ニュージーランド国内におけるコロナウイルス感染者は102人、これまでに12人が死亡した
ジャシンダ・アーダーン首相は、ニュージーランドが最も厳しいロックダウンを措置を行い、そして国民、コミュニティの力でコロナウイルスの感染拡大を抑えつつあると述べ、ロックダウンの緩和措置を行うと発表した。
ニュージーランドは国内に持ち込まれたコロナウイルスをほぼ抑えた、と言っても良い。21日時点の感染者数は102人、12人が死亡したが、他国に比べると際立って少ないことは明らかである。アーダーン首相のリーダーシップは世界各国から注目を集めている。
3月11日、WHOが「パンデミック」を宣言してから2日後、アーダーン首相と政府は入国者に対する14日間の隔離措置をいち早く開始。同措置を世界で最初に取り入れ、入国者によるコロナウイルスの侵入を阻止。それから約1週間後のロックダウン(入国禁止)につながった。
ロックダウンから2週間が経過し、国内の感染者数は確実に減少した。また、クラスターは全くと言って良いほど発生していない。アーダーン首相は4月28日にロックダウンを解除、措置を「段階的(部分的)に」緩和すると発表した。
ニュージーランドは島国、かつ経済規模の小さい国である。人口は約500万人、最強の国境(太平洋)に守られており、ロックダウンが容易なことは間違いない。しかし、同じ島国の「日本」はコロナウイルスの対応に苦慮している。
ニュージーランド政府のメッセージは非常に明確かつ、国民の生活に寄り添ったものだった(そう考えていない人もいるようだが)。トランプ大統領は「見えない敵、コロナウイルスとの戦争」を宣言、他国の政府も似たり寄ったりである。これに対し同国の政府は「団結してウイルスに立ち向かう」ことを重要視した。
アーダーン首相は「我々は500万人のチーム」と会見等で繰り返し述べている。もちろん、ただ国民の心に訴えかけても、「行動が伴わねば」無能扱いされるだろう。既に述べた通り、いち早い入国制限、ロックダウンを実施したことで、国民は首相を信じ、自分と家族の身を守った。
さらに、政府が科学者の意見を柔軟かつ丁寧に聞き入れたことも、パンデミックの防止につながった。オタゴ大学のマイケル・ベイカー教授は政府への助言を行ったひとりである。
ベイカー教授は、コロナウイルスを抑制する、ではなく「根絶する」ことが究極の目標であると述べた。また、「中国は最も野心的にコロナウイルスの開発を進めており、世界がそれに追随している。中国に住む約14億人はウイルスに感染しなかった。ニュージーランドの500万人も守ることができる」と付け加えた。
教授の元にはアーダーン首相と保険局長などから様々な情報がもたらされ、それを元に助言等を行ったという。より迅速かつ正確にパンデミックを封じ込めるためには、科学とリーダーシップ(政府)の連携が重要なのだ。
ラジオ・ニュージーランド、上級ジャーナリストのサラ・ロブソン氏は、「教授は政府と密に連携を図り、コロナウイルスに関する多くの複雑な情報を慎重かつ冷静に判断、伝達し、政府の方針決定に尽力した。教授が感染者数の増加と傾向、危険性を明確に示し、アーダーン首相はロックダウンを決断。科学者との密なコミュニケーションがニュージーランドの感染防止対策成功につながった」と付け加えた。
アーダーン首相の姿勢、態度は一貫している。「親切に、落ち着いて(Be kind.Stay calm)」「強く、親切に(Be strong.Be kind)」と国民に伝え続け、道路の電光表示板にもこのメッセージが表示されている。
ロックダウンは国民に大きな負担を強いることになる。首相は自身と閣僚、公共事業の最高責任者他の給与を半年間20%削減すると発表。可能な限りコストを削減し、医療物資の調達や補助金などの費用に充てるという。
オークランド大学のシオキシ・ウィルズ准教授も政府のサポートにあっている医療関係者のひとり、コロナウイルスに関連する研究などの最新情報を更新、情報提供を行っている。
ウィルズ准教授はコロナウイルス感染予防対策のカギは「社会的距離」にあるという。感染が広がる「前に」ロックダウン措置を行えば、パンデミックを防ぐことができるはずだ。しかし、それを行う、管理することは非常に難しい。ロックダウンのタイミングが少しでも遅れれば、大惨事を招く。
アーダーン首相はロックダウン措置の緩和を発表したが、あくまで「段階的に」である。学校と一部の企業は活動を再開できるものの、全てが元通りになるわけではない。首相は国民の苦労と努力が無駄にならぬよう、緩和措置は慎重に慎重を期して行うと述べた。
また首相は、医療システムおよび検査体制の拡充、コロナウイルスの追跡体制の増強に向け予算を投じると述べた。感染はほぼ終息しつつあるが、それでも出来る限りの対策を準備し、最悪の事態に備えるという。
ニュージーランドは「ワンチーム」となり、コロナウイルスを抑制しつつある。また、ロックダウンの解除に関しても、一気に規制を緩めるのではなく、段階的にかつ慎重に行うと発表した。
「ウイルスと共存する」と述べ始めた国まで出るなかでNZはSARS-CoV- 2の根絶を目指している。
— James F. (@gamayauber01) April 21, 2020
アーダーン首相の「われわれは500万人のチーム」という言葉は合い言葉になっているね。https://t.co/Def1L045el