コンテンプト・オブ・コート 2-39
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷内では乱闘が続いていた。
警備員が男の腕をつかむ。
「動くな!」
「離せ!」
男が腕を振りほどく。
別の警備員が近づいた。
そのとき、エイダンの部下の一人が壁際へ走った。
消火器をつかむ。
「おい、何をする!」
男は消火器を持ち上げた。
白い粉末が法廷内へ一気に噴き出した。
「何だ!」
「見えない!」
法廷内が白く煙る。
傍聴人から悲鳴が上がった。
「全員、落ち着いて!」
マリベルが声を張る。
だが、誰も何が起きているのか分からない。
消火器を持った男が、警備員へ向かって走った。
「止まりなさい!」
警備員が身構える。
男はそのまま突進した。
警備員が腕を伸ばす。
男は直前で足を止めた。
その勢いで、近くにあった椅子へ倒れ込む。
椅子が大きく動いた。
男はその椅子をつかむ。
そして、自分の頭へ勢いよく打ちつけた。
鈍い音が法廷に響く。
男が床へ倒れた。
一瞬、法廷が静まり返る。
男は頭を押さえた。
そして、大声で叫んだ。
「あああ、血が出たー!」
誰も動かない。
「死んじゃうよ!」
男は床を転がった。
「おかあさーーん!」
さらに声を張る。
「助けてーーー!」
マリベルは目を閉じた。
ゆっくり息を吐く。
そして、立ち上がった。
「もう結構です」
誰も動かない。
マリベルが法廷全体を見回す。
「全員、拘束しなさい」
警備員が動き始める。
「この乱闘に関与した者、全員です」
「はい!」
警備員が男たちを一人ずつ取り押さえていく。
「抵抗するな!」
「腕を後ろへ!」
「座れ!」
エイダンの部下たちは、次々に拘束されていった。
床に倒れていた男も腕を取られる。
「ああ、痛い!」
「立て!」
「無理!」
「立ちなさい!」
「裁判長! 助けてください!」
マリベルは男を見た。
「自分で頭を打ったのでしょう」
男は黙った。
その瞬間だった。
法廷の入口が開いた。
全員が振り返る。
マイクが入ってきた。
その後ろにローリーが続く。
マイクは法廷を見回した。
倒れた椅子。
床にぶちまけられた消火剤。
拘束される男たち。
そして、壇上のマリベル。
ローリーも目を見開いた。
「……何これ」
マイクは答えなかった。
そのまま裁判官席へ向かう。
マリベルがマイクを見る。
「マイク・ハンター弁護士ですか?」
「はい」
「ずいぶん遅かったですね」
マイクは頭の傷を手で押さえた。
「お待たせしました」
マリベルは何も言わない。
マイクは弁護人席へ向かった。
そして、振り返る。
「裁判を始めましょう、裁判長!」
法廷内に沈黙が戻った。
マリベルはマイクを見つめた。
その額から、まだ血が流れている。
マリベルは小さく息を吐いた。
「……座りなさい」
マイクが弁護人席に座る。
ローリーは傍聴席へ向かった。
拘束された男たちが警備員に連れ出されていく。
マリベルは法廷を見回した。
「まず、ここを片付けてください」
警備員が動き始める。
マリベルは書類を整えた。
