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トランプオイルショック、1970年代の悪夢再び、原油爆上げ


スタグフレーション懸念の中心には原油価格「爆上げ」がある。
トランプ米大統領とイランの国旗(Getty Images)

世界中の投資家が1970年代に見られたような「スタグフレーション(経済成長の停滞と高インフレが同時に進行する状況)」が再来する可能性を真剣に見据えている。これは中東での戦争や原油価格の急騰が引き金となっており、供給制約による物価上昇圧力と経済成長鈍化の兆候が重なっているためだと市場関係者は指摘する。

スタグフレーション懸念の中心には原油価格「爆上げ」がある。2026年3月に入り、国際指標のブレント先物が1バレルあたり110ドルを超える大幅な上昇を見せ、年初から約70%の急騰となっている。この上昇は長期的な供給制約や地政学的な緊張が背景にあり、油価高が持続した場合、世界規模で物価を押し上げる主因になるとの見方が強まっている。国際通貨基金(IMF)の推計では、持続的な原油価格上昇は世界の経済成長を抑制する効果があるとされ、インフレと景気停滞を同時に招くリスクが高まっている。

この状況は中央銀行の政策運営にも大きなジレンマを生んでいる。インフレ抑制のために金利を引き上げれば、景気の勢いはさらに弱まる可能性がある一方で、金利を据え置くと物価上昇圧力の制御が難しくなるという難しい局面に直面している。欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BoE)などの主要中銀は、当初は利下げを見込んでいた市場予想を転換し、少なくとも数回の利上げを織り込む動きが広がっている。これにより金融政策の正常化と経済成長維持という両立し難い課題が浮かび上がっている。

投資市場では「債券市場」の動揺が顕著だ。特に短期債の利回りが急騰し、イギリスの2年物国債利回りはここ数週間で市場がインフレ懸念を強く織り込む中、大幅に上昇した。ドイツやオーストラリアでも同様の傾向が見られ、投資家の間でインフレ連動債の人気が高まっている。これは通常の固定利付き債が将来的なインフレによって実質利回りが侵食されるリスクを嫌う動きとして説明される。

米国市場については、米国内が原油などの多くの重要商品が自給であることから欧州やアジア圏ほどの直接的な影響は受けにくいとする見方もある。しかし、米国経済も物価上昇と雇用動向の弱さが指摘されるなど、スタグフレーションリスクから完全に逃れているわけではない。特に26年2月の雇用統計では雇用者数の伸びが予想を大きく下回り、消費余力の低下や景気減速の懸念が広がっている。これがインフレと成長鈍化を同時に起こす条件となり得るとの分析もある。

株式市場では投資家心理の悪化が見られ、主要株価指数は原油価格高騰を背景に下落圧力が強まっている。特に景気敏感株が売られやすく、株式全般のリスク資産の評価が下がる可能性が高まっている。これに伴い、安全資産とされる金(ゴールド)ですら一部で売りが先行するなど、従来のリスク回避行動とは異なる複雑な動きも生じている。

投資家と経済政策担当者は1970年代に見られたような高インフレ・低成長の長期化が再び現れるシナリオの発現可能性を慎重に見極めている。エネルギー価格が安定しない限り、インフレが持続し景気を押し下げるというスタグフレーション圧力は依然として強いとの見方が多い。今後の原油市場の動向や中銀の政策対応、主要経済圏の成長動向が市場の焦点となっている。

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