コラム:「不動産価格の高騰」と外国人投資家による「投機」の関係
日本の不動産価格高騰は多層的な要因によって生じており、外国人投資家による投機的な取引は「部分的・局所的に」価格上昇を助長しているが、全国的な価格上昇の主因と単純に結びつけるのは誤りである。
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日本の現状(2025年11月時点)
2020年代中盤以降、日本の不動産市況は全国的に上昇基調が継続している。国土交通省の地価調査(令和7年=2025年調査)では、全用途平均で4年連続の上昇となり、三大都市圏では上昇幅が拡大していると報告されている。商業地や住宅地の上昇が目立ち、とくに東京圏、大阪圏での上昇が顕著である。観光回復(インバウンド増)や首都圏の再開発、土地供給制約などが背景にある。
一方で、上昇の度合いや影響は地域・用途ごとに大きく異なり、地方の一部では上昇幅が限定的である。建設資材や人件費の高騰も同時に進み、住宅供給コストが上昇している。建設資材物価指数および建築費指数はいずれも高止まりしており、業界団体や国交省は資材・労務費上昇の影響を指摘している。
不動産価格の高騰は続くのか
短中期的には、需要サイド(国内外の投資需要、インバウンド回復)と供給サイド(建築費高騰、用地制約)の両面が作用し、当面は上昇圧力が続くとの見方が一般的である。国土交通省や不動産関連指標は2025年時点でも上昇トレンドを示しており、特に都心部や観光関連商業地の価格上昇が強い。政策面では金融環境の変化(日本銀行の金利動向)や税制、供給政策が重要な変数となる。
ただし、金利上昇や景気後退が進行すれば需要は減速し得るため、上昇の持続性はマクロ経済の推移に左右される。建設コストの上昇が続く限り、新築物件の価格下支え要因にもなるため、短期での急落は起きにくいという見方もある。
外国人投資家による投機が影響しているか
外国人投資家による購入・投機が不動産価格高騰に寄与しているかは、地域と用途によって異なる。都心の高額物件や一部高級住宅、ホテル・商業施設、インバウンド需要が高いエリアでは外国人マネーの影響が相対的に大きい。例えば、外国人や海外居住者が高額マンションや投資用物件を購入することで、特定エリアの相対価格が押し上げられることは実証的に観察されている。
しかし、全国的・全体的な価格上昇の主因を一義的に「外国人の投機」に還元することはできない。国内の投資家(個人・法人)や住宅需要、再開発・都市計画、建築コスト、金融環境など複合的要因が連鎖的に働いているため、外国人マネーは「増幅要因」または「局所的な押し上げ要因」として位置づけるのが妥当である。
海外居住者による東京23区の新築マンション購入割合は全体の数パーセント
国土交通省が不動産登記情報を用いて行った調査によると、2025年上半期(25年1–6月)における都心の新築マンション取得者のうち、海外居住者の割合は都心6区で約7.5%に達したとの報道がある。都心23区全体でも海外居住者による取得が増加しており、短期売買(取得から1年以内の売却)も増加傾向にあるとの分析が出ている。都心以外の地域では割合はさらに低く、23区全体で「数パーセント」のオーダーであると把握される。
したがって「東京23区の新築マンション購入の大半が外国人」という事実は無く、割合は地域区分や価格帯によって大きく異なるが、都心の特定区(例:新宿区等)では割合が相対的に高い。
所有者の国籍は把握できない場合が多い
登記簿上の所有者は個人名義だけでなく法人や信託、名義人(代理保有)を通じた取得が散見されるため、最終的な実質所有者(実質的なコントロールを持つ外国籍の個人・法人)を公的統計で正確に把握するのは難しい。国交省の調査でも「海外居住者」という定義での集計は可能だが、名義を経由した取得や国内法人を通じた投資は捕捉が難しいとされる。つまり、一定程度の「見えにくさ(オフショア構造や信託、代理名義)」が存在するため、外国人マネーの実態評価は慎重を要する。
外国人投資家を惹きつける要因
外国人投資家(あるいは海外居住者)が日本不動産を魅力的と感じる理由は複数ある。代表的な要因は以下である。
円安・為替メリット
円安局面では外国通貨ベースで見た日本資産の割安感が生じ、海外投資家にとって買いが有利になる。実際、近年の円安は海外資金の流入要因として指摘されている。社会・治安の安定性、法制度の信頼性
政治的安定性や法的安定性、登記制度や契約実務の整備により、海外富裕層や機関投資家が投資対象として選びやすい面がある。特に資産保全や移住を伴う富裕層にとっては魅力が大きい。インバウンド回復と賃貸需要の見込み
観光回復や外国人旅行者の増加が持続することで、ホテルや短期賃貸、サービスアパートメント需要が増えるとの期待がある。商業地や宿泊関連施設に対する投資が集まる理由となっている。他国と比べた相対的割安感と資本市場の魅力
同時期における米豪英など主要市場と比較して、特定セグメントで割安感があり、成長余地を期待する投資家がいる。さらに日本の不動産ファンドやREIT市場を通じた間接投資の受け皿も充実している。
以上の複合要因が外国人投資家を惹きつけ、特に都心部やインバウンド関連の商業用途、高級住宅でのプレゼンスを高めている。
不動産価格高騰の主要な複合要因
不動産価格高騰は単一要因ではなく、複数の要因が同時多発的に作用することで発生している。主たる要因を以下に整理する。
金融緩和および低金利(過去からの蓄積効果)
長期的に低金利環境が続いたことにより、借入コストが低く、資産投資(不動産含む)の魅力が相対的に高まった。近年の金利動向は注視すべきだが、過去の緩和の蓄積効果が価格上昇の下支えとなっている面がある。建築資材・人件費の高騰
近年の資源・物流の影響、労務費上昇によって建設コストが上がっており、新築供給の価格が押し上げられている。建設資材物価指数や業界団体の調査は資材価格の持続的上昇を示している。インバウンド需要と都市の再開発
観光回復や都市再開発(オフィス再編、再開発プロジェクト)が商業地や都心部の需要を押し上げている。これが商業地・宿泊関連・都心マンションの価格上昇に直結している。国内投資家の存在とポートフォリオ拡大
国内の個人富裕層、ディベロッパー、機関投資家も不動産を有望資産として組み入れており、需要を下支えしている。日本不動産研究所などの投資家調査は投資意欲の強さを示している。希少性の強化(再開発・用途転換による供給制約)
都心部での再開発・用途転換は利便性やプレミアム性を高め、相対的な希少価値を形成する。希少性は価格プレミアムの要因となる。海外投資の影響(局所的)
前述の通り、外国人資金は特定エリアや価格帯で影響力を持ち得るが、全国的な主因とは言い切れない。局所的に価格を押し上げる「触媒」役割を果たしている。
金融緩和の影響
金融緩和が長期化した結果、資金余剰が不動産へ流入した局面がある。低金利は借入を容易にし、投資物件の利回り計算で不動産の相対的魅力を高める。だが日本銀行が金利を上げる局面では、レバレッジの効いた取引のリスクが顕在化するため、金融環境の変化は不動産価格に対するリスク要因でもある。投資家は金利動向とキャッシュフローの感応度を常に注視している。
建築資材や人件費の高騰
建設資材物価指数や建築費指数は2021年以降上昇トレンドが持続しており、2025年も高止まりの状態である。業界団体は素材価格や労務費の上昇が総工事費を大幅に押し上げていると指摘しており、これが新築価格の上昇を直接的に促している。国は改正建設業法等で価格転嫁や労務単価の適正化を進めている。
インバウンド需要と国内投資家の存在
インバウンド回復は商業地、宿泊、短期賃貸に対する需要を喚起しており、これが都心部の地価・物件価格を押し上げている。国内投資家(個人・法人・年金基金など)もポートフォリオの分散先として不動産を選好し、特に安定的キャッシュフローを生む商業用不動産や物流施設への投資が活発化している。これらが価格上昇の需要側要因となっている。
再開発による希少価値
大規模再開発や都市の用途転換によって供給される良質な土地・物件は希少性を持ち、プレミアム価格が形成されやすい。都心部では再開発が集中しているため、周辺地価やマンション価格が相対的に上昇する傾向がある。再開発に伴うインフラ改善やブランド効果も価格に織り込まれる。
政府の取り組みと国土交通省の実態把握
政府は住宅・土地政策の見直しや、資材高騰対策、適正な取引透明性の確保に取り組んでいる。国土交通省は登記情報を活用した新築マンション取引や海外居住者の取得状況、短期売買の実態把握を進めており、報道でもその調査結果が公表され始めている。国は得られた知見を踏まえ、住宅・土地政策を総合的に見直す必要があると認識している。
国交省の調査は、政策立案に資するための第一歩であり、名義や所有構造が複雑なケースをどう把握し、適切な規制・情報公開を行うかが今後の課題である。
国土交通省が実態把握中
国交省は不動産登記データを使った調査を行い、海外居住者の取得割合や短期売買の増加を明らかにしつつある。この調査は対象期間や対象地域を限定したものであるが、海外由来の取得が一定程度増加していることを示している。今後はデータの精度向上(法人名義や信託等の実質所有者の把握)、登記情報への補完的データの統合が重要になる。
総合的な住宅・土地政策へ
不動産価格の持続的安定化を図るには、需給バランスの是正(供給増・住宅ストック整備)、建設コスト抑制策、投機的取引の抑止(透明性向上や必要な規制)、そしてマクロ経済政策の整合性が必要となる。特に、外国人投資の実態を正確に把握し、適切な情報開示と税・規制の整備を行うことが重要である。国交省の調査結果は政策設計に資するが、現場で観察される複雑な所有構造を反映するための追加的施策が求められる。
今後の展望
短期(1〜2年)見通し
インバウンド回復や都市集中は続く一方、建設コスト高の継続や金融環境の変化により、上昇幅は横ばいから緩やかな継続が想定される。外国人購入は都心の特定セグメントで引き続き存在感を示す可能性が高い。中長期(3〜5年)見通し
金利上昇や景気減速が顕在化すれば需要の一部は調整される可能性があるが、構造的な供給制約(用地の限界、再開発への期待)や人口動態が地域差を生むため、地域・用途ごとの二極化が進むと予想される。政策面で供給促進や透明性向上、資材価格抑制策が奏功すれば安定化に寄与する。規制と市場慣行の変化
国は実態把握を基に、必要に応じて情報開示や税制、投資規制の見直しを行う可能性がある。これにより短期的な投機行動が抑制され、長期的な資産保全や地域の居住性を重視した市場になることが期待される。
まとめ
日本の不動産価格高騰は多層的な要因によって生じており、外国人投資家による投機的な取引は「部分的・局所的に」価格上昇を助長しているが、全国的な価格上昇の主因と単純に結びつけるのは誤りである。円安やインバウンド回復、金融環境、建設コスト、国内投資家の動向、再開発による希少性などが複合的に作用している。国土交通省の実態把握は重要な一歩であり、今後はデータ精度の向上と総合的な住宅・土地政策の策定が求められる。政策と市場参加者の双方が協調して透明性と安定性を高めることで、持続可能な不動産市場の実現が期待される。
参考データ(主要出典)
国土交通省「令和7年都道府県地価調査」報道発表(地価の上昇継続)
Bloomberg「都心マンション取得者の7.5%が海外から」記事(2025年11月、国交省調査の報道)
Reuters(2025年3月)「Japan's land prices rise at strongest pace in 34 years」(地価上昇とインバウンド需要関連)
Japan Real Estate Institute(不動産投資家調査、2025年)による投資家の動向分析。
建設資材物価指数・業界団体報告(建設資材・労務費の上昇に関する報告書、2025年)
以下では「地域別比較、価格指数の時系列、外国人購入の価格帯別内訳、短期売買比率の推移」を整理して示す。国土交通省(不動産登記情報・都道府県地価調査等)および日本不動産研究所(不動研住宅価格指数)、および主要報道を参照。
1)地域別比較(短期売買割合・新築マンション取得の地域差)
まず「短期売買(保存登記から1年以内に移転登記されたもの)」と「国外(海外居住者)による取得」の地域差を示す。国土交通省の不動産登記情報を活用した報告(新築マンション取引の調査・分析、公表PDF)より、2024年(保存登記期間:2024年1–6月)などの集計値を抜粋する。以下は主要地域の短期売買割合(直近)を示した表である。
表1:地域別・短期売買割合(保存登記→1年以内移転の割合、直近の報告値)
東京23区:9.3%(2024年1–6月)。都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)は12.2%。
東京都(都県域集計):8.5%(同)。神奈川県:5.1%、埼玉県:1.1%、千葉県:2.2%。
大阪圏全体:5.6%、大阪府:6.2%、兵庫県:7.1%。
名古屋圏(愛知県):約1.6%(直近)。
解説:短期売買割合は中心市部(都心)ほど高く、東京23区や都心6区で突出している。これは都心で供給される大規模・高流動性のマンションが短期転売に晒されやすいこと、供給される物件の構成(大規模物件が多い)や海外顧客の需要集中と整合する。国交省資料は「その年にどのようなマンションが供給されたかで割合が大きく変動する」と注意している点も重要である(同一年度に特殊な大規模物件が供給されれば数値がゆがむ)。
2)価格指数の時系列(住宅/地価の長期推移)
ここでは(A)不動研(日本不動産研究所)の住宅価格指数(取引価格ベース、地域別・月次)と、(B)国土交通省の地価公示/都道府県地価調査による地価変動の年次推移(主要年)を取り上げる。時系列指標は「基準年を100とする指数」で比較するのが標準であるため、不動研の指数は2000年1月=100として公表されている(不動研住宅価格指数)。
表2:主要価格指数の要旨(抜粋)
不動研 住宅価格指数(首都圏総合、2025年9月値):140.54(基準2000年1月=100)。東京エリア単独では同時点で167.33(2025年9月、前月比上昇)。(月次データにより21か月連続上昇等の注記あり)
国土交通省:令和7年(2025年)都道府県地価調査の概要では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地とも4年連続上昇、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)で上昇幅拡大。東京圏では上昇幅拡大が継続。(年次の対前年変動率を毎年公表)
時系列概観(要点)
2000年代以降、バブル崩壊後の下落期を経て、2010年代後半以降は都市部を中心に緩やかな回復。コロナ直前からの世界的金融緩和(量的緩和・低金利)とその後の需給変化により、2020年代に入って上昇が加速した局面がある。特に首都圏の中古・新築マンション価格は指数水準で大きく上昇している。
地価公示・地価調査の年次データは地域別の変化を精密に示しており、三大都市圏と地方圏で差が生じている(都市集中で上昇幅が大きい)。
3)外国人購入の価格帯別内訳(都心6区の事例)
国土交通省の同調査は「都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)」における価格帯別の短期売買・取得状況を民間価格データと登記情報を結合して分析している。ここでは「価格帯別に見た国外住所者(海外居住者)の取得割合/件数」を示す(集計期間は原資料が示す保存登記期間、例:2023年1月〜2024年6月等)。
表3:都心6区における価格帯別の取得(短期売買含む)――主要抜粋(国交省資料)
(注)下表は国交省がまとめた図表の要旨を転記・整理したもの。数値は調査期間の合計件数を示す。
1億円未満:国内(503件)、国外(13件)。この価格帯は都心6区の短期売買のうち最多の件数を占める(全体の約63.0%)。国外取得は13件で割合はごく小さい。
1億円以上〜2億円未満:国内(245件)、国外(7件)。この帯も多数で、国外取得は7件程度。
2億円以上〜3億円未満:国内(41件)、国外(0件)。高額帯では国外住所者の取得はほとんど見られない。
3億円以上〜4億円未満:国内(7件)、国外(0件)。
4億円以上〜5億円未満:該当なし。
5億円以上:国内(3件)、国外(0件)。
合計すると、都心6区の短期売買のうち約93.8%が国内住所者(合計768戸、価格帯は主に1億円未満と1〜2億円未満に集中)、国外住所者は全体の2.6%(20戸)に留まるという結果になっている。要するに「海外居住者は都心の大半の高額帯を独占しているという事実は確認されておらず、むしろ国内取得が圧倒的多数である」という点が国交省の指摘である。
解説:報告は「国外住所者が2億円以上の高額物件を活発に短期売買している傾向は特に見られない」と明記している。つまり、外国人/海外居住者による取引は一定数あるが、価格帯では必ずしも最上位の高額帯に集中しているわけではない(少なくとも都心6区調査の対象ではそうである)。この結果は「外国人投資=高額物件の投機的買い上げ」という単純な説明を慎重に扱うべきことを示唆している。
4)短期売買比率の推移(年次・東京23区/都心6区の動向)
国交省調査は2018年以降の保存登記件数・短期売買件数の年次推移も示している。ここでは数字の要旨を整理する。
表4:短期売買(東京23区・都心6区)の年次推移(抜粋)――要旨(国交省資料)
2018年:短期売買数(国内住所者)約1,698件(短期売買割合:6.7%相当の図示)、国外住所者による短期売買はごく少数(3件)。
2019年:短期売買数(国内)約1,562件、国外短期売買は7件。
2020年:国内1,467件、国外9件。
2021年:国内1,725件、国外4件(短期売買割合の山が見られる年)。
2022年:国内1,196件、国外12件。
2023年:国内1,029件、国外11件。短期売買割合は図示で約5.7%(国内)。
2024年(1〜6月、直近):国内1,273件、国外17件。国外住所者の短期売買割合は増加傾向。東京23区全体の短期売買割合は9.3%(直近)と高止まりしている。
解説(傾向把握)
件数ベースでは年による変動があるが、総じて中心部(都心6区)では短期売買の割合は高めで推移している。2024年上期のデータでは、国外住所者による短期売買数が増加している(17件)ことが示され、短期売買全体に占める国外分の比率はまだ小さいものの、増加傾向を示している。
国交省は「短期売買は大規模マンションに多く見られる」点を指摘しており、供給構成(大規模分譲が多い年)によって短期売買割合は変動するため、単年の数値だけで過度な結論を導かないことが重要である。
5)考察(データが示すこと・政策含意)
「外国人購入(海外居住者)は都心で増加しているが全体比は小さい」
国交省の調査は、都心23区・都心6区で海外居住者による取得が増えていることを示す一方、価格帯別データでは国外取得は全体の数%に留まることが明示されている(都心6区では合計で2.6%程度、件数ベースでは20戸程度)。したがって、全国的な価格上昇の主因を単純に「外国人投機」に求めることは適当でない。「局所的・セグメント的な影響はあり得る」
一方で、中心部の特定物件(立地・規模・供給タイミングによる)では短期売買や海外ニーズが価格形成を局所的に変える可能性がある。都心6区や湾岸地域の高層タワー等は需給の流動性が高く、短期の需給ショックが価格に反映されやすい。国交省報告はこの「局所性」を強調している。「短期売買の増加=投機の直接証明ではない」
短期売買の増加は投機的行動の一指標になり得るが、短期売買の中には転勤や事情による早期売却、開発事業者のフロー処理等も含まれる。国交省は「専有卸」や一括購入等特殊ケースを除外した集計を行っており、分析は慎重である。これを踏まえて政策的には「透明性向上(実質所有者の把握)」「税・報告制度の検討」「登記情報の精緻化」が妥当なアプローチとなる。「地価・住宅価格の時系列は複合要因で説明される」
価格指数の長期推移(不動研・国交省)を見ると、金融環境(低金利)・建設コスト・インバウンド回復・再開発・国内投資家の需要が同時に作用している。外国人マネーはそのうちの一要素であり、とくに都市中心部の特定セグメントで影響力を持ちうるが、単独で全国的上昇を説明するには不十分である。
6)データ出典(主要参照・抜粋)
国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査・分析について」(調査・分析報告PDF: 不動産登記情報と民間価格データの結合分析)。短期売買割合、東京23区/都心6区の価格帯別内訳等を収録。
国土交通省「令和7年都道府県地価調査(地価公示等の概要)」:三大都市圏および全国の地価変動概要。
一般財団法人 日本不動産研究所(不動研)「不動研住宅価格指数」(月次公表、首都圏・東京等の指数時系列)。首都圏総合や東京の指数値(例:2025年9月値など)。
Bloomberg(報道):「都心マンション取得者の7.5%が海外から」という報道(国交省調査の報道摘要を引用)。報道には東京23区内の区別(新宿区等で割合が高い等)や登記の国別件数(台湾・中国上位)に関する記述がある。
7)結論(政策含意の再整理)
データは「東京23区・都心6区で海外居住者による取得が増加している」「短期売買割合が中心部ほど高い」「だが価格帯別・件数ベースでは国外取得は全体の数パーセントに留まり、2億円以上の高額帯を海外居住者が活発に買っているという証拠はない」と整理される。したがって、外国人投資(海外居住者)は局所的に市場を攪乱しうるが、全国的な不動産価格上昇の主要因を単独で説明するものではない。
政策対応としては(1)実質所有者の把握精度向上(登記・税務の連携等)、(2)短期売買を含む流動性データの定期的な監視、(3)供給側の対応(建設コスト抑制・住宅ストック政策)、(4)必要に応じた透明性向上や税制措置などが合理的である。これらは国交省の実態把握を踏まえ、今後の住宅・土地政策に反映されるべきである。
