医療体制の脆弱なアフリカ諸国。感染者数は緩やかに増加しており、大陸全体が危機にさらされている
ロックダウン措置を解除・緩和している国
アフリカで行われているロックダウンは、国によって措置の内容、厳しさが全く異なる。なお、各国に共通して言えることは、医療体制・システムが脆弱、貧困層が生活の糧を失っていることだ。
貧困層への影響を考慮し、ロックダウン措置を緩和した国もある。ガーナは主要都市に封鎖制限を課していたが、先日ロックダウンを解除、市内を自由に行き来できるようになった。ただし、大勢が集まるイベント、集会および学校の閉鎖は継続中である。
BBCガーナの特派員トーマス・ナーディ氏は、「ロックダウンは貧困層の生活を直撃していた。市内、路上販売などで生計を立てている者たちは特にである。政府、関係当局からの支援も限られており、解除に踏み切る以外手はなかったのだろう」と述べた。
ガーナのナナ・アクフォ・アド大統領はロックダウンの解除について、検査体制の拡充と治療センターを改善することで十分対処できると判断、解除に踏み切った。
コンゴ民主共和国も、経済活動に大打撃を受けた首都キンシャサのロックダウンを緩和した。1,000万人以上が暮らすアフリカ最大の都市が動き出したことで、コロナウイルスの感染拡大がさらに進むのではないかと懸念されている。
ロックダウン自体を発令していない国もある。タンザニアは3月中旬に初の感染者を確認、政府は教育センター、学校等の閉鎖措置に踏み切ったが、集会(公共、宗教関係など)は禁止されておらず、4月11日に国際便の運航を停止するだけにとどめている。
WHOアフリカ地域事務所のレベッカ・モティ氏は、ロックダウンを行っていないアフリカ諸国について、「大きな犠牲を払ったかもしれない。集会、人が集まるイベントなどを禁止しなければ、常にパンデミックのリスクにさらされる。我々は注意深く観察しなければならない」と述べた。
同じくWHOのテドロス・アダノム事務局長は、「ロックダウンを解除・緩和するのであれば、検査体制を確立し、さらに感染者の隔離、ケアする能力(医療体制)をしっかり確保せねばならない。制限を解除・緩和したうえで適切な処置を取れば良いが、失敗すればコロナウイルスの第二波が襲来するかもしれない」と述べた。
厳しいロックダウンを行っている国
厳しいロックダウン措置に踏み切った国も多い。アフリカ諸国の多くが様々な感染症と戦った経験を持つ(現在進行形の国も多い)。予防措置として、感染者が確認される前にロックダウン措置に踏み切った国は13か国だった。
南アフリカ政府は、4月30日からロックダウンを段階的に緩和すると発表した。同国の措置は世界で最も厳しいレベルに分類されるであろう。学校、大学は全て閉鎖。病院や刑務所への訪問を制限し、さらに不要な外出を禁じた。葬式を除くあらゆる集会が禁止され、違反した者を罰するべく各地に軍隊が配備されている。
アフリカで最も人口の多いナイジェリアは、3月末に国境を封鎖し、国際線の運航も全て停止した。その後、感染者が100人以上確認されたことで、ラゴス、アブジャなどの主要都市をロックダウン。州間の移動も制限した。
ジンバブエも感染者が確認される前に国境を封鎖し、人の往来を一切禁じた。
ケニアは地域によって異なる封鎖措置を実施しており、主要都市への出入りは禁止されている。また、夜間は一切の外出を禁ずる「外出禁止令」を発令、違反した400人以上が逮捕された。
大陸全土のコロナウイルス対策・対応を調整しているアフリカ疾病予防管理センター(CDC)は、各国のロックダウン措置が感染拡大防止に重要な役割を果たしていると述べた。
同センターのジョン・ケンガソン博士は、ロックダウンだけでなく、その期間中にどのような対応を取るかで結果は大きく異なると言い、「封鎖していなければ、さらに酷いパンデミックが発生していた。検査、感染者の隔離、濃厚接触者の追跡、関連する医療体制を強化することで、ウイルスの感染拡大を緩やかにできる」と述べた。
コロナウイルスが高齢者の脅威になっていることは周知の事実である。イギリス、イタリア、フランス、スペインなどでは、自宅や老人ホームで数えきれないほどの高齢者が亡くなっている。
高齢化率の高い欧州に対し、サハラ砂漠以南のアフリカ各国の平均年齢は約20歳。高齢者が少なく、感染しても重症化しにくいと一部の者は考えているようだ。
南アフリカの野党の一部は、ロックダウンの継続、必要性に疑問を呈している。経済活動が停滞すれば貧困層が苦しむだけでなく、「限られた財源」を支援や保証に充てねばならない。アフリカ諸国にそれだけの体力(財力)はないのだ。さらに、企業活動が停滞すれば、国の財政を支える貿易も行えず、地域経済はさらに悪化する。
また、治安部隊(警察、軍隊など)の過激な取り締まりと人権侵害も問題視されている。人権団体アムネスティ・インターナショナルの調査によると、南アフリカ、ケニア、ジンバブエ、ナイジェリアで治安部隊による虐待があったという。コロナウイルスの感染が拡大すれば、国民の命を奪うだけでなく、国家の分断も招きかねない。
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Coronavirus: The different approaches to lockdowns in Africahttps://t.co/NpagSceWt7
— Scheffer (@ThomasScheffer3) April 26, 2020