コンテンプト・オブ・コート 3-5
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷。
マリベルは、マイクから渡されたスマートフォンの画面を見ていた。
防犯カメラの映像だった。
裁判所の建物の前を、一人の男が歩いている。
ロバート・ヘイズ裁判官だった。
その手には携帯電話がある。
ヘイズは周囲を確認した。
そして、前を歩いていた女性の後ろへ近づく。
携帯電話を低い位置に向ける。
女性のスカートの中を撮影している。
映像はそこで止まった。
マリベルはスマートフォンから目を離した。
ヘイズが立ち上がる。
「裁判長、これは裁判所に対する謀略、いやがらせです」
マイクはヘイズを見る。
「このようなことをする男は裁判に相応しくありません」
「何を証拠にそんなことを言う!」
「映像があります」
「捏造だ!」
「防犯カメラの映像です」
ヘイズは言葉を失った。
アトキンソンが立ち上がる。
「裁判長、本件とは無関係の事案かと」
マイクがアトキンソンを見る。
「検事は知らないようですが、これは警察内では有名な話ですよ」
「何ですって?」
「彼は盗撮魔です」
ヘイズが声を荒らげる。
「ふざけるな!」
マイクは無視した。
「今日、インターネットで記事が上がるはずです」
アトキンソンがヘイズを見る。
ヘイズは黙った。
マリベルが口を開いた。
「ひとまず着席してください」
ヘイズは不満そうに椅子へ座った。
マイクも弁護人席へ戻る。
ローリーは傍聴席から、その様子を見ていた。
マイクが着席する。
そして、すぐに口を開いた。
「それから、もう一つあります」
マリベルがマイクを見る。
「何ですか?」
「裁判長自身の忌避を申請します」
法廷内がざわついた。
マリベルの表情は変わらない。
「私も交代ですか?」
「はい」
「理由を説明してください」
マイクは三人の裁判官を見る。
「彼がやっていることを知りながら黙認したか、まったく知らなかったか」
ヘイズがマイクを睨む。
マイクは続けた。
「いずれにしても、監督不行き届きです。交代理由としては十分かと」
アトキンソンが眉をひそめる。
「弁護人、その理由には無理があります」
「そうですか?」
「裁判長に部下の私生活まで監督する義務があるとでも?」
「裁判所の品位に関わる問題です」
「あなたが判断することではありません」
マリベルが手を上げる。
二人の言葉が止まった。
「その動画が事実であれば、彼は懲戒処分になるでしょう」
マリベルはヘイズを見る。
「この件については、確認が必要です」
それからマイクを見る。
「忌避申請に関しては、詳細を確認し、慎重に判断します」
「分かりました」
マイクはあっさり答えた。
ローリーは傍聴席からマイクを見ていた。
あれだけ強く申し立てたのに、マイクはそれ以上、何も言わなかった。
アトキンソンが立ち上がった。
「裁判長」
「何ですか?」
「いますぐ弁護人を拘束してください」
法廷内がざわつく。
マリベルがアトキンソンを見る。
「なぜですか?」
「先ほど法廷で暴れた者たちは、弁護人の同僚です」
マイクは黙っている。
「わざと暴れて裁判を妨害し、弁護人が到着するまで時間稼ぎしたと思われます」
アトキンソンは続けた。
「司法妨害罪です。いますぐ拘束してください」
マリベルは黙ってアトキンソンを見る。
「彼らが弁護人の同僚である証拠もあります」
アトキンソンが書類を差し出す。
マリベルは書類を確認した。
マイクは動かない。
ローリーが立ち上がろうとする。
マイクが小さく手を上げた。
(動くな)
ローリーは動きを止めた。
マリベルが顔を上げる。
「……認めます」
警備員に視線を向ける。
「弁護人を拘束してください」
警備員がマイクへ近づく。
「マイク・ハンター弁護士。立ってください」
マイクは立ち上がった。
両腕を後ろへ回される。
手錠がかけられる。
ローリーは傍聴席からその様子を黙って見ていた。
マリベルは法廷全体を見回した。
「閉会します」
木槌が机に置かれる。
法廷の扉が開いた。
マイクは警備員に付き添われ、法廷を出た。
