農作物は待ってくれない。大量のジャガイモを抱え、頭を抱える農家のために・・・
ベルギージャガイモ生産者組合「ベルガボム」のロメイン・クールズ氏は、輸出部門がコロナウイルスの影響で壊滅的な被害を受けていると警告した。
パンデミックおよびロックダウンにより、およそ75万トンのジャガイモが国内の倉庫に積み上げられているという。クールズ氏はベルギー国民に対し、「ジャガイモチップスを週に2度食べましょう」と促した。
3月中旬、ジャガイモの大口供給先であるレストランや生産者市場などが相次いで閉鎖された。また大量のジャガイモを消費するイベント、フェスティバルなども軒並み中止となり、農家および組合は大量の在庫を抱えることになった。
ベルギーは、ジャガイモ冷凍チップスなどのポテト製品を世界中に輸出している。年間150万トン以上のポテト製品が100か国以上に輸出されていたが、パンデミックの影響で貿易も停止、大量の在庫を抱える大きな要因となった。
農作物はパンデミックもロックダウンも待ってくれない。生育したら収穫せねばならず、さらに、消費しないと廃棄処分する羽目になる。廃棄すれば、植える手間、収穫する手間、全てが無駄になるのだ。ベルガボムは収穫したジャガイモを少しでも役立てるべく、フランドル地方のフードバンクに毎週25tのジャガイモを無償提供(配達込み)している。
フランドル農業相のヒルデ・クレヴィッツ氏はブリュッセル・タイムズに対し、「農家が一生懸命働き育てたジャガイモの多くが失われている。しかし、フードバンクなどへ提供されれば、それが国民の生活に欠かせない優れた食材であると伝えることができるだろう」と述べた。
Do your bit by eating more chips in lockdown is a call to arms I can rally behind.
— Emma Westcott (@ecwestcott) April 27, 2020
Belgians urged to eat more chips by lockdown-hit potato growers https://t.co/SX6ZpAQnRU
ジャガイモ危機
ジャガイモ危機は、カレーなどに使われる品種を大量に生産するオー・ド・フランス地域圏の農家および組合にも深刻な影響を与えている。そこで生産された50万トンのジャガイモは、予定されていた顧客元のキャンセルなどにより、今も倉庫に眠っている。これが失われれば、ジャガイモ農家の貴重な収入も失われることになるだろう。
ベルギーのジャガイモ生産者であるジョン・ヴァンメルヘーゲ氏は、ジャガイモ加工工場が購入する余剰品の扱いについても、厳しい現実に直面しているという。
ジャガイモを追加購入した場合の単価は従来の10分の1程度。生産者(加工工場)も商品を作りたいと思っているが、消費者がいなければ作る手間のみかかり、赤字を抱え倒産する羽目になる。また、ジャガイモを動物の飼料に加工する「加工単価」と「追加購入単価」はほぼ同額。仮に飼料が売れたとしても利益ゼロ、人件費や運送料を考えれば、やはり赤字になる。
ベルギーのある生産者は、連邦政府に対し支援を求めている。欧州各国の農家、生産者も同様。オランダの農業組合は連邦政府に対し1トン当たり50ユーロの支援を求めたが、返答はまだないという。なお、使い道のないジャガイモを発電用バイオ燃料に使ったという報告もあるそうだ。
コロナウイルスに苦しめられている農作物はジャガイモだけではない。影響はありとあらゆる範囲に及んでいる。農家および関連の農業組合は大量の在庫を抱え頭を抱える。生産者たちも、商品が売れない以上、原材料を購入などできない、もちろん作ることも。
客足の途絶えたレストランやバーも同様である。農家や生産者から「購入していた」農作物、商品の取り扱いに困っている店舗は星の数ほどあるはずだ。世界中の飲食業界が大打撃を受けていることは説明するまでもないだろう。倒産、廃業するレストランやバーが増え、スタッフは完全に職を失う。
一次産業(農家)、二次産業(生産者)の廃業・倒産は絶対に避けねばならない。各国政府は大手、中小零細企業への対応で手一杯の状況だが、この両産業を失えば、コロナウイルスが終息した後の食糧調達、貿易に甚大な影響を与えかねない。ただし、中小零細企業より先に支援しろ、と言っているわけでもない。
縁の下から国の産業を支える農家や生産者を失えば、取り返しのつかない事態を招くだろう。「失ってから騒いでも遅い」のだ。