コンテンプト・オブ・コート 2-17
アンカレッジ連邦地方裁判所。
午前。
市長殺害事件の初公判が始まった。
法廷には報道関係者と傍聴人が集まっている。
マイクとローリーは傍聴席に座っていた。
正面にはマリベル裁判官。
被告人席にはカーター刑事がいる。
カーターは前を見ていた。
その隣にオースティン弁護士が座っている。
オースティンも前を向いていた。
マリベルが書類を確認する。
「それでは、市長殺害事件の審理を始めます」
法廷が静かになる。
「検察側、証拠の提出を」
アトキンソン検事が立ち上がった。
「はい」
アトキンソンが係員に合図する。
係員が証拠品を法廷へ運んだ。
透明なケースに入ったナイフだった。
アトキンソンがケースを受け取る。
「こちらを凶器として提出します」
マリベルが証拠を見る。
「確認します」
アトキンソンは続けた。
「このナイフには、殺害された市長の血液が付着しています」
法廷内にざわめきが起きる。
アトキンソンは資料をめくった。
「さらに、柄の部分から被告人の指紋が検出されています」
カーターがナイフを見る。
表情が変わった。
オースティンは動かなかった。
マイクは傍聴席から二人を見る。
ローリーが小声で言った。
「指紋まで出てる」
「ああ」
「かなり厳しいわね」
マイクは答えなかった。
アトキンソンが続ける。
「このナイフが、犯行に使用された凶器です」
マリベルが頷く。
「証拠として受理します」
「ありがとうございます」
アトキンソンは証人席を見た。
「次の証人を」
ラングドン検事が立ち上がった。
証人席へ向かう。
宣誓を終える。
アトキンソンが質問を始めた。
「ラングドン検事。ナイフが発見された経緯を説明してください」
ラングドンは資料を確認した。
「市長殺害事件の捜査で、被告人のロッカーを捜索しました」
カーターが顔を上げる。
ラングドンは続けた。
「その際、ナイフを押収しました」
アトキンソンが聞く。
「ほかに何か押収しましたか?」
「血液が付着したズボンと靴を確保しました」
法廷内が静かになる。
ラングドンは資料をめくった。
「その後、捜査を行った結果、靴に残っていた足跡と犯行現場に残された足跡が一致しました」
アトキンソンが確認する。
「つまり、被告人の靴と犯行現場の足跡が一致したということですね?」
「はい」
「間違いありませんか?」
「ありません」
アトキンソンはマリベルを見る。
「以上です」
マリベルがオースティンを見る。
「弁護人は反対尋問を」
オースティンは立ち上がらなかった。
「ありません」
カーターがオースティンを見る。
「……」
オースティンは前を向いたままだ。
マリベルはしばらくオースティンを見た。
「分かりました」
ラングドンが証人席を離れる。
カーターが小声でオースティンに言った。
「何もしないのか?」
オースティンはカーターを見る。
「まだ早い」
「何が早い?」
オースティンは答えなかった。
カーターは前を向いた。
傍聴席では、記者たちが一斉にメモを取っている。
ローリーも資料に目を落とした。
「ナイフ、血液、指紋、靴……」
マイクは法廷を見ている。
「それだけじゃない」
ローリーがマイクを見る。
「何?」
マイクは答えなかった。
マリベルが書類を確認する。
「検察側、次の証人を」
アトキンソンが立ち上がる。
「はい」
カーターがオースティンを見る。
オースティンは何も言わない。
法廷の前方で、次の証人が証人席へ向かって歩き出した。
