60年近く前、ドイツの首都ベルリンを訪れたジョン・F・ケネディ大統領は、群衆から割れんばかりの拍手喝采を浴びた。
現在、当時子供だったドイツ国民は、アメリカ合衆国の最高司令官を冷めた目で見ている。
ドイツ国民のひとり:
「第二次世界大戦後に生まれた私の世代にとって、アメリカは自由と民主主義の象徴だった」
米大統領選2020とドイツ
かつて「アンゲラ・メルケル首相を魅了した」と主張するトランプ大統領は、ドイツでは依然として非常に人気がない。
ピュー研究所が行った最近の調査によると、ドイツはトランプ大統領を特に「評価していない/不利に評価している」という。
なお、ドイツを率いるムッティ(お袋)がトランプ大統領の言動、ヘアスタイル、政治スタンスに魅了されたことは一度もない。
メルケル首相はNATOに対するトランプ大統領の否定的な態度、気候変動問題を軽視しパリ協定から撤退する身勝手さ、そして、イランの核合意の拒否に公然と失望した。
両者の信頼関係の欠如は、メルケル首相とバラク・オバマ前大統領が築き上げた関係とは対照的。政府がトランプ政権との協力関係を構築できていないことは周知の事実である。
しかし、メルケル首相もホワイトハウスとの取引を停止し続けようとは思っていない。ドイツはアメリカの運命を決める重要な一戦を楽しみにしている。
ドイツの外務委員会議長を務めるノルベルト・レットゲン議員は、メルケル首相の後任候補のひとりである。同氏はBBCニュースの取材に対し、次のように述べた。
ノルベルト・レットゲン議員:
「この4年、トランプ大統領の行動は疑問視しなければならないことばかりだった」
「外交政策の転換、NATOに対する高圧的な姿勢、それは第二次世界大戦以来見られなかった混乱だった」
レットゲン議員は大多数のドイツ国民と同様に、「トランプ大統領の再選が西側の関係に取り返しのつかない損害を与える」と恐れている。
ノルベルト・レットゲン議員:
「今後4年間の見通しは、私たちがこの4年間で経験したことを繰り返すだけでなく、より悪化すると確信している」
「4年後、トランプ大統領は確実に解任されるだろう」
長い間同盟国と見なしてきた国の大統領、軍事および貿易相手国が、激しく持続的な批判の標的にドイツを選び出したことに、大半のドイツ国民は驚愕した。
トランプ大統領は防衛費(国内総生産の2パーセント水準を求めている)、貿易赤字の解消、そして物議を醸したノルド・ストリーム2パイプライン建設を巡り、メルケル首相に殴りかかった。
しかし、両国の関係悪化を最も強く印象付けた出来事は、ドイツに駐留する米軍の数を削減したことだろう。
※ノルド・ストリーム2パイプライン:ロシアとドイツ間をつなぐ天然ガスのパイプライン
メルケル首相との握手を拒否するトランプ大統領
元ワシントン大使でミュンヘン安全保障会議の議長を務めるヴォルフガング・イシンガー氏はBBCニュースの取材に対し、「残念ながら、この問題に対する信頼は失われている」と述べた。
米軍の撤退はNATOの結束と力を弱め、ロシアを増長させる。しかし、トランプ大統領はGDP2%水準の防衛費遵守を加盟国に求め、達成できていないドイツを「見せしめ」として処理した。
イシンガー氏はドイツ駐留軍の撤退決定を検討すると述べたジョー・バイデン氏の勝利が、西側の関係改善につながるかもしれないと主張しつつ、中国やロシアとの対立、気候変動への取り組みなどの問題は残ると警告した。
しかし、ドイツのほとんどの当局者は、次の4年がより良くなることを望んでいる。