コンテンプト・オブ・コート 2-28
アンカレッジ。
早朝。
ローリーの実家。
外はまだ薄暗かった。
ローリーは玄関でコートを着た。
テーブルの上に置いていた鞄を手に取る。
「行ってきます」
返事はなかった。
トーマスはまだ寝ている。
ローリーは玄関のドアを開けた。
冷たい風が入ってくる。
外へ出る。
ドアを閉め、鍵をかける。
ローリーは歩き出した。
自宅前の道路には、黒いセダンが一台止まっていた。
エンジンはかかったままだった。
ローリーは一度、車を見る。
知らない車だった。
そのまま通り過ぎようとした。
すると、後部座席のドアが開いた。
男が降りてくる。
黒いコート。
ローリーの前まで歩いてきた。
「ローリー・ブルックスさんですね」
ローリーが足を止める。
「……誰?」
男は笑った。
「マイク・ハンターの彼女ですね」
ローリーの眉が動く。
「彼女?」
男は少し首を傾けた。
「違うんですか?」
「違う」
ローリーは男から距離を取った。
「私は弁護士事務所の事務員よ」
「そうですか」
男はジョニーだった。
ジョニーはローリーを見た。
「それなら話が早い」
「何の話?」
ジョニーは答えなかった。
ローリーは周囲を見た。
早朝の道路には、人影がない。
「あなた、誰?」
「マイク・ハンターの友人です」
「何の用?」
「少し付き合ってもらいます」
「断るわ」
ローリーが歩き出そうとした。
その瞬間、背後から男が近づいた。
両腕をつかまれる。
「何するの!」
ローリーが振り返る。
別の男がいた。
「離して!」
ローリーは腕を振りほどこうとした。
だが、力が強い。
もう一人の男が近づいてくる。
ローリーは足を踏ん張った。
「誰か!」
声を上げる。
男が口を押さえた。
「ん……!」
ローリーは激しく抵抗した。
鞄が地面に落ちる。
中から書類が飛び出した。
ジョニーは何食わぬ顔で資料を拾い上げる。
「静かにしろ」
ローリーは男の手に噛みつこうとした。
男が腕を引く。
その隙に、ローリーは体をひねった。
だが、別の男に羽交い絞めにされる。
「離せ!」
ローリーは叫んだ。
ジョニーが近づく。
「暴れないほうがいい」
「ふざけないで!」
「マイク・ハンターに連絡したければ、あとでできます」
「誰があんたたちに――」
言葉の途中で、ローリーは車へ押し込まれた。
後部座席に体が倒れる。
男が続いて乗り込む。
ジョニーも反対側から乗り込んだ。
「出せ」
運転手がアクセルを踏む。
黒いセダンが走り出した。
ローリーは窓を叩いた。
「止めて!」
返事はない。
車は住宅街を抜けていく。
ローリーはジョニーを睨んだ。
「何が目的なの?」
ジョニーは前を向いたままだった。
「すぐ分かります」
「マイクに何をするつもり?」
ジョニーが笑う。
「それは、本人に聞いてください」
ローリーは黙った。
車はさらに速度を上げた。
