SHARE:

米国で妊産婦を支える「ドゥーラ」が一般化、出産ケアに変化


ドゥーラとは、医療行為は行わないものの、妊娠中から出産、産後にかけて身体的・精神的なサポートを提供する専門職である。
2026年2月28日/米テネシー州メンフィスの産婦人科(AP通信)

米国で出産前後の母親を支える「ドゥーラ(Doula)」と呼ばれる支援サービスが、これまでの一部の富裕層向けの存在から、一般に普及しつつある。医療制度や保険の変化を背景に、より多くの家庭が利用できるようになり、母子の健康改善にも寄与するとして注目されている。

ドゥーラとは、医療行為は行わないものの、妊娠中から出産、産後にかけて身体的・精神的なサポートを提供する専門職である。かつては費用が高額で、利用できるのは限られた層にとどまっていたが、近年は状況が大きく変化している。米国では30以上の州が公的医療保険であるメディケイド(Medicaid)を通じてドゥーラ費用を補助、または導入を進めており、その数は2022年の14州から大幅に増加した。さらに民間保険でも導入が進み、大手保険会社が新たな給付制度を開始するなど、利用の裾野が広がっている。

こうした普及の背景には、ドゥーラの効果を示す研究の蓄積がある。ドゥーラを利用した妊婦は、低出生体重児の出産や出産時の合併症のリスクが低下し、帝王切開の割合も減少する傾向が確認されている。また、産後の診察受診率や母乳育児の開始率も高まるとされる。特に産後期間は母体死亡のリスクが高い時期であり、継続的な支援が重要視されている。

米南部テネシー州メンフィスではドゥーラが複数の母親を支援している。双子を出産したシングルマザーの女性は、妊娠初期の不安や出産時の高血圧、帝王切開後の精神的な落ち込みに至るまで、ドゥーラの支援が大きな支えになったと語る。別の女性も死産を経験した後の妊娠でドゥーラの支援を受け、「家族のような存在だった」と振り返っている。

医療現場の意識も変化している。かつては医師や看護師との役割の違いから摩擦もあったが、近年は補完的な存在として受け入れられるようになってきた。病院がドゥーラ団体と提携し、患者が支援を受けられる仕組みも整いつつある。専門資格の義務はないものの、各州で一定の基準が設けられ、質の確保も進められている。

さらに、ドゥーラの普及は医療格差の是正にも寄与すると期待されている。米国では黒人女性の妊産婦死亡率が白人の3倍以上とされるなど、人種や所得による健康格差が大きな問題となっている。比較的低コストで導入可能なドゥーラ支援は、こうした格差を縮小する有効な手段の一つと位置付けられている。

このように、ドゥーラは単なる付加的サービスから、母子保健を支える重要な存在へと変わりつつある。保険制度の拡充と医療現場での受容が進む中、今後はさらに多くの家庭が恩恵を受けるとみられ、米国の出産ケアの在り方そのものを変える可能性も指摘されている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします