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スマホから離れる若者、「昔ながらの趣味」に関心集まる

編み物や刺繍、ガーデニングなど、かつては高齢者の趣味と見なされることも多かった手作業中心の活動が、デジタル生活から離れる手段として再び注目されている。
スマートフォンを操作する女性(AP通信)

スマートフォンやSNSが生活の中心となる現代、若者の間で「昔ながらの趣味」に関心が高まっている。編み物や刺繍、ガーデニングなど、かつては高齢者の趣味と見なされることも多かった手作業中心の活動が、デジタル生活から離れる手段として再び注目されている。米国ではこうした活動が「グランマ・ホビー(祖母の趣味)」などと呼ばれ、Z世代やミレニアル世代を中心に広がりつつある。

背景にはスマートフォンに依存しがちな生活への疲れがあると指摘されている。長時間のSNS閲覧や動画視聴、いわゆる「ドゥームスクロール」と呼ばれる行動に時間を費やすことが多く、若者の中には画面から離れる時間を意識的に作ろうとする動きが強まっている。手を使って何かを作る趣味は、デジタル機器に触れずに集中できる活動として人気を集めている。

米国の26歳女性エマ・マクタガートさん(Emma McTaggart)もその一人だ。彼女は投資銀行で働いていたころ、仕事が終わった後もスマートフォンを見続ける生活を送っていた。そこで友人と一緒に新しい趣味を探し、子どものころに少しだけ経験していた刺繍を再び始めたという。手を動かして作品を作る作業はストレス解消につながり、現在では刺繍作品を販売するビジネスまで立ち上げている。

こうした傾向は編み物や刺繍だけにとどまらない。陶芸や折り紙、ガーデニング、さらには鍛冶といった伝統的な技術まで、幅広い分野の趣味が若者の間で広がっている。いずれも共通するのは、手作業で時間をかけて物を作るという点であり、完成した成果が形として残ることが満足感につながっているようだ。

また、この流行は意外にもSNSの存在によって広がっている側面もある。趣味の制作過程や完成品を動画や写真で共有することで、同じ興味を持つ人々がコミュニティを形成し、さらに参加者が増えるという循環が生まれている。SNSは若者をスマートフォンに引き付ける要因である一方、新しい趣味を見つけるきっかけにもなっている。

例えば米ジョージア州の22歳男性アイザイア・スコット(Isaiah Scott)さんはバードウォッチング(野鳥観察)を趣味としている。スマートフォンのアプリを使って観察した鳥を記録するなど、デジタル技術を補助的に活用しながら自然の中で活動している。ゲーム感覚で新しい鳥を見つける楽しさがあり、自然保護活動にも関わるようになったという。

専門家は、趣味を持つことは精神的な健康にも良い影響を与えると指摘する。手作業に集中することでストレスが軽減され、達成感や創造性を感じる機会が増えるためだ。日常生活の中でスマートフォンから離れる時間を持つことは、心身のバランスを保つうえでも重要だとされる。

パンデミック期には自宅で過ごす時間が増えたことから、こうした趣味を始める人が増えたとされるが、流行はその後も続いている。デジタル社会の中で、ゆっくりとした時間を楽しむ「アナログな活動」の価値が改めて見直されている。若者にとって昔ながらの趣味は単なる流行ではなく、忙しい日常から距離を置き、自分らしい時間を取り戻す手段として定着しつつある。

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