コロナウイルスではない。ボルソナロウイルスだ

ブラジルのジャイル・ボルソナロ極右大統領は、トランプ大統領の政治手法をコピーし、長い間称賛し続けてきた。二人の超保守主義者は致命的とも言える共通点を持っている。自国の国民を死地に追いやり、死に至らしめ、パンデミックを爆発的に拡大させた罪はあまりに重い。

ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、アメリカの累計感染者数は226万人を超え、121,000人以上が死亡した。この数字も驚異的だが、ブラジルの「ボルソナロウイルス」もそれに劣らぬ勢いで増殖し続けている。

当局によると、19日に確認された24時間当たりの新規感染者数は、世界最高記録を大幅に更新する54,000件以上。4日連続で1,200人以上が死亡し、累計死者数は49,000人を超えた。

しかし、同国のPCR検査は大都市の一部地域でしか行われておらず、専門家たちは潜在感染者数を1,000万人~1,500万人以上と予測。さらにパンデミックのピークは数週間先と考えている。

今回発表された衝撃的な数字を受け世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「パンデミックは収束の兆しを見せず、悪化し続けている。世界は危険な局面に突入しつつある。1日当たりの新規感染者数は過去最高を更新し、その半数以上がアメリカ大陸から発生している。早急なロックダウンの緩和は控えて欲しい」と警告した。

ボルソナロ大統領は一刻も早い経済活動の再開を願っており、それが達成されなければ、国の経済が立ち行かなくなると警告、州知事にロックダウンの解除を求めている。

右寄りでない”普通の”州知事たちも、ボルソナロ大統領の言う経済破綻のリスクは重々承知しており、コロナウイルスへの警戒を続けつつ、ロックダウンの段階的な緩和を開始した。しかし、人口の集中するサンパウロや第二の首都リオデジャネイロでビジネスが再開された結果、感染が急速に拡大し、今回の記録更新に至った。

ボルソナロ大統領は、コロナウイルス対策より経済活動の方が大切であると公言しており、その主張に賛同する保守層から今も一定の支持を集めている。

なお、問題を抱えるラテンアメリカ諸国はブラジルだけではない。現在も、チリやペルーを含む多くの国で大規模なパンデミックとクラスターが発生し続けている。またメキシコ政府は、19日に累計死者数が20,000人を超えたと発表した。

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極右狂犬ボルソナロ大統領

ボルソナロ政権は緊急事態宣言やロックダウン、それに関連する対策を発動せず、州政府や各都市は独自対策を求められた。規制は数カ月間におよび、推定失業者数は3,000万人に到達する勢いである。

また、一部の地域では保険システムが適用されず、病院に行けない患者が続出。アマゾネス州などの先住民コミュニティに代表される貧困地域では、ウイルスが急速に拡大しており、手の付けられない状況にある、と専門家たちは警告する。

ブラジル国内におけるコロナウイルス対策は、政治的な色合いが非常に強くなっている。当局の専門家たちは、大統領が科学的助言に従うことなく、WHOの推奨する感染予防対策(社会的距離、マスクの着用など)を全面的に否定したことなどが危機の拡大につながったと指摘した。

3月中旬、ボルソナロ大統領はメディアやWHOの発信するパンデミックのリスクを過大と批判。保守層支持者たちの組織したアンチロックダウン集会に参加し、国民に誤ったメッセージを発信し続けた。

さらに大統領は、各州知事がロックダウンを政治利用していると痛烈に批判。国のトップに責任者を押し付ける卑怯者たちと怒りを爆発させた。一方、ブラジル最大の都市サンパウロ州のジョアン・ドリア知事は、誤ったコロナウイルス対策をとり続ける大統領に対し、「ボルソナロウイルス」と述べた。

4月、ボルソナロ大統領は、トランプ大統領御用達の「ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)」を絶賛し、患者の治療に効果があると断言した。しかし、WHOと世界中の研究機関が同薬の効果を真っ向から否定。「国のトップが誤った情報を拡散させてはならない」とクギを刺された。

同じくヒドロキシクロロキンを否定した保険大臣は、大統領の狂犬的な政策についてゆけず、短期間の間に二人が辞任。現在そのポストに座っているのは、公衆衛生および医療知識ゼロの陸軍将軍である。

極右狂犬ボルソナロ大統領はさらに、同盟国とメディアの助言に反発。「犠牲者の数ばかりに注目すべきではない。大切なことは経済活動をいかにして再開させるかだ。大衆を恐怖に陥れるやり方は間違っている」と述べ、政府の公式ウェブサイトからコロナウイルスに関連するデータをBANした。

これに対し最高裁判所は、「BANは違法であり、大衆が知ってしかるべき情報を意図的に操作してはならない」と命令。世界中から批判を受け、データを復活させた。

パンデミックが深刻度を増す中、極右狂犬ボルソナロ大統領は政治および経済危機に直面している。現在最高裁判所は、大統領が警察の捜査に介入、妨害した事件を調査しており、近く結果が判明する予定である。

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