トランプ大統領は国の食糧供給を保護するために、食肉加工処理工場の再開を命じた

国防生産法

コロナウイルスの世界的拡大により、多くの企業が活動を停止している。しかし、ライフライン(電気、水道、公共交通機関、通信など)、スーパーマーケット、食品加工場などは、今も変わらず営業を続けている。病院、医療関係者と同じく、彼らが活動しなければ、国家は破綻するのだ。

28日、トランプ大統領は国の食糧供給を保護するために、閉鎖している食肉加工処理工場の再開および、稼働中の工場については現状を維持するよう命じた。これは「国防生産法」に基づく命令であり、拒否することはできない。

食肉加工処理業界でもコロナウイルスが暗い影を落としている。約3,300人の従業員、関係者がウィルスに感染し、これまでに20人が死亡した。結果、中西部にある22の同工場が閉鎖を余儀なくされている。

食料供給の問題は、発展途上国になるほど深刻度のレベルが増す。しかし、超大国アメリカの現状を見れば、先進国であっても同レベルの危機を引き起こしかねないことは明白。国連も世界の食料(食品)サプライチェーンが崩壊しつつあると警告している。

アメリカ国内で稼働を停止している同工場には、「スミスフィールド・フーズ(Smithfield Foods, Inc)」、「タイソン・フーズ(Tyson Foods)」、「カーギル(Cargill)」、「JBS USA」など。国内最大手の牛肉、豚肉生産者(企業)が所有する工場も含まれるため、食料供給に与える影響は非常に大きい。

食料サプライチェーン

食肉加工処理工場(業界)は、アメリカの経済維持および国民の生活に欠かすことのできない重要なインフラのひとつである。

ホワイトハウスは、「このまま閉鎖状態が続けば、国内の食料サプライチェーンは崩壊する。国民の生活に欠かせない重要なインフラであるからこそ、今すぐ再開せねばならない」と述べ、28日夜に行政命令が出された

また、今回の命令に対しホワイトハウスは、労働省と協力して65歳以上の従業員や基礎疾患を抱える者は自宅で待機させるなどの対策を企業に講じてもらう、と説明した。

大手食肉加工処理企業は、労働者をコロナウイルスから守りつつ企業活動を継続する、という難しい課題に直面している。

ウイルス感染拡大防止に欠かせない密集、密接対策も、工場内で実施することは非常に難しい。生産ラインで従業員同士の距離を確保すると、まともに仕事を行うことはできない、と業界関係者は言う。しかし、問題はそれだけではない。

従業員の多くは時間給で働く「低所得層の移民」である。彼らは働かねば生活もままならず、工場が再開されれば出勤する、それ以外選択肢はないのだ(多くの従業員が働きたいと熱望している)。また、低所得層ほど感染予防対策のガイドラインを「遵守したくても守れない」傾向にある。

狭い住居に大家族で生活している者、金銭的余裕がなく、マスクや消毒液を購入できない者、事情は様々だが、食肉加工処理業界で既にクラスターは発生し、結果、閉鎖に追いやられたのだ。慌てて工場を再開すれば、さらに大規模なクラスターが発生する可能性も否定できない。

業界関係者は・・・

タイソン・フーズのジョン・タイソン会長は、26日発売のワシントンポストとニューヨーク・タイムズにフルページ広告を掲載。「国の食糧供給が途絶えている」と警告した。

またタイソン会長は、「豚肉、牛肉、鶏肉の工場は閉鎖を余儀なくされている。閉鎖期間が短くても、何百万ドル分の食肉がサプライチェーンから姿を消すだろう。結果、食料品店で購入できる製品は大幅に制限される」と述べた。

処理工場が閉鎖されたことで、製品になるはずだった数百万頭の牛、豚、鶏は安楽死処理せざるを得ないという。残酷な話だが、それらを生かしておくと際限なくコストがかかる。特に豚肉は生産量を4分の1以下に削減しているため、影響が顕著だとタイソン会長は述べた。

アメリカ最大の食肉梱包組合である「ユナイテッド・フード・アンド・コマーシャル・ワーカーズ・インターナショナル・ユニオン(UFCW)」はトランプ政権に対し、食肉関連の企業に適切な保護具を提供し、かつ、従業員へのPCR検査体制を整備するよう求めた。

またUFCWは、「食料供給に関する懸念は連邦政府と共有する。しかし、感染者対応に苦慮する企業に対し活動再開を強制する行政命令は危険と言わざるを得ない。最も大切なことは、従業員の命を守ることだ。食肉加工処理業界を必要不可欠な存在と認める以上、従業員の命を守る対策は強調して行わねばならない」と述べた。

トランプ大統領は国防対策法発令前に行った記者会見の中で、「我々はタイソンと協力している。食料の問題はすぐに解決するだろう。私は大統領命令(国防対策法)に署名する。全てうまくいくと確信しており、結果、あらゆる責任問題は解決されるだろう」と述べた。

アフィリエイト広告
スポンサーリンク