22日、エチオピアのアビィ・アハメド首相は、北部ティグライ地域で活動するティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与えた。
アハメド首相は声明の中で「降伏までの猶予は72時間、TPLFはティグライに戻ってこない」と述べた。
一方、山岳地帯を支配するTPLFは、戦い続けることを誓っている。
伝えられるところによると、11月4日から本格化した紛争で少なくとも数百人が死亡し、数万人が隣国スーダンに避難したという。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「本格的な人道的危機」を引き起こすと警告し、人道的回廊の開設と、「人道援助を提供するために必要となる真実」を求めると述べた。
エチオピア政府は以前、ティグライの州都メケレの住民、約50万人に対し、「都市を取り囲み、TPLFに向けて砲撃する可能性がある」と警告している。
TPLFのリーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏はロイター通信の取材に対し、「政府軍の前進を何とか失速させた」と述べた。
デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏:
「彼らは波状攻撃を仕掛けているが、無意味である」
政府は先週、いくつかの主要な町を占拠したと発表した。しかし、紛争開始以来、現地の通信網は完全に遮断されており、発表の正否は検証されていない。
アハメド首相はゲブレミチャエル氏に宛てた声明の中で次のように述べている。
アビィ・アハメド首相:
「あなたの破壊の旅は終わりに近づいている。72時間以内に平和的に降伏することを勧める。これが最後の機会だ」
「州都メケレの住民は、この反逆的なグループを裁判にかけるために、政府軍を支援すべきである」
アフリカ連合(AU)議長国を務める南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は20日の声明で、「3人の元大統領に紛争終結への仲介と交渉を依頼した」と述べた。
しかし、エチオピア政府はTPLFと交渉するつもりはなく、国内の法執行機関で裁くと主張。申し出を拒否した。
アハメド首相の上級補佐官、マモ・ミレツ氏はBBCニュースの取材に対し、「私たちは犯罪者と交渉しない。私たちは交渉でなく裁判で彼らを裁く」と述べた。
マモ・ミレツ上級補佐官:
「TPLFに降伏するよう圧力をかければ、より良い結果につながるだろう。しかし、ティグライやメケレで交渉することはない」
ミレツ上級補佐官は、数日中にエチオピアに到着するモザンピーク、リベリア、南アフリカの元大統領がティグライを訪問することはないだろうと述べた。
戦闘が続く中、32,000人以上のエチオピア難民がスーダンに逃亡
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。
・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。
・2020年11月14日、ティグレ人民解放戦線(TPLF)が、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。