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7月17日、ドナルド・トランプ大統領はコロナウイルスの蔓延を防ぐために推奨されているマスク着用を国民に命じないと宣言した。
同日、ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は州および市の指導者に対し、マスク着用義務化を”強力”に推進するよう呼びかけた。合わせて、マスクの着用は何よりも重要であり、「国民が一丸となって感染予防対策を徹底しなければならない」と付け加えた。
現在、アメリカ国内におけるマスク着用義務化問題は、高度に政治化されている。
州知事の大半は、党派の垣根を超え、個人的な好みなど一切気にせず、屋外でのマスク着用義務化を規則として定めている。その中には、当初マスク着用に否定的だったアラバマ州のケイ・アイビー共和党州知事なども含まれている。
マスクとの不仲を指摘されてきたトランプ大統領だったが、先週土曜日、仲違いは無事解消された。大統領は、アメリカ合衆国大統領のエンブレムが刻印された世界に一つだけのマスクを着用し、初めて公の場に姿を現したのである。
このマスク姿は世界中で話題になり、「カッコいい(マスクが)」「クールだ(マスクが)」などと言った投稿がSNSを席巻した。
しかし、二人の仲違いは解消されていなかったようだ。7月17日に大好きなFOXニュースのインタビューを受けたトランプ大統領は、「この国から”自由”を奪うことはできない。国民は民主主義の大原則、自由を謳歌すべきである。私は全国民に対するマスク着用強制法案に同意しなかった」と述べた。
7月13日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、全国民に対し、屋外や人の集まるエリアで行動する時は、必ずマスクを着用するよう呼び掛けた。
また、CDCのロバート・R・レッドフィールド所長は記者団に対し、「防護具なしでコロナウイルスに立ち向かうべきではない。社会的距離、手洗い、アルコール消毒の徹底も非常に重要だ。しかし、何よりマスクを着用してほしい。顔の一部を覆う小さな布は、ウイルスの蔓延を劇的に予防、阻止する最も強力な武器である」と語った。
アメリカ全土で感染が猛烈に拡大し、トランプ大統領を支持する共和党州知事たちも、人々の命を最優先とし、マスク着用義務化に踏み切りつつある。
ジョージア州のブライアン・ケンプ共和党州知事は、感染拡大が深刻な南部エリアの住人に対し、マスクの着用を呼びかけている。
なお、ケンプ州知事は、アトランタ市のケイシャ・ランス・ボトムズ市長(民主党)が強制力のあるマスク着用法案を採決したことに憤慨。撤回を求め提訴に踏み切った。
なお、ボトムズ市長は7月6日にPCR検査を受診、陽性と診断され、現在テレワークで職務を遂行している。
オクラホマシティの当局者は、オクラホマ州がマスク着用義務化に同意しないため、同市内のみ対象とした義務化を検討している。しかし、ケビン・スティット共和党州知事から圧力をかけられており、義務化が実現するかは不透明な情勢だ。
マスクはクビですか?
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月17日時点のアメリカの累計感染者数は約368万人、14.1万人以上が死亡した。なお、同日の24時間当たりの新規感染者数は、世界最高記録を大幅に更新する75,821人だった。
感染拡大が深刻な南部テキサス州と西部カリフォルニア州には、数百人規模の軍医療スタッフが配備され、保健当局および医療機関のバックアップを行っている。
しかし、感染者が激増したことで病床およびICUは逼迫し、テキサス州とアリゾナ州で死者が急増した。これに伴い、保健当局は遺体を仮保管できる巨大冷蔵トラックを配置すると発表した。
さらに、今月ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを大々的に再オープンしたフロリダ州の感染状況も悪化の一途をたどっている。1日当たりの新規感染者数は10,000~15,000人前後で推移しており、保健当局は医療システムが崩壊寸前にあると警告した。
PCR検査体制の整っていない州や市は、別の問題を抱えることになった。
ペンシルバニア州ピッツバーグでは、コロナウイルスに感染した恐れのある人に対し、医療機関に行くのではなく、自宅で14日間待機してほしいと要請している。
南国リゾートハワイ州でも、訪問者に対し医療センターではなく14日間の自己隔離を依頼している。都市圏と違い、PCR検査体制の整っていない地域では、体調を崩しても病院に足を運べない、と医療関係者は頭を抱えている。
感染者が際限なく増えることで、医療関係者は終わりの見えない戦いに巻き込まれ、疲れ果て、イラつき、打ちのめされ、「自分も感染するかもしれない」という恐怖の中で職務を遂行している。
フロリダ州保健管理局のデータによると、7月13日時点では13,700ほど病床に余裕があったものの、現在はほぼ埋まっている状態とのこと。また、ICUもフル稼働中であり、重症者の治療を他の州にお願いしなければならない可能性もあるという。
フロリダ国際大学の感染症専門家として活動するアイリーン・マーティ博士はBBCの取材に対し、「高度に訓練された医療関係者の数には限りがある。今、医師、看護師、特定の人工呼吸器を扱う専門医、ありとあらゆる人材が足りない」と述べた。
フロリダ州当局は、今後数日間で100人以上の看護師を州外から派遣し、医師についても他の州から応援をもらいたいと考えている、と述べた。また、医療スタッフの命を守る防護具も慢性的に不足しており、追加購入も急がねばならない。
マーティ博士は、最前線で働くスタッフたちにまず渡さなければならないN95マスクが足りず、他のサージカルマスクで代用していることに危機感を示した。
現在、最も人口の多いカリフォルニア州とテキサス州で暮らす数百万人の子供たちが、新学期を学校で迎える予定はない、と宣告されている。
大人たちが経済活動を無理やり再開させた結果、人生の中で最も重要かつ楽しい時期を過ごすはずだった子供たちが、その機会を奪われている。
教育、そして学校を再開するタイミングについて高度に政治化されている。トランプ大統領は速やかに、遅くとも9月までに学校を再開させない場合は、教育部門の予算をカットすると圧力をかけ、非難された。
学校の再開に関するCDCのガイダンスは今週末までに発表される予定だった。しかし、アメリカの主要メディアによると、最終段階で待ったがかかり、発表までにはもう少し時間がかかるという。
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