コンテンプト・オブ・コート 2-20
アンカレッジ刑務所。
面会室。
カーターはアクリル板の向こうに座っていた。
向かいにマイクがいる。
カーターは腕を組んでいた。
「何の用だ」
マイクは椅子に座ったまま、カーターを見る。
「裁判を見たよ」
「それがどうした」
「オースティン弁護士は頼りになるね」
カーターの表情が変わる。
「何が言いたい」
「オースティンは、あなたを刑務所に入れたいんだよ」
カーターがマイクを睨む。
「馬鹿なことを言うな」
「そう思うなら、これを見ろ」
マイクは鞄からタブレットを取り出した。
画面に映像が流れる。
建物の屋上。
その下にある駐車場。
遠くから撮影された映像だった。
カーターが画面を見る。
「これは……」
「オースティンだ」
映像の中で、オースティンが誰かと電話で話している。
カーターは画面に顔を近づけた。
音声が流れる。
「私です」
「先ほど、マイク・ハンターと接触しました」
「カーターの事件に関わるつもりのようです」
カーターの表情が変わる。
「俺のことを話しているのか?」
「ああ」
マイクは答えた。
オースティンが続ける。
「ええ。問題ありません」
「カーターの裁判は私に任せてください。うまくやりますよ」
別の男の声が入る。
「奴を刑務所に閉じ込めてくれれば報酬を払う。簡単だろう」
カーターは黙った。
マイクは映像を止めない。
「まだある」
音声が続く。
「カーターは馬鹿ですよ」
「あと、気になることがあるんですが……」
「カーターに弱みでも握られてるんですか?」
カーターの眉が動く。
続いて、電話の相手の声が入った。
「……証人が証言するそうだが、どう処理するつもりだ」
オースティンが答える。
「心配しないでください」
「カーターに有利な証言はしませんよ」
音声が終わる。
面会室が静かになった。
カーターはしばらく画面を見ていた。
「……いつ撮った?」
「裁判の前」
「誰が撮った?」
「それはどうでもいい」
マイクはタブレットを机の上に置いた。
「まだ続きがある」
カーターが顔を上げる。
マイクは別の音声を再生した。
「計画通りです。バレてない」
「弁護するフリをするだけですよ」
「簡単だ」
「有罪になっても控訴審で勝つと言えばいい」
「心配いらないですよ……」
音声が終わった。
カーターは椅子の背もたれに体を預けた。
「……あいつ」
低い声だった。
マイクがタブレットを鞄に戻す。
「どうしようもないな」
カーターが顔を上げる。
「電話の相手は誰だ?」
「テラ・インフラテックのコールCEOだ」
カーターの目が細くなる。
「コール……」
「彼はあなたに刑務所にいてほしいと思っている」
「なぜ俺を?」
「そこまでは分からない」
マイクは即答した。
「でも、オースティンに金を払っている。それだけは確かだ」
カーターは黙っている。
マイクは鞄から書類を取り出した。
「それと、これを」
アクリル板の下から書類を差し入れる。
「契約書を用意した」
カーターは書類を見る。
「俺が弁護する」
「お前が?」
「ああ」
マイクはカーターを見る。
「サインしろ」
カーターは契約書を手に取った。
最初のページを見る。
次のページをめくる。
そこには弁護人としてのマイクの名前と、委任に関する条項が並んでいた。
カーターは最後のページまで確認した。
「これで俺を出せるのか?」
「無罪を証明できればな」
「簡単に言うな」
「簡単だとは言っていない」
マイクは椅子にもたれた。
「だが、今の弁護士に任せていれば、あなたは有罪になる」
カーターは契約書を見た。
「俺はまだ負けていない」
「そうだな」
「裁判は終わっていない」
「ああ」
「なら、俺は自分で戦う」
マイクは黙った。
カーターは契約書を机の上に戻した。
「騙されないぞ」
「……」
「お前が何を知っているのかは知らん」
カーターは立ち上がった。
「だが、俺は必ず無罪になる」
係員が面会室の扉を開ける。
カーターは書類を残したまま、出口へ向かう。
「カーター」
カーターが足を止める。
マイクは席を立たなかった。
「次に何か起きても、俺は助けない」
カーターは振り返らない。
「必要ない」
そう言って、面会室を出ていった。
扉が閉まる。
マイクは机の上に残った契約書を見た。
そして、ゆっくり鞄にしまった。
