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トランプ関税を乗り切った中国、イラン戦争で新たな試練に直面

中国はトランプ政権の関税攻勢を乗り切る柔軟性を示してきたが、イラン戦争はそれとは異なる種類の衝撃をもたらしている。
2025年10月30日/米国のトランプ大統領(左)と中国の習近平 国家主席(AP通信)

中国経済はこれまで、トランプ米政権による高関税政策という大きな圧力に耐えてきた。しかし、2026年2月に勃発したイラン戦争は、その耐久力に新たな試練を与えている。貿易摩擦には適応してきた中国だが、今回の中東情勢は構造的に異なる影響を及ぼし、輸出や産業、さらには雇用にも波及し始めている。

米中間の貿易戦争は2018年以降続き、特に第2次トランプ政権下では関税率が一時145%に達するなど、極めて高水準に引き上げられた。それでも中国は輸出先の多角化や国内市場の拡大、サプライチェーンの再編などを通じて衝撃を吸収してきた。結果として、関税は中国経済に打撃を与えつつも致命傷とはならず、企業は東南アジアへの生産移転やコスト削減で対応してきた経緯がある。

しかし、イラン戦争はこれとは性質が異なる。最大の違いはエネルギーと物流という経済の基盤そのものを揺るがしている点にある。戦争に伴いホルムズ海峡が緊張状態に置かれ、世界の石油供給の2割が通過する重要ルートが不安定化。これにより原油価格が急騰し、世界規模のエネルギー危機が発生した。

中国は世界最大級のエネルギー輸入国であり、特に中東からの原油に依存している。このためエネルギー価格の上昇は製造コストの増加として直接的に企業に跳ね返る。実際、広州交易会などの現場では、プラスチックや金属といった原材料価格が上昇し、利益が半減した企業も報告されている。輸出企業は価格転嫁を迫られるが、海外需要が弱まる中でそれも容易ではなく、受注減や雇用調整の懸念が広がっている。

さらに、戦争は需要面にも影響を及ぼしている。中東や欧州といった主要市場で経済の先行き不安が高まり、中国製品の注文が鈍化している。輸送コストの上昇や為替の変動も重なり、輸出主導型の成長モデルに依存してきた中国経済にとっては二重の打撃となっている。専門家の分析でも、工場受注や雇用に対する圧力が顕在化していると指摘されている。

一方で、中国は完全に無防備というわけではない。長年にわたりエネルギー供給の多角化や備蓄の拡充を進めてきた結果、周辺国に比べると一定の耐性を持つ。また、イランからの輸入は重要ではあるものの全体の数パーセントに過ぎず、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)との関係強化によってリスク分散も図られている。

外交面でも中国は慎重な姿勢を維持している。イランとの関係を保ちながらも、戦争への直接関与は避け、停戦仲介や対話の呼びかけにとどめている。これは経済的利益と国際的立場のバランスを取る現実主義的な対応といえる。過度な関与は対米関係を悪化させる恐れがあり、中国は「関与しすぎない」ことでリスク管理を図っている。

それでも、今回の戦争が中国経済に与える影響は無視できない。関税問題が主に貿易構造の調整で対応可能だったのに対し、エネルギーや物流の混乱は回避が難しく、企業活動の根幹に直接作用するためである。特に中小の輸出企業にとっては、コスト増と需要減が同時に進む状況は深刻であり、倒産や雇用悪化につながる可能性も指摘されている。

総じて、中国はトランプ政権の関税攻勢を乗り切る柔軟性を示してきたが、イラン戦争はそれとは異なる種類の衝撃をもたらしている。エネルギー価格の高騰、輸出需要の減退、物流の不安定化という複合的な圧力は、中国経済の脆弱な部分を浮き彫りにしつつある。今後、戦争が長期化すれば、その影響はさらに広がり、中国の成長モデルそのものに再調整を迫る可能性が高い。

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