コラム:自分の視力に合った眼鏡・コンタクトレンズを使おう
視力に合った眼鏡・コンタクトは単なる「見やすさ」の問題ではなく、目の健康、生活安全、学業・仕事の効率、将来の眼疾患リスクに深く関係している。
.jpg)
日本の現状(2025年12月時点)
現代日本において視力に関する問題は広く存在し、特に子どもの近視率やデジタル機器使用に伴う眼精疲労の増加が注目されている。全国規模の医療データベースを用いた研究では、日本の子どもにおける近視および強度近視の動向が確認されており、近年の世代で近視率が高い傾向にあると報告されている。スマートフォンやタブレット、長時間のディスプレイ作業が一般化したことにより、デジタル眼精疲労(digital eye strain)の有病率も高い幅で報告されており、職場や学校での視作業負荷が目の不調の一因となっている。
さらに、日本国内の労働衛生や産業保健の実務においても、ICT作業に伴う目の健康管理やコンタクトレンズ関連のドライアイ・角膜障害への注意喚起が行われている。職場での視環境(照度、画面の高さ、画面と目の距離)や適切な眼鏡処方の重要性が指摘されている。
自分の視力に合った眼鏡やコンタクトレンズを使おう(導入)
自分の視力に合った矯正具を適切に使うことは、単なる見え方の改善だけでなく、目の健康維持、生活の安全、作業効率、長期的な視機能の保護に直結する。視力矯正が不適切だと、眼精疲労・頭痛・肩こり・集中力低下・事故リスク増大や、特に子どもでの近視進行が加速する可能性がある。逆に適切な処方と装用管理はこれらを予防・改善する効果を持つ。
重要性(メリット) — 概観
自分の視力に合った眼鏡やコンタクトレンズを使うことによる主なメリットを列挙する。以下の各項目で詳細を述べる。
目の健康維持と視力低下の防止
眼精疲労の軽減
頭痛・肩こりの解消
近視進行の抑制(特に子ども)
安全性の確保、事故防止
生活の質(QOL)の向上、快適な日常生活
集中力・生産性の向上(繰り返し強調)
眼疾患の早期発見、定期検査の機会
目の健康維持と視力低下の防止
適切に処方された眼鏡やコンタクトレンズは、網膜に正しく像を結ばせることで眼の過度な調節や輻輳(両眼を寄せる運動)を軽減する。長期にわたり不適切な度数や不均衡な矯正を続けると、調節性の負担が慢性化し、眼精疲労や視力低下の主観的自覚が増すだけでなく、視力測定上の問題が発生しやすくなる。特に、左右の視力差(不等視)を放置すると、弱視(特に子ども)や両眼の協調性異常を招く恐れがあるため、早期に適切な矯正を行うことが重要だ。
眼精疲労の軽減
長時間の近見作業やディスプレイ作業は眼精疲労を生じやすい。眼精疲労の原因の一つは視力と作業距離に対して適切な矯正がなされていないことだ。適切な度数の眼鏡・コンタクトレンズは視作業時のピント合わせの負荷を下げ、目の乾燥やかすみ、重だるさ、まぶしさといった症状を和らげる。デジタル眼精疲労のレビューでも、視環境の改善と適切な矯正により症状の軽減が期待できるとされる。
頭痛・肩こりの解消
視作業に伴う目の緊張は首・肩の筋緊張と連動することが多い。視界がはっきりしないと首を前に出して画面に近づく、あるいは姿勢を崩すなどの動作を無意識に行い、その結果として頭痛や肩こりが発生する。適切な矯正具により視認性が向上すると、姿勢が改善され筋緊張が減少し、これらの非局所的症状も軽減する。
近視進行の抑制(特に子ども)
近年の研究では、単に度数を合わせるだけでなく、近視進行を抑制する設計の眼鏡レンズやコンタクトレンズが開発・実証されている。例えばDIMS(Defocus Incorporated Multiple Segments)レンズや特殊な多焦点・周辺デフォーカス設計のレンズは、2年間の臨床試験で屈折度数・眼軸長の進行を有意に抑制する結果が報告されている。これらは特に成長期の子どもにおける近視進行予防に有効であり、早期に眼科での評価・選択を行う意義がある。
安全性の確保、事故防止
視力低下は日常生活や仕事・通学時の事故リスクを高める。夜間の運転時や階段の昇降、作業現場での視認性低下は重大な事故に直結する。視力に合った補正を行うことで視野内での対象認識が正確になり、反応時間や危険察知能力が向上して事故予防に寄与する。
生活の質の向上、快適な日常生活
視力が適切に補正されると、読書・運転・趣味・仕事などの活動が快適になり、生活の満足度(QOL)が向上する。コミュニケーション場面でも表情や文字がはっきり見えることで心理的な安心感が増す。視力は生活の基盤であり、最適な矯正は日常のストレス低減につながる。
集中力・生産性の向上(繰り返し強調)
未矯正または不適切な矯正は集中力の低下や作業効率の低下を招く。オフィスワーカーを対象とした一部研究や報告では、視力関連問題が生産性低下に寄与しており、適切な視力矯正を行うことで短期的に作業効率や正確性が向上する可能性があるとされる。具体的には、視覚的ストレスが減ることで疲労回復が速まり、作業ミスや遅延が減る。
眼疾患の早期発見、定期検査の機会
眼鏡やコンタクトレンズの処方を受けるための検査は、単なる視力測定に留まらず目の健康状態(眼圧、角膜、眼底など)のスクリーニング機会となる。定期的に専門家の検査を受けることで、緑内障・糖尿病性網膜症・加齢黄斑変性など重篤な疾患を早期に発見できる可能性がある。
注意点(リスクと対策)
自分の視力に合った補正具を使うメリットは大きいが、誤使用や自己判断による購入・管理にはリスクがある。以下に主な注意点と対応策を列挙する。
自己判断での購入を避ける、必ず専門家の検査を受ける
ネット販売や店頭販売で簡便に眼鏡やコンタクトレンズを入手できる時代だが、度数や乱視、眼球形状は個人差が大きい。自己判断で度数を推測して購入すると、視機能や快適性が損なわれるだけでなく、眼精疲労や頭痛などを招く。特にコンタクトレンズは眼科での適合検査(角膜形状、涙液量、フィッティング)と処方が必要であり、必ず専門家(眼科医・認定技師)による診察と処方を受けるべきだ。消費者庁や厚生労働省からも適正使用の重要性が注意喚起されている。
左右の視力差に注意
左右差(不等視)がある場合、単に両眼に同じ度数を入れる処方は不適切になることがある。左右差は弱視や両眼視機能の障害につながることがあるため、特に成長期の子どもでは専門家による精密な診断と適切な矯正方針(必要なら遮蔽療法や特殊レンズ)を行う必要がある。
コンタクトレンズ特有のリスクと衛生管理
コンタクトレンズは便利だが、以下のようなリスクがある。角膜感染(角膜潰瘍)、角膜浸潤、ドライアイの悪化、アレルギー反応などだ。これらの多くは不適切な取り扱い(洗浄・消毒不足、手指衛生不備)、長時間装用、交換期間超過、睡眠中の装用などで発生する。公的機関や眼科団体は、適正使用と定期受診の徹底を勧告している。
正しい装用期間を守る、適切なケア用品の使用
ソフトレンズ、ハードレンズ、使い捨て(1日、2週間、1か月等)で管理方法が異なる。製品ごとの指示に従い、適切な洗浄・消毒液を使用すること、液の使い回しや水道水での洗浄を避けること、指示より長く使用しないことが重要だ。異常を感じたら即座に装用を中止し、速やかに眼科を受診する。消毒液や保存液の誤使用は重大な眼障害につながる場合がある。
目の異常を感じたらすぐ中止、定期的な検査の重要性
痛み、視力低下、過度の充血、分泌物、異物感、光に対する過敏さなどの異常を感じたら、レンズ装用を直ちに中止して専門医に相談する。定期検査(半年〜年1回程度の受診、年齢や使用状況により頻度を調整)は早期発見と予防に不可欠だ。
定期的な受診、検査の重要性
眼科での定期検査は度数の見直しだけでなく、眼底検査や眼圧測定などの実施により眼疾患の早期発見に寄与する。特に強度近視の人では網膜や脈絡膜に変化が生じやすく、定期的な眼底検査が推奨される。また、コンタクトレンズ使用者は定期的な適合検査を受け、角膜健康のチェックやレンズと眼の相性を確認することが義務的である。公的機関や専門学会のガイドラインでも定期受診の重要性が強調されている。
子どもの視力管理に関する特記事項(近視進行抑制)
子どもの近視は学齢期に急速に進行することがあり、成人後の眼病リスク(網膜剥離、緑内障、近視性黄斑変性など)を高める。近年、近視進行抑制のためのオプションとして次のような選択肢が確立されつつある。低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー(夜間装用コンタクト)、特殊設計の多焦点コンタクトやDIMSなどの近視抑制眼鏡。臨床試験の結果、特にDIMSレンズなどは2年間で有意な抑制効果が示されている。子どもの場合は早期に眼科で相談し、生活習慣(屋外活動の増加、近見作業時間の制限)などを併用した総合的な介入を行うことが推奨される。
実践的アドバイス(検査・購入・日常管理)
初めての処方・定期検査:眼科で眼位・屈折検査・角膜形状・眼底検査を受ける。コンタクトを希望する場合はフィッティング検査を必ず受ける。
左右差の確認:左右差がある場合は必ず医師・眼鏡士に相談する。子どもは特に慎重に検査する。
用途に合わせた選択:遠近両用、パソコン用中間距離補正、スポーツ用の安定したフレームなど、用途に応じた設計を選ぶ。近視進行抑制が目的であればDIMSや特殊多焦点などの選択肢を眼科と検討する。
コンタクトレンズの管理:装用スケジュール(1日使い捨てか連続装用不可のものか等)を守る。手指清潔、専用の保存液を使用し、水道水や湯での洗浄を避ける。異常時は直ちに外す。
作業環境の改善:ディスプレイの高さ・距離・照度の調整、作業ごとの休憩(20-20-20ルールなど)を取り入れる。職場の眼科検診や視環境の改善は生産性向上にも寄与する。
今後の展望(研究・技術・社会的対応)
視力矯正分野は技術革新が進んでおり、近視進行抑制のための光学的設計や薬理介入、デジタルヘルスを活用した生活習慣介入などが発展している。また、働き方のデジタル化が進む中で職場単位の視環境改善プログラムや定期的な眼科検診を組み込む動きが強まる見込みだ。学校保健・地域保健における視力スクリーニングと専門医への連携体制の強化、消費者向けに正しいコンタクトレンズ使用法や眼鏡の選び方を普及させる啓発活動も重要になる。さらに、遠隔診療やAIを用いた屈折検査支援などにより、よりアクセスしやすい視力管理サービスが普及する可能性がある。
まとめ(要点整理)
視力に合った眼鏡・コンタクトは単なる「見やすさ」の問題ではなく、目の健康、生活安全、学業・仕事の効率、将来の眼疾患リスクに深く関係している。
専門家による検査と処方を必ず受けること。 自己判断での購入や不適切な装用は眼障害の原因となる。公的機関や専門学会も適正使用を強く推奨している。
子どもの近視進行には早期介入が重要であり、DIMS等の近視抑制レンズやオルソケラトロジー、低濃度アトロピンなど複数の選択肢を眼科と相談の上で組み合わせるべきである。 臨床試験で有効性が示されている選択肢が存在する。
コンタクトレンズは衛生管理と定期受診が必須であり、適正な使用を守ることで重篤な角膜障害を予防できる。 消毒・保存方法、装用時間を守る。異常時は直ちに装用を中止して受診する。
職場・学校での視環境改善と定期検査は眼精疲労の軽減と生産性の向上に寄与する。 デジタル作業の増加に対応して視機能管理を体系的に行うことが重要だ。
