コンテンプト・オブ・コート 2-19
アンカレッジ連邦地方裁判所。
マリベル裁判官の執務室。
法廷から戻ったマリベルは、机の前に座っていた。
その向かいにアトキンソン検事とオースティン弁護士がいる。
三人は穏やかな表情で話していた。
アトキンソンが資料を机の上に置く。
「予定通りです」
マリベルが頷く。
「立派に仕事をこなすようになったわね」
「ありがとうございます」
オースティンが笑う。
「今日は検事の顔を立てたんですよ」
アトキンソンがオースティンを見る。
「そうだったんですか?」
「あなたが提出した証拠を無駄にしたくなかっただけですよ」
マリベルがオースティンを見る。
「あなたは手加減しすぎよ」
「そうですか?」
「ええ」
マリベルは机の上の書類をまとめた。
「もう少し厳しくてもよかったでしょう」
オースティンは笑った。
「次はそうします」
アトキンソンが立ち上がる。
「それでは、私は戻ります」
「ええ。ご苦労さま」
アトキンソンは二人に頭を下げ、執務室を出ていった。
扉が閉まる。
部屋が静かになった。
マリベルは椅子に座ったまま、オースティンを見る。
先ほどまでの表情が消えている。
「今日の態度は何?」
オースティンの表情が変わる。
「ふざけてるの?」
「申し訳ありません」
「証人の反対尋問もしない」
マリベルは机の上を指で叩いた。
「証人も申請していない。証拠目録も不十分。あんな弁護をすれば、誰が見てもおかしいでしょう」
「判決を下しやすいようにしようと」
「だから?」
「検察側の証拠が十分に見えるようにしました」
マリベルは立ち上がった。
オースティンは椅子から動かない。
「あなたの仕事は、私に恥をかかせることじゃないでしょう」
「分かっています」
「なら、なぜあんなことをしたの?」
オースティンは黙った。
マリベルが机の横を通り、オースティンの前で止まる。
「床に伏せなさい」
オースティンは一瞬、マリベルを見る。
「……はい」
立ち上がり、床に伏せる。
マリベルはオースティンの頭に足を置いた。
「生活に余裕ができすぎて、忘れた?」
オースティンは床に伏せたまま動かない。
「私の顔に泥を塗らないで」
「申し訳ありません」
マリベルは足に力を加えた。
「誰のおかげで今の仕事を続けられていると思っているの?」
「分かっています」
「分かっているなら、自分の仕事をしなさい」
「はい」
「必ず期待に応えます」
マリベルは黙っている。
「信じてください」
しばらくして、マリベルは足をどけた。
「立ちなさい」
オースティンがゆっくり立ち上がる。
マリベルは椅子に戻った。
「三日後よ」
「はい」
「今度は失敗しないで」
「分かりました」
オースティンは頭を下げた。
マリベルは書類に目を落とした。
