エチオピア北部TPLF、戦前の行政体制復活、和平合意崩壊の危機
ティグレ紛争は2020年から2022年にかけて続き、数十万人の死者を出した21世紀でも最悪級の内戦の一つである。
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エチオピア北部ティグレ州で、主要政党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」が戦前の地域政府体制を復活させ、和平合意の崩壊につながりかねない事態となっている。これは2022年11月に内戦を終結させた和平合意に反する動きであり、再び武力衝突へ発展する懸念が強まっている。
報道によると、TPLFは5日、戦前に存在していた州議会を再設置し、同党の指導者であるゲブレミカエル(Debretsion Gebremichael)氏を首長に選出した。これは内戦後に設けられた暫定行政体制に代わるものであり、事実上、中央政府との合意を逸脱する措置である。
ティグレ紛争は2020年から2022年にかけて続き、数十万人の死者を出した21世紀でも最悪級の内戦の一つである。戦闘だけでなく、医療体制の崩壊や飢餓が被害を拡大させ、隣国エリトリアも巻き込む複雑な紛争となった。
この戦争を終結させたのが2022年のプレトリア合意であり、ティグレ州では選挙実施までの暫定行政が統治を担う仕組みが定められていた。しかしTPLFは、中央政府が公務員給与の資金を停止したり、暫定政府トップの任期を一方的に延長したりしたと主張し、合意違反があったと非難している。
今回の措置により、ティグレ州では暫定政府とTPLF主導の新体制という「二重権力」が並立する異例の状況となった。暫定政府側は引き続き統治権を主張し、政治的対立が一層深刻化している。
専門家は今回の動きを重大なエスカレーションと指摘する。和平の枠組みが崩れれば、国軍とTPLF部隊が再び衝突する可能性が高く、迅速な緊張緩和がなければ新たな戦争に発展しかねないとの見方が出ている。
実際、2026年初頭以降、ティグレ州では国軍とTPLF勢力との小規模な衝突が報告されており、停戦は不安定な状態にある。さらに州都メケレでは暫定政府施設付近で爆発が発生するなど、治安悪化の兆候も見られる。
国際社会も懸念を示しており、欧州連合(EU)やイギリスが緊張緩和と対話の継続を呼びかけている。しかし、アビー(Abiy Ahmed)首相は今回の動きに明確な反応を示しておらず、事態の収拾は見通せていない。
内戦終結からわずか数年で再び和平が揺らぐ現状は、エチオピアの政治的分断の深さを浮き彫りにしている。ティグレ問題は単なる地域紛争にとどまらず、国家統治のあり方や民族間関係をめぐる構造的対立を内包しており、解決には長期的かつ包括的な政治対話が不可欠である。今回のTPLFの決断はその困難さと和平の脆弱さを改めて示すものとなった。
