モーニングコール
世界保健機関(WHO)によると、ヨーロッパの毎週の新規感染者数がパンデミック発生当初に記録した最高記録を上回ったという。
9月17日、WHO欧州地域ディレクター、ハンス・クルーゲ氏は、「先週1週間だけで約30万人の新規感染者が報告された」と語った。
ハンス・クルーゲ氏:
「私たちは深刻な状況に直面している。ロックダウン解除から数カ月、欧州は3月の状態に戻り、さらなる悪化の危機に直面している」
スペインやフランスなどの一部の欧州諸国は、ここ数カ月で24時間当たりの新規感染者数を更新し続けている。
コロナウイルスがヨーロッパに上陸して以来、全土のPCR検査能力は大きく向上、陽性者を特定しやすくなり、記録更新につながっていると思われる。
クルーゲ氏は陽性者を特定しやすくなったことで、「コロナウイルスの侵攻状況」が一目で分かるようになったと述べた。
新規感染者数は過去最高を更新したが、病院の入院患者数と死者数は、3月より低い水準を維持している。ただし、スペインとフランスはじわじわと増加傾向にあるため、注意しなければならない。
現在、感染しても深刻な影響を受けにくい若者の陽性率が高く、感染拡大に寄与しているものと思われる。医療専門家はBBCの取材に対し、「ウイルスが若者から脆弱なグループに広まれば、重症患者の増加につながる。今は無症状患者が多い。しかし、同じ状態が続くとは限らない」と警告した。
パンデミックが始まって以来、ヨーロッパ全体で約500万人がコロナウイルスに感染、228,000人以上の死亡が確認されている。
クルーゲ氏は17日の記者会見の中で、「春と初夏に導入したロックダウンが明確な結果をもたらした」と述べた。
また、6月の感染状況は最低水準にまで低下し、「ロックダウンがウイルスの封じ込めに効果的であることを証明した」と予防措置の成果を強調。今回の増加は「コロナウイルスからのモーニングコールであり、一部の人々が忘れつつある感染予防対策を徹底しなければならない」と警告した。
欧州諸国は3月のパンデミック体験でコロナウイルスの封じ込めに有効な手立てを学習し、効果を上げた対策の一部は現在も継続されている。
クルーゲ氏は記者団に対し、「私たちは2月からコロナウイルスと戦い、何をすればよいか理解した。今回も半年前と同じイメージで戦えばよい」と語った。
今週初め、WHOはヨーロッパの感染状況が10月から11月に再び大きく増加すると警告した。
これはインフルエンザとコロナウイルスが同時流行することを想定しており、テドロス事務局長は「さらに厳しくなるだろう。警戒を怠ってはいけない」と声明を発表した。
コロナウイルスからのモーニングコール
ヨーロッパの現状
●イギリスでは、24時間当たりの新規感染者数がパンデミック発生時の水準に迫りつつある。9月17日に集会を制限する新しい規則が発出され、イングランド北東部の一部自治体では別の制限も同時に開始した。
●フランスは17日だけで10,593件の陽性者を確認。過去最高を更新した。
オリビエ・ベラン保健相は、コロナウイルスが勢いを取り戻したと警告。新たな震源地になったリヨンと二ースで、19日から新しい規制が導入される予定である。
なお、ベラン保健相とジャン・カステックス首相は、コロナ危機への対応で法的措置に直面している。
●スペインでは16日に239人の死亡を記録。6月以降最大の数値であり、新規感染者数の増加にも歯止めがかからない。
感染は首都マドリードで拡大しており、当局はエリア限定の再ロックダウンを間もなく発出する予定である。
●チェコ共和国は、初めて24時間当たりの新規感染者数が2,000人を突破した。これに伴いアンドレイ・バビシュ首相は、感染者のさらなる増加を防ぐために予防対策を徹底してほしいと声明を発表した。
●オランダも新規感染者数の最高記録を更新。18日に新しい規制を発表するものと思われる。
【ヨーロッパの感染状況/9月18日時点】
累計感染者 | 累計死者 | 新規感染者 (直近) | |
スペイン | 62.6万人 | 30,405人 | 11,193人 |
フランス | 41.5万人 | 31,095人 | 9,784人 |
イギリス | 38.2万人 | 41,705人 | 3,103人 |
イタリア | 29.3万人 | 35,658人 | 1,452人 |
チェコ | 42,739人 | 488人 | 2,139人 |
オランダ | 88,073人 | 6,266人 | 1,298人 |
ドイツ | 26.8万人 | 9,452人 | 1,901人 |
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半年前の大混乱を忘れてはいけない
インド
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、インドの累計感染者数は512万人超、これまでに83,198人の死亡が確認された。なお、9月17日の新規感染者数は97,894人で、世界最高記録を更新した。
インドの感染状況はコロナ大国アメリカを上回る勢いで増加しており、致命的なレベルに到達しつつある。ただし、死亡率(約1.6%)は低水準を維持している。
インドの累計感染者数が100万人を突破したのは、公式の初感染者確認から170日後だった。その後、曲線は急カーブになり、400万人から500万人を突破するまでの期間は11日に短縮された。
同国の感染状況は猛烈な勢いで悪化している。しかし、公共交通機関、飲食店、ジム、バーなどは、過去数十年で最悪の不況からの脱出を目指し、営業を続けている。
インドは3月に世界トップクラスの厳格なロックダウンを発出、コロナの封じ込めに動いた。結果、都市は閉鎖され、人々は仕事を失い、都市部から数百万人規模の労働者が流出した。
結果、農村部の労働者が増えたことで一部地域は賑わいを取り戻した。しかし、疲弊した都市部の経済活動再開を急いだナレンドラ・モディ首相は、感染が収束する前にロックダウン緩和に踏み切り、感染爆発を引き起こした。
インドはこれまでに5,000万件超のPCR検査を実施し、毎日約100万のサンプルがテストされている。
3月、著名なウイルス学者のT・ジェイコブ・ジョン博士は、「パンデミックの雪崩がインドを待ち受けている」と警告していた。
T・ジェイコブ・ジョン博士:
「公衆衛生が確立されていない人口の多い国では、ほぼ確実にパンデミックが発生する」
「インド政府の厳格なロックダウンは間違いなく機能した。しかし、経済活動の再開を急ぎ、解除のタイミングを完全に誤った」
世界銀行の元チーフエコノミスト、カシ・クバス氏はBBCの取材に対し、「モディ首相は”ロックダウンを解除し、経済活動を再開しろ”、という世論の圧力に屈し、失敗した」と述べた。
カシ・クバス氏:
「インドに選択の余地がなかったことは事実である。ロックダウンが長引けば、インフォーマル経済に依存するする人々は餓死する」
「経済活動を再開するのであれば、感染予防対策の徹底が必要不可欠である。社会的距離の確保はもちろん、誰もがマスクを着用しなければならなかった」
【世界の感染状況/9月18日時点】
累計感染者 | 累計死者 | 新規感染者 (直近) | |
世界 | 3,000万人 | 94.3万人 | 233,014人 |
アメリカ | 674万人 | 20万人 | 39,095人 |
インド | 512万人 | 83,198人 | 97,894人 |
ブラジル | 443万人 | 13.4万人 | 36,820人 |
ロシア | 109万人 | 19,061人 | 5,762人 |
ペルー | 74.4万人 | 31,051人 | 6,380人 |
日本 | 77,099人 | 1,473人 | 561人 |
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