16日、アルメニアのゾラブ・ムナサカニャン外相は、ナゴルノ・カラバフをめぐるアゼルバイジャンとの和平協定取り消しを求める抗議集会が続く中、辞任した。
9月27日に勃発した紛争は、ウラジミール・プーチン大統領の仲介で「アゼルバイジャンに有利な和平協定」が結ばれ、アルメニア人は事実上の敗北宣言に涙を流した。
ナゴルノ・カラバフは公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、1988~1994年の紛争以来、アルメニア政府の支援を受けるアルメニア民族軍の支配下にあった。
アゼルバイジャン市民は和平協定を祝福した。
一方、アルメニア市民は協定に納得できず大規模な抗議集会を開催。国会を占領し、ニコル・パシニャン首相の辞任と協定の取り消しを求めた。
ムナサカニャン外相の辞任を発表したアンナ・ナグダリアン報道官は、アゼルバイジャンとの和平交渉に公然と反対した。
先日、バシニャン首相はフェイスブックに投稿した声明の中で、「アゼルバイジャン政府から譲歩の申し出があった」と述べている。
これに対しナグダリアン報道官は、「シュシャ(ナゴルノ・カラバフの都市)を諦めることは、和平交渉のどの段階でも決して議題にのぼらなかった」と反論した。
ムナサカニャン外相の辞任は、アルメニアの政治危機が深まっていることを意味する。
現在、17の野党および支持者がバシニャン首相の追放を要求しており、首都エレバンの大規模抗議集会は日を追うごとに激しさを増している。
16日午後、アルメン・サルキシャン大統領は声明の中でパシニャン首相に圧力をかけ、「辞任と早期の選挙は避けられない」と述べた。
アルメン・サルキシャン大統領:
「私たちは様々な政党や社会グループと会談を行っており、会った人々の大多数は首相の辞任に同意している」
「近いうちに議会選挙を実施する」
しかし、不信任決議を可決するためには、議会の大多数を占めるパシニャン派閥(132議席中85)から支持を得なければならない。
ロシアの平和維持軍はナゴルノ・カラバフとその周辺に展開されており、1,960人が5年間の治安維持活動を行うことになっている。
アゼルバイジャンに「割譲」されるナゴルノ・カラバフの一部地域で生活してきたアルメニア人は、退去に備え、自宅に火を放ち、先祖の墓から遺骨を回収している。
和平協定(11月10日01:00発効)
・アゼルバイジャンは、紛争中に奪取したナゴルノ・カラバフの一部地域を保持。
・アルメニアは今後数週間の間に、ナゴルノ・カラバフのいくつかの地域から撤退する。
・ロシアの平和維持軍1,960人を最前線に配備し、違法行為を防ぐ。
・トルコの平和維持軍も監視プロセスに加わる。
・ナゴルノ・カラバフの「解放エリア」にロシアとトルコの統制センターを設置する。
ナゴルノ・カラバフについて知っておくべきこと
・2020年11月11日、アルメニア市民がアゼルバイジャンとの和平協定に抗議。国会を占領し、首相の辞任を求めた。
・2020年11月9日、アルメニア、アゼルバイジャン、ロシアがナゴルノ・カラバフの紛争を終結させる和平協定に調印。
・2020年11月9日、アゼルバイジャンの領土であるナヒチェヴァン自治共和国付近を飛行していたロシアの軍用ヘリ「Miー24」がミサイル攻撃を受け墜落。アゼルバイジャンはロシアに対し、誤った撃墜したと謝罪した。
・2020年11月8日、アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフの戦略的に重要な町、シュシャをアルメニア軍から奪取。
・2020年11月、中東の過激派勢力2,000人が紛争に加わったと伝えられている。アルメニアはアゼルバイジャンの同盟国、トルコが関与したと非難。
・2020年10月28日、アゼルバイジャンのバルダ県への空爆(クラスター爆弾)で民間人21人が死亡。
・2020年10月25日、アメリカの仲介による停戦合意が破綻。戦闘再開。
・2020年10月25日、アメリカの仲介でアルメニアとアゼルバイジャンが停戦に合意。
・ロシアのプーチン大統領によると、9月末からの戦闘で少なくとも5,000人が死亡。.
・2020年10月17日。10月9日の停戦合意は破綻し、民間人13人が死亡、40人以上が負傷した。
・約4,400平方キロメートルの山岳地帯。
・キリスト教のアルメニア人とイスラム教徒のトルコ人が生活していた。
・ソビエト連邦時代、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの自治区に加えられた。
・公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、人口の大部分はアルメニア人で構成されている。
・現在、ナゴルノ・カラバフは分離主義勢力(自称当局)に占領されている。
・ナゴルノ・カラバフの大統領(自称)はアライク・ハルチュニヤン。
・自称当局は、アルメニアを含む全ての国連加盟国に認められていない。
・1988年から1994年の紛争で約3万人が死亡、推定100万人が避難を余儀なくされた。
・1994年の停戦合意後も膠着状態は続いていた。
・アルメニアは分離主義勢力(自称当局)を認めていない。
・アゼルバイジャンは「分離主義勢力=アルメニア軍」と認識している。
・トルコはアゼルバイジャンを積極的に支援している。
・ロシアはアルメニアに軍事基地を持っている。