コンテンプト・オブ・コート 3-1
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷内には、まだ緊張が残っていた。
床には倒れた椅子がいくつか残っている。
消火器から噴き出した消火剤も、床のあちこちに残っていた。
警備員が、乱闘に関与した男たちを一人ずつ拘束していく。
全員、エイダンの部下だった。
一人の男が腕を振りほどこうとする。
「離せ!」
「抵抗するな!」
「俺は何もしてない!」
「法廷で乱闘したでしょう」
男は黙った。
別の男も両腕を後ろへ回される。
「歩け」
「分かった」
男たちは次々と法廷の外へ連れ出されていく。
その様子を、マリベルは裁判官席から見ていた。
「全員拘束しなさい」
警備員が答える。
「はい」
最後の男が連れ出される。
扉が閉まった。
法廷が静かになる。
マリベルは法廷内を見回した。
「こんなにひどい裁判は初めてです」
誰も答えない。
マリベルは弁護人席を見る。
「マイク・ハンター弁護士」
「はい」
「遅れた理由を説明してください」
ローリーが立ち上がった。
「裁判長、来る途中、私がトラブルに巻き込まれて……」
マリベルがローリーを見る。
「あなたには聞いていません」
ローリーが口を閉じる。
マリベルはマイクへ視線を戻した。
「弁護人が説明を」
「はい」
マイクは立ち上がった。
「私が法廷に立つのを快く思わない人が……」
マリベルが眉を寄せる。
「それはどういう意味です?」
「そのままの意味です」
マイクは自分の額に手を当てた。
指先に血が付いた。
マイクは手を離す。
手のひらが赤く染まっていた。
ローリーが立ち上がる。
マイクは自分の手を見た。
そして、そのままマリベルへ向ける。
「こういうことです」
法廷が静かになった。
マリベルは血の付いた手を見る。
「怪我をしたのですか?」
「少し」
「何があったのです?」
「説明すると長くなります」
マリベルはマイクを見つめた。
「法廷に遅れるほどのことだったのですか?」
マイクは答えなかった。
ローリーがマリベルに向き直る。
「裁判長」
「何ですか?」
「医療処置を行ってもよろしいですか?」
マリベルはマイクの額を見る。
血が頬を伝っている。
そして、法廷内を見回した。
乱闘。
拘束された男たち。
倒れた椅子。
床に残った消火剤。
予定を大きく過ぎた開廷時間。
マリベルは短く息を吐いた。
「……休廷します」
「ありがとうございます」
ローリーがマイクを見る。
マイクは何も言わなかった。
警備員が二人のところへ近づいてくる。
「医務室へ案内します」
「分かりました」
ローリーが先に歩き出す。
マイクもその後に続く。
二人が法廷を出る。
扉が閉まった。
マリベルは二人が出ていくのを見届けた。
そして、机の上の書類へ視線を戻した。
