民主党副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員も火消しに追われている。
ジョージア州アトランタに到着したハリス氏は記者団に対し、次のように述べた。
カマラ・ハリス上院議員:
「ジョー・バイデンは水圧破砕を禁止するつもりはない」
「彼は産業への補助金に手を加えるつもりだ。しかし、アメリカで水圧破砕が禁止されることはない」
※水圧破砕:地下の岩体に超高圧の水を注入して亀裂を生じさせる手法、 高温岩体地熱発電、シェールガス・タイトオイルの採取に用いられる。
アメリカはシェール革命で国内の石油生産を大幅に押し上げ、再生可能エネルギーへの投資を主張する環境保護主義者や団体からの懸念を引き起こした。
チームトランプはバイデン氏が「水圧破砕を禁止する」と述べた発言をキャンペーン動画にアップし、攻勢を強めている。
チームトランプのキャンペーン動画
石油産業の反応
トランプ大統領を支持するコンチネンタル・リソーシズ社のハロルド・ハムCEOはWSJの取材に対し、「石油とガスの生産を制限すると、ガソリン価格の上昇とエネルギー不足につながる」と語った。
ハロルド・ハムCEO:
「バイデンが大統領になれば、消費者は負ける」
ロビー活動に熱心なアメリカ石油協会のマイク・サマーズ会長は別のインタビューで、「バイデン氏のコメントは期待はずれ」と述べた。
弾薬を手に入れたトランプ大統領
23日、フロリダ州ペンサコーラで集会を開いたトランプ大統領は、バイデン氏の発言を繰り返し間違いと強調した。
ドナルド・トランプ大統領:
「ジョーは石油産業を破壊する。彼が大統領になれば、何百万もの雇用が失われるだろう」
「彼は5つか6つの州を失ったと思う。2ドル以下のガソリンは好きですか?私は好きです」
今回の発言でトランプ大統領が有利になると考えられる州は、オハイオ、テキサス、ペンシルベニアなどのシェールガス生産地である。
トランプ大統領はバイデン氏の過去の発言を何度も利用してきたが、いずれも失敗に終わっている。しかし、22日の夜、大統領は新しい弾薬を見つけた。