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エルサルバドルでギャング裁判始まる、500人の被告が出廷


裁判は首都サンサルバドルで始まり、被告の多くは国内最大級の厳重警備施設に収容されたまま、映像を通じて出廷した。
2025年3月31日/エルサルバドル、中部テコルカの刑務所(AP通信)

中米エルサルバドルで21日、国際的な犯罪組織「マラ・サルバトルチャ(通称MS-13)」の構成員とされる約500人を一括して裁く大規模裁判が開始された。対象となる被告は486人にのぼり、2012~22年にかけて発生した殺人、恐喝、武器取引、失踪など、4万7000件以上の犯罪に関与した疑いが持たれている。

裁判は首都サンサルバドルで始まり、被告の多くは国内最大級の厳重警備施設に収容されたまま、映像を通じて出廷した。このうち約70人は逃亡中のため欠席裁判となる見通しである。検察は膨大な証拠や証言を提示し、組織犯罪の全体像を立証する方針で、主導的立場にあった幹部らには長期の刑罰が科される可能性がある。

今回の裁判はブケレ(Nayib Bukele)大統領が主導する対ギャング対策の一環である。政府は2022年、短期間に多数の殺人事件が発生したことを受けて非常事態を宣言、憲法上の権利の一部を停止した。この措置により、令状なしの拘束や長期拘留が可能となり、これまでに9万人以上が逮捕された。

政府はこの政策により殺人率が大幅に低下し、治安が改善したと強調している。実際、かつて世界有数の高い犯罪率で知られた同国では、暴力事件が急減。ブケレ政権は80~90%という高い支持率を維持している。一方で、その手法を巡っては国際的な批判が強まっている。

人権団体や米州人権委員会などは、この集団裁判が個別の証拠審理を十分に行わない可能性や、弁護権の制限など、適正手続きの侵害につながると指摘している。また、逮捕された者の中にはギャングと無関係の一般市民も含まれているとされ、政府自身も数千人規模の誤認逮捕があったことを認めている。

さらに、拘束中の死亡事例や過酷な収容環境も問題視されている。報道によると、拘束者の死亡は数百人規模に達し、拷問や不当拘束の疑いも指摘されている。刑務所の過密状態も深刻で、今回のような大規模裁判は司法制度への負担を一層増大させている。

この裁判は最大で数カ月に及ぶ可能性があり、同国史上最大級の刑事手続きと位置付けられている。政府はMS-13が国家に匹敵する影響力を持つ「並行権力」を築こうとしたと非難し、徹底的な取り締まりの正当性を強調している。

エルサルバドルにおける治安改善と人権のバランスをめぐる議論は今後さらに激化する見通しである。今回の集団裁判は犯罪対策としての強硬路線の成果と限界を同時に示す可能性がある。

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