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コラム:一般人がSNS「インフルエンサー」になる方法、問題点は?

一般人でも、戦略と努力を積み重ねればインフルエンサーになることは可能である。しかしそれは決して「楽な道」ではなく、多くの試行錯誤と困難を伴う挑戦である。
ツイッターとXのロゴ(Getty Images)

近年、SNSは誰もが情報を発信できる舞台になった。従来、メディアを通じて影響力を持つのは芸能人や著名人に限られていたが、ユーチューブ、インスタグラム、ティックトック、X(旧ツイッター)などの普及により、一般人でも数万人、数十万人単位のフォロワーを獲得することが可能になった。実際、趣味で始めた料理アカウントや、日常の出来事をコミカルに発信するアカウントが瞬く間に拡散され、企業案件や書籍化に結びついた例は少なくない。

インフルエンサーの定義は曖昧だが、総じて「SNS上で多数のフォロワーを持ち、情報発信を通じて他者の購買行動や価値観に影響を与えられる存在」を指す。一般人でも、適切な戦略を取り、継続的に活動すれば、その立場を築くことは可能である。


第一章:具体的な方法

1. 発信テーマの選定

インフルエンサーになるための第一歩は「テーマ設定」である。フォロワーは発信者個人そのものに魅力を感じる場合もあるが、基本的には「その人の発信内容に価値を見出す」ことでフォローを続ける。テーマの例を挙げると以下の通りである。

  • 専門性重視型:料理レシピ、プログラミング、英語学習、筋トレ

  • エンタメ型:おもしろ動画、日常のユーモア、ショートドラマ

  • ライフスタイル型:ファッション、インテリア、旅行記

  • 共感型:育児日記、恋愛観、社会問題への意見発信

特に成功しやすいのは「ニッチなテーマを深く掘り下げる」方法である。例として、日本の「お弁当アート」を専門に投稿していた主婦のインスタグラムアカウントが、海外からも注目されフォロワー数100万人を超えたケースがある。大衆的な分野で競争するよりも、ニッチなテーマで独自のポジションを確立する方が効果的である。

2. 発信の一貫性と頻度

SNSのアルゴリズムは「継続的に活動しているアカウント」を優遇する傾向がある。ユーチューブの調査によると、週に1本以上動画を投稿しているクリエイターの方が、フォロワー増加率が20%以上高いというデータもある。

一貫性も重要である。例えば「筋トレ」に関心を持ってフォローしたのに、突然旅行写真や政治的意見ばかりが投稿されると、フォロワーは離れてしまう。複数テーマを扱う場合でも「軸」を決めることが望ましい。

3. 視覚的・編集的工夫

インスタグラムやティックトックでは特に「第一印象」が重要になる。サムネイルやカバー画像の工夫、動画の冒頭数秒の編集、色合いの統一などが鍵になる。実際、ティックトックの公式データによると、最初の3秒間で視聴者の約63%が視聴継続するか離脱するかを決めている。つまり冒頭部分で興味を引けるかどうかが成否を分ける。

また、視覚的な統一感は「ブランド化」に繋がる。例えば白背景にシンプルなフォントで解説する学習系インフルエンサーは、視聴者に「このデザイン=この人」と認識させることができ、リピート率が高まる。

4. コミュニケーション

フォロワーとの交流は単なる発信以上の効果を持つ。コメントへの返信や、DMへの対応、ライブ配信でのやりとりは「この人は自分の声を聞いてくれる」という信頼感に繋がる。信頼はフォロワー定着に不可欠である。

さらに、フォロワーとのコラボレーションも有効だ。例えばフォロワーの投稿を紹介する「リポスト企画」や、質問に答える「Q&A配信」は参加感を与え、コミュニティを形成する。

5. 拡散の仕組みを理解する

SNSごとに拡散の仕組みは異なる。

  • ティックトック:アルゴリズムによるレコメンドが強力。フォロワーが少なくても「おすすめ」に載れば数十万回再生される可能性がある

  • インスタグラム:ハッシュタグ検索とリール機能が主な拡散源

  • ユーチューブ:検索・関連動画・ショート動画からの流入が多い

  • X(旧ツイッター):リツイート文化があり、短文の即時性が強い

プラットフォームの特徴を把握し、拡散を意図した発信を行うことが重要である。


第二章:直面する問題点

1. 競争過多

SNSは誰でも参入できるため、競争は非常に激しい。インフルエンサー市場調査会社の「Influencer Marketing Hub」のデータによると、2024年時点で世界のインフルエンサー人口は5000万人を超えると推計されている。つまり、同じジャンルに無数のライバルが存在するのが現実である。

2. 批判や誹謗中傷

フォロワーが増えるほど、好意的な反応だけでなく批判的なコメントや誹謗中傷も増える。特に日本のSNS文化では匿名性が高く、批判コメントがエスカレートする傾向がある。心身のストレスに繋がり、活動を継続できなくなる人も少なくない。

3. アルゴリズム依存

SNSのアルゴリズムは頻繁に変化する。ある時期にはリールやショート動画が優遇されるが、翌年には長尺動画が再評価されるなど、トレンドが変動する。これにより、突然再生数が激減するリスクがある。

4. 収益化の難しさ

フォロワーが増えても、必ずしも収益に直結するわけではない。例えばユーチューブでは収益化条件が「チャンネル登録者数1000人以上、年間再生時間4000時間以上」とされているが、条件を満たしても再生単価はジャンルによって大きく差がある。エンタメ系よりもビジネス系や教育系の方が広告単価が高いというデータもあり、戦略的にジャンルを選ぶ必要がある。


第三章:課題と今後の展望

1. 継続力とセルフマネジメント

インフルエンサーになる最大の課題は「続けること」である。データ上、ユーチューブにチャンネルを開設した人の約90%が1年以内に更新をやめているとされる。再生数やフォロワー数が伸び悩む時期をどう乗り越えるかが試される。

時間管理、ネタの仕込み、撮影・編集のスキル習得など、多くの負担が発生する。個人が全てを担うのは難しいため、将来的には外注やチーム化を検討することも重要になる。

2. 個人情報とプライバシー

一般人がインフルエンサーになると、日常生活がコンテンツ化される。住所や勤務先、家族関係が特定されるリスクもある。日本でも人気ユーチューバーが自宅を特定され、ファンやアンチが押しかける事件が起きている。プライバシー保護は今後の大きな課題である。

3. フォロワーとの信頼関係

企業案件を受ける場合、広告色が強すぎるとフォロワーからの信頼を失う危険がある。米国の調査では、フォロワーの約61%が「インフルエンサーが広告案件を増やしすぎるとフォローをやめる」と回答している。単なる広告塔ではなく、フォロワーにとって有益で誠実な情報を発信し続ける姿勢が求められる。

4. AI時代との共存

今後は生成AIによるコンテンツの自動化が進む。AIで作成した画像や文章を活用するインフルエンサーも増えており、競争の形が変わる可能性がある。逆に言えば「AIでは再現できない人間的な魅力」や「独自の体験に基づく発信」がより価値を持つ時代になると考えられる。


結論

一般人がSNSのインフルエンサーになるためには、明確なテーマ設定、一貫した発信、アルゴリズムの理解、フォロワーとの信頼関係構築が不可欠である。同時に、競争の激化や誹謗中傷、収益化の難しさといった問題にも直面することになる。

最も重要なのは「継続できるかどうか」であり、一時的なバズではなく、長期的にフォロワーと関係を築く姿勢が求められる。成功するためには自己管理能力と戦略性が必須であり、単なる趣味を超えた「個人メディア運営」としての覚悟が必要である。

一般人でも、戦略と努力を積み重ねればインフルエンサーになることは可能である。しかしそれは決して「楽な道」ではなく、多くの試行錯誤と困難を伴う挑戦である。その現実を理解しつつ、長期的な視点で活動することが成功の鍵となる。

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