米IT大手メタ、詐欺取り締まり圧力をかわす「プレイブック」作成か
の文書は広告主の身元確認(広告主認証)を義務化する動きを遅らせ、詐欺広告の存在を外部から見えにくくする手法をまとめたものだとされる。
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米IT大手メタ・プラットフォームズ(Meta)がフェイスブックやインスタグラム上の詐欺広告に対する規制当局からの圧力をかわすために、内部で「プレイブック」と呼ばれる文書を作成していたことが明らかになった。この文書は広告主の身元確認(広告主認証)を義務化する動きを遅らせ、詐欺広告の存在を外部から見えにくくする手法をまとめたものだとされる。
ロイター通信によると、2024年に日本で投資詐欺や偽セレブ商品などの詐欺広告が大量に出現した際、メタは日本政府が全広告主の身元を確認する規制を導入することを恐れていた。身元確認は詐欺減少に効果的とされる一方で、導入に20億ドルものコストがかかり、売上にも影響する可能性があるため、メタはこれを回避するための対策を模索したという。
このプレイブックでは、各国の規制当局が詐欺広告をどのように把握しているかを分析し、その対策として同社の広告ライブラリにおける検索結果を調整する方法が推奨されていた。具体的には、規制当局が使いそうなキーワード検索で詐欺広告を「発見されにくく」し、検索結果から削除することで「見た目上」詐欺が減少したように見せかける戦術が含まれていた。
内部文書では、この戦術が日本で成功を収めたことから、「一般的なグローバル・プレイブック」として米国、欧州、インド、オーストラリア、ブラジル、タイなど他の市場でも展開されるべきだと記されていた。広告主認証は詐欺防止策の一つとして認識されつつも、同社は自主的導入ではなく、各国が法的に義務化する場合にのみ受け入れる姿勢を維持している。
社内文書には、詐欺広告削減のための実施可能な措置として身元確認が最も効果的であると認める内容も含まれている。また、同社はどの国においても6週間以内に身元確認の仕組みを導入できると把握していたが、コスト面や売上の減少リスクを理由に実施を見送ったという。文書では、未認証の広告主を排除すると売上全体の最大4.8%を失う可能性があると試算されていた。
一方でメタは詐欺対策が進んでいると主張している。社内広報担当者は、詐欺広告を削除する努力や、詐欺行為の報告件数が50%減少したことを強調。広告ライブラリから詐欺広告を取り除くことは有効な対策であり、詐欺自体を減らすための取り組みの一環だと説明している。また、収益の70%は認証済み広告主から得られているとして、一定の認証体制は存在すると主張した。
ただし、内部資料や専門家の間では、メタの対応が「規制当局を欺くための見せかけ」であり、詐欺対策そのものの実効性に疑問符がついているとの指摘もある。例えば、詐欺広告主が一国で排除されても、別の市場で広告を出すことで収益が維持される「もぐらたたき」的な現象が起きているという分析もある。
この報道を受け、米国の議員らが証券取引委員会(SEC)や連邦取引委員会(FTC)に対して調査を求める動きが出ている。さらにEUの執行機関である欧州委員会も詐欺広告の管理方法について正式な情報提供をメタに要求したと報じられており、同社に対する規制強化の圧力は強まる可能性がある。
メタの内部文書と実際の対策のギャップは、プラットフォーム運営企業が収益と利用者保護のバランスをどのように取るかという議論を改めて浮き彫りにしている。
