コンテンプト・オブ・コート 2-27
総合建設企業テラ・インフラテック本社。
夜。
アンカレッジの中心部にある高層ビル。
最上階。
ケンドリック・コールの執務室には、街の明かりが広がっていた。
コールは窓際に立っていた。
机の上には、いくつかの書類が置かれている。
ドアがノックされた。
「入れ」
ドアが開く。
オースティン弁護士が入ってきた。
「失礼します」
コールは振り返らない。
「どうした?」
オースティンは数歩進んだ。
「報告があります」
「なんだ」
「カーターが弁護士を変えました」
コールがゆっくり振り返る。
「誰に?」
「マイク・ハンターです」
コールの表情は変わらない。
「ハンター?」
「はい」
「次の公判には?」
「マイク・ハンターが出ます」
コールは黙った。
オースティンは続ける。
「カーター本人が、ハンターに弁護を委任しました」
「そうか」
「今までの弁護方針をすべて変える可能性があります」
コールは机へ歩いた。
「何か問題があるのか?」
「ハンターは、かなり調べています」
「何を?」
オースティンは一瞬、言葉を止めた。
「カーターの事件です」
「それだけか?」
「……今のところは」
コールは椅子に座った。
「お前は、ハンターに何を知られている?」
「分かりません」
「分からない?」
「はい」
コールはオースティンを見た。
「弁護士だろ」
「申し訳ありません」
「謝る必要はない」
コールは机の上の書類を一枚取った。
カーターの事件資料だった。
「裁判は始まったばかりだ」
「はい」
「今のところ、何も変わっていない」
「そうです」
「なら、問題ない」
オースティンは黙った。
コールは書類を机に戻した。
「突然やってきた男が弁護人になったぐらいで、何が変わる?」
「ですが、ハンターは――」
「馬鹿どもが知恵を絞っても、ムダ死にするだけだ」
オースティンは口を閉じた。
コールは椅子に背を預ける。
「カーターを有罪にする証拠は揃っている」
「はい」
「検察も動いている」
「はい」
「お前は今まで通りやれ」
「分かりました」
オースティンは頭を下げた。
「ハンターについては?」
コールは答えなかった。
携帯電話を取り出す。
画面を操作し、ジョニーに電話をかける。
「俺だ」
短い沈黙。
「ジョニー、仕事だ」
電話の向こうから声が返ってくる。
「マイク・ハンターの周りを調べろ」
コールは窓の外を見る。
「本人には手を出すな」
一度、言葉を切る。
「まずは周りからだ」
電話の向こうで、ジョニーが何か答えた。
「分かった」
コールは電話を切った。
オースティンがコールを見る。
「誰を?」
「それはジョニーに任せる」
「ハンター本人は?」
「触れるな」
「分かりました」
コールはオースティンを見る。
「お前は法廷だけ見ていろ」
「はい」
「ハンターが何を出してくるか確認しろ」
「分かりました」
「余計なことはするな」
「はい」
オースティンは頭を下げた。
「失礼します」
ドアへ向かう。
コールはその背中を見ていた。
ドアが閉まる。
コールは一人になった。
窓の外には、アンカレッジの街が広がっている。
コールの携帯電話が鳴った。
画面を見る。
ジョニーからだった。
コールは電話に出る。
「早いな」
電話の向こうから、ジョニーの声が聞こえる。
コールは黙って聞いていた。
やがて、口を開く。
「分かった」
短い沈黙。
「やれ」
電話を切る。
コールは携帯電話を机に置いた。
そのころ。
アンカレッジの別の場所では、黒いセダンが一台、静かに走っていた。
運転席には男が一人。
後部座席にはジョニーが座っている。
ジョニーは携帯電話をしまった。
「止めろ」
運転手が答える。
「はい」
黒いセダンが速度を落とした。
ジョニーは窓の外を見る。
その先に、一人の女が歩いている。
