コンテンプト・オブ・コート 2-18
アンカレッジ連邦地方裁判所。
証人席に座った男が、正面を見ていた。
アトキンソン検事が質問を続ける。
「被告人は犯行時刻、あなたと一緒にいたと主張しています」
証人は黙っている。
「しかし、あなたは被告人と会っていないと証言しています」
「はい」
「間違いありませんか?」
「間違いありません」
アトキンソンは証人の顔を確認した。
「以上です」
アトキンソンが席に戻る。
マリベルがオースティンを見る。
「弁護人は反対尋問を」
オースティンは立ち上がった。
だが、証人には近づかなかった。
「ありません」
カーターがオースティンを見る。
「どういうつもりだ」
オースティンは小さな声で答える。
「大丈夫だ」
「何がだ」
「判決が出る前にアリバイを証明する」
カーターの顔が険しくなる。
「今の証言はどうする?」
「心配するな」
オースティンは前を向いた。
カーターは何も言わなかった。
傍聴席では、記者たちが一斉にメモを取っている。
ローリーも法廷の様子を見ていた。
マイクはオースティンから目を離さない。
マリベルが書類を閉じた。
「弁護人と検察は前へ」
アトキンソンとオースティンが立ち上がる。
二人が法廷の前方へ進む。
マリベルは二人を見る。
「あなたは被告の弁護士では?」
オースティンは頭を下げた。
「はい」
「どういうつもりですか?」
マリベルは声を落とした。
「証人も申請せず、反対尋問もしない。弁護をするつもりがないように見えます」
オースティンは黙っている。
マリベルは机の上の書類を手に取った。
「それだけではありません」
書類を確認する。
「証拠目録も不十分です」
オースティンが顔を上げる。
「申し訳ありません」
「裁判への態度もなっていない」
「承知しています」
「なら、弁護人として仕事をしてください」
オースティンは一礼した。
「はい」
マリベルはアトキンソンを見る。
「検察側は準備できていますね?」
「はい」
「分かりました」
マリベルは再びオースティンを見る。
「証拠については?」
「他の証拠を入手次第、すぐに提出します」
「入手次第?」
マリベルの表情が少し変わる。
「裁判はあなたの都合で進むものではありません」
「分かっています」
「次回までに証拠目録を整えておきなさい」
「はい」
マリベルは書類を閉じた。
「次の公判は三日後」
二人を見る。
「それまでに準備してください」
「はい」
「本日はこれで閉廷します」
木槌が鳴った。
傍聴人が動き始める。
カーターはオースティンを見た。
オースティンは何も言わず、荷物をまとめた。
アトキンソンも書類を整理する。
マイクは二人を見ていた。
ローリーが小声で言う。
「変じゃない?」
「ああ」
「オースティンは、わざと何もしなかったように見える」
マイクは答えなかった。
法廷の出口へ向かう人間の流れの中で、オースティンとアトキンソンが並んで歩いていく。
その後ろ姿を、マリベルが法壇から見ていた。
表情は変わらない。
二人が法廷を出ると、マリベルは手元の書類を閉じた。
