エチオピアのアビィ・アハメド首相は、ティグライ地域での反政府勢力に対する軍事作戦が「最終段階」に入ったと述べた。
伝えられるところによると、ティグレ人民解放戦線(TPLF)と政府軍との戦闘でこれまでに数百人が死亡し、少なくとも27,000人が隣国スーダンに逃げ込んだという。
国連は「本格的な人道的危機」が発生していると警告した。
11月4日、エチオピア政府はティグライ地域を支配するTPLFが違法な選挙活動を行い、軍事基地を攻撃したうえで武器を盗んだと非難、戦闘が勃発した。なお、TPLFは軍事基地への攻撃を否定している。
アハメド首相はTPLFを「反逆者」と非難し、軍事攻撃を命じた。
一方、TPLFはアハメド政権を非合法と見なしており、「国政選挙を延期した(コロナウイルスの影響)首相に国を率いる資格はない」と主張している。
人道的危機
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のババル・バロック報道官は声明の中で、「本格的な人道的危機が発生している」と警告し、数万人単位の難民が隣国スーダンに逃げ込んでいると述べた。
ババル・バロック報道官:
「当局は現地へのアクセスとセキュリティを確保できれば、ティグライ地域を支援できる」
国連人道問題調整事務所(OCHA)のイェンス・ラーケ報道官は、「ティグライ地域の避難民はさらに増えると予測している。事態に対処できるよう、最善を尽くしたい」と述べた。
国連はティグライ地域から避難した市民の数を把握できず、現地の状況はさらに深刻な可能性もあると主張している。
ケニアとウガンダ政府は交渉による平和的な解決を呼びかけたが、エチオピア政府はTPLFとの交渉を除外した。
アハメド首相「戦闘は最終段階に入った」
アハメド首相は声明の中で、「政府の軍事作戦は最終段階に入った」と述べている。
アビィ・アハメド首相:
「法執行機関による最後の重要な任務は、数日中に実行されるだろう」
「私たちは隣国に逃げ込んだエチオピアの国民を受け入れ、再統合する準備ができている」
一方、TPLFの顧問、元政府外交官のフェセハ・テセマ氏はBBCニュースの取材に対し、「ティグライ地域の主要都市、メケレの民間エリアが政府軍に爆撃された」と述べた。
フェセハ・テセマ氏:
「ティグライの市民は何も悪いことをしていない。政府は民間人を狙っている。彼らは自宅や教会にいただけだ」
政府は民間人へのピンポイント爆撃を否定し、標的はTPLFと述べた。
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年11月14日、ティグレ人民解放戦線(TPLF)が、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。