コンテンプト・オブ・コート 2-26
マイクの事務所。
深夜。
窓の外には、アンカレッジの街明かりが見えていた。
通りを走る車は少ない。
マイクは机に向かっていた。
机の上には、カーターの事件資料が並んでいる。
捜査報告書。
証拠写真。
証人一覧。
検察側の提出資料。
弁護人選任に関する書類。
マイクは資料を一枚ずつ確認していた。
カーターを有罪にするために集められた証拠。
その中に、二十年前の事件につながるものがある。
マイクは一枚の写真を手に取った。
しばらく見つめる。
そのとき、建物の外で車が止まった。
エンジンが切れる。
少しして、階段を上がる足音が聞こえた。
足音が止まる。
ドアがノックされた。
「はい」
ドアが開く。
ヒューイ・フリーマンが入ってきた。
マイクは顔を上げた。
フリーマンは何も言わず、室内を見回した。
「ここで妹が死んだのか」
「ああ」
フリーマンは短く息を吐いた。
「そうか」
それ以上、何も言わなかった。
フリーマンは机へ歩いた。
資料に目を落とす。
「カーターか?」
「ああ」
「弁護を引き受けたんだな」
「カーターが委任した」
フリーマンは資料を見た。
「始まるのか」
マイクは手にしていた写真を机へ戻した。
「二十年前に始まってる」
フリーマンはマイクを見る。
しばらく黙っていた。
「リサの事件も、終わってない」
「ああ」
「お前は、そう考えてるんだな」
「ああ」
フリーマンは机の上の資料に目を向けた。
「カーターは、あの夜にいた」
「ああ」
「だから弁護する」
「それだけじゃない」
フリーマンがマイクを見る。
「分かってる」
マイクは黙った。
フリーマンは続けた。
「二十年前の事件に関わった人間を、一人ずつ追うつもりだろ」
「ああ」
「カーターも、その一人か」
「ああ」
「出す必要がある」
「ああ」
「そのために弁護人になった」
「そうだ」
フリーマンは頷いた。
マイクは椅子から立ち上がった。
「カーターを無罪にする」
「その後は?」
マイクは答えなかった。
フリーマンが待つ。
しばらくして、マイクが口を開いた。
「裁きを下す」
フリーマンは何も言わない。
「お袋を殺した奴」
マイクの声は低かった。
「かかわった奴全員だ」
フリーマンはマイクを見る。
「殺すのか?」
マイクは答えなかった。
机の上の写真を見る。
「それより苦しませる」
フリーマンの表情は変わらない。
「生き地獄か」
「ああ」
「全員に?」
「全員だ」
フリーマンはしばらく黙っていた。
「お前らしいな」
マイクはフリーマンを見る。
「止めないのか?」
「止めてもやるだろ」
「ああ」
「なら、言うことはない」
フリーマンは机の資料を一枚取った。
カーターの捜査報告書。
内容を確認する。
「これが今の入口か」
「そうだ」
「この先に、二十年前の連中がいる」
「いる」
「名前は?」
マイクはフリーマンを見る。
「分かってる」
フリーマンはそれ以上聞かなかった。
資料を机に戻す。
マイクは黙っていた。
フリーマンは窓の外を見る。
「相手も黙って待ってるわけじゃない」
「ああ」
「カーターが弁護人を変えたことも、すぐに伝わる」
「もう伝わってる」
フリーマンがマイクを見る。
「早いな」
「向こうも動いてる」
「そうか」
フリーマンは小さく頷いた。
「なら、こっちも動くしかない」
マイクは机の上の資料をまとめた。
「そうする」
フリーマンはドアへ向かった。
途中で足を止める。
「マイク」
「何だ」
「妹のことは、俺も忘れてない」
マイクは答えなかった。
フリーマンは振り返らない。
「お前が何をするつもりなのかも分かってる」
マイクが顔を上げる。
「……そうか」
フリーマンはドアを開けた。
「必要なときは呼べ」
「ああ」
フリーマンは事務所を出た。
ドアが閉まる。
マイクは一人になった。
時計の音が響いている。
マイクは机へ戻った。
カーターの事件資料を開く。
捜査報告書。
証拠写真。
証人一覧。
一枚ずつ確認する。
カーターを無罪にする。
刑務所から出す。
そして、二十年前の事件へ戻る。
マイクは一枚の写真を手に取った。
しばらく見つめる。
「ここからだ」
二十年前に始まった事件を終わらせるために、マイクは動き始めた。
