コンテンプト・オブ・コート 2-37
アンカレッジ連邦地方裁判所。
法廷内では、まだ乱闘が続いていた。
警備員とエイダンの部下たちが、法廷の中央でもみ合っている。
一人の警備員が男の腕をつかんだ。
「大人しくしろ!」
「そっちこそ離せ!」
男が腕を振る。
警備員がよろめく。
別の警備員が横から入った。
「抵抗するな!」
「うるさい!」
男が押し返す。
二人が壁際まで移動した。
その横では、別の男が床に倒れていた。
「立てるか?」
「まだやれる」
男は立ち上がった。
その男の近くにいた仲間が、小さな声で言った。
「あと少しだ」
「分かってる」
二人はすぐに離れ、それぞれ別の警備員の前へ移動した。
マリベル裁判官は法廷の中央を見ていた。
何度注意しても、誰も言うことを聞かない。
机を叩く。
「法廷では静粛に、いいかげんにしなさい。全員逮捕しますよ」
男たちの動きが一瞬止まった。
だが、すぐにまたもみ合いが始まる。
マリベルが眉をひそめる。
「本当に聞く気がないのね」
アトキンソン検事は法廷の端に立っていた。
「裁判長、このままでは危険です」
「分かっています」
マリベルは警備員を見る。
「警察を呼んでください」
「すでに連絡しています」
「では、到着するまで全員を押さえておきなさい」
「はい」
警備員が男を一人、床へ押さえつける。
男は抵抗する。
「離せ!」
「動くな!」
「俺は何もしてない!」
「今、殴りかかったでしょう!」
「そっちが先だ!」
マリベルはため息をついた。
被告人席を見る。
カーターは静かに座っていた。
その隣では、先ほど弁護士を名乗った男が警備員から離れ、椅子の近くに立っている。
マリベルが声をかける。
「あなた」
男が振り向く。
「はい」
「この騒ぎを止める気はないのですか?」
「止めようとはしています」
「そうは見えませんが」
男は答えなかった。
マリベルは目を細める。
「あなたたちは何をしに来たのですか?」
男は黙っていた。
そのとき、法廷の後方で携帯電話が鳴った。
男の一人がポケットから取り出す。
画面を見る。
短いメッセージが届いていた。
男は内容を確認した。
そして、すぐに画面を消した。
「どうした?」
隣の男が小声で聞く。
「もう少しだ」
男は法廷の入口を見る。
「マイクが戻るまでだ」
二人はそれ以上、話さなかった。
マリベルがその様子に気づく。
「そこのあなた」
男が振り返る。
「何ですか?」
「携帯電話を見ていましたね」
「時計を確認しただけです」
「この状況で?」
「時間が気になったので」
マリベルは男を見つめた。
男はそれ以上答えなかった。
遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
男たちの動きが一瞬止まる。
警察が近づいている。
マリベルが言った。
「もう終わりです。全員、動かないでください」
警備員が男たちを押さえ始める。
エイダンの部下の一人が再び携帯電話を見る。
画面には何も表示されていない。
男は小さく息を吐いた。
心の中で呟く。
(あと少しの辛抱だ)
法廷の入口へ目を向ける。
まだ、マイクの姿はない。
男は携帯電話をポケットへ戻した。
乱闘は収まりかけていた。
だが、マイクが戻るまで。
男たちは最後まで時間を稼ぐつもりだった。
