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コラム:SNSの詐欺広告、本当の儲け話を他人に教える人はいない

有名人を装った広告や投資話は、誰もが被害者になり得る危険性を持つ。重要なのは、「うまい話を疑う姿勢」と「冷静な判断力」を常に保つことである。
オンライン詐欺のイメージ(Getty Images)

2026年1月時点において、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を悪用した詐欺広告は、日本社会における深刻な社会問題の一つとなっている。警察庁、金融庁、消費者庁などの公的機関が繰り返し注意喚起を行っているにもかかわらず、被害件数および被害総額は高止まりの状態にある。特に2023年以降、SNS上で有名人や著名投資家を装った「投資詐欺広告」が爆発的に増加し、従来のオレオレ詐欺や架空請求詐欺とは異なる、新しい形態の詐欺として定着しつつある。

総務省や警察庁の統計によると、近年の詐欺被害は高齢者層だけでなく、20代から40代の現役世代にも拡大している点が特徴である。この背景には、SNSが日常生活に深く浸透し、情報収集や人間関係構築の主要な手段となっている現状がある。詐欺広告は、一般的な広告やニュース投稿と区別がつきにくい形で表示されるため、被害者が警戒心を持たないまま接触してしまうケースが多い。

また、生成AIや画像編集技術の高度化により、著名人の写真や動画、音声を精巧に偽造することが容易になったことも、詐欺広告の信憑性を高める要因となっている。このような技術的背景を踏まえると、SNS詐欺広告は今後も進化を続け、被害防止がより困難になることが予想される。


SNSの詐欺広告とは

SNSの詐欺広告とは、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、LINE、YouTube、TikTokなどのSNS上に掲載される広告や投稿の形を装い、利用者を欺いて金銭や個人情報をだまし取る行為を指す。これらは一見すると正規の広告、ニュース記事、体験談、投資情報のように見えるが、実際には詐欺グループが組織的に作成・配信している虚偽情報である。

詐欺広告の最大の特徴は、「広告」という形式をとることで、利用者の警戒心を下げる点にある。SNSのアルゴリズムによって、年齢、職業、興味関心に応じた広告が表示されるため、投資や副業に関心のある利用者ほど詐欺広告に接触しやすくなる構造が存在する。

専門家の分析によると、SNS詐欺広告は心理学的な影響を巧みに利用しており、「損失回避」「希少性」「権威への服従」といった人間の認知バイアスを刺激する設計になっている点が特徴である。


有名人や投資家を装った偽の広告

SNS詐欺広告の中でも特に被害が多いのが、有名人や著名投資家を装った偽の広告である。これらの広告では、実在する経済評論家、投資家、実業家、あるいは俳優やスポーツ選手の名前や写真が無断で使用される。

広告文には「〇〇氏が明かす本当の投資法」「テレビでは語れなかった資産倍増の秘密」などの刺激的な文言が用いられ、あたかも本人が投資を推奨しているかのような印象を与える構成になっている。メディア研究者の指摘によると、人は著名人の発言を無意識のうちに信頼しやすく、その心理的傾向が詐欺に悪用されている。

実際には、これらの有名人が詐欺広告に関与している事実はなく、多くの場合、本人や所属事務所が注意喚起を行っている。しかし、その情報が被害者に届く前に詐欺が成立してしまう点が問題である。


偽の投資話を持ちかけ高額な手数料や保証金を要求して金銭をだまし取る

SNS詐欺広告の最終目的は、投資を名目として金銭をだまし取ることである。広告をきっかけにLINEやTelegramなどのメッセージアプリへ誘導され、そこで「投資アドバイザー」や「専属サポーター」を名乗る人物が登場する。

彼らは、最初は少額の利益が出たかのように見せかけ、被害者に成功体験を与える。その後、「より大きな利益を得るためには手数料が必要」「保証金を預ければ安全に運用できる」などと説明し、高額な金銭を要求する。この段階では、被害者は既に心理的に深く関与しており、冷静な判断が難しくなっている。

金融犯罪の研究者は、この手法を「段階的コミットメント」と呼び、人が一度関与すると後戻りしにくい心理を利用した典型的な詐欺手法であると指摘している。


手口の主な流れ

きっかけ

詐欺は、SNS上に表示される広告や投稿をきっかけとして始まる。多くの場合、投資や副業、資産形成に関する内容であり、利用者の関心を強く引く表現が用いられる。

誘導

広告をクリックすると、偽のニュースサイトやランディングページに移動し、最終的にメッセージアプリへの登録を促される。ここで個別対応が始まる点が特徴である。

信用させる

詐欺師は、丁寧な言葉遣いや成功事例、偽の取引画面などを用いて被害者の信用を獲得する。場合によっては、少額の利益を実際に振り込むことで信頼を強化する。

金銭要求

十分に信用させた後、高額な手数料、保証金、追加投資を要求する。この段階で被害額が一気に拡大する。

連絡途絶

被害者が不審に思ったり、追加の支払いを拒否したりすると、突然連絡が取れなくなる。SNSアカウントやグループは削除され、資金は回収不能となる。


注意すべきポイント

「絶対儲かる」「元本保証」「あなただけに教える」などのうまい話には乗らない

投資の世界において「絶対」や「保証」は存在しない。金融庁も、これらの表現を用いる勧誘は原則として詐欺を疑うべきであると明言している。

有名人や企業の写真・ロゴを無断使用した広告は詐欺の可能性大

正規の広告では、無断使用は行われない。有名人がSNS広告で投資を直接勧誘すること自体が極めて不自然である。

振込先名義が個人名や外国人・振込先口座が毎回違う場合は要注意

正規の金融機関や投資会社であれば、振込先が頻繁に変わることはない。この点は詐欺を見抜く重要な手がかりとなる。

不自然な日本語の文章やURLが正規サイトと微妙に違う偽サイト

詐欺サイトでは、日本語表現に違和感があったり、URLが正規サイトと一文字だけ異なったりする場合が多い。


対策

安易に広告のリンクをクリックしない

SNS広告は利便性が高い一方で、危険性も併せ持つ。投資関連の広告は特に慎重に扱う必要がある。

SNSで知り合った人からの投資話は全て疑う

専門家の間では、「SNS経由の投資話は全て詐欺を前提に考える」ことが最も有効な防衛策であるとされている。

少しでも怪しいと感じたらすぐにSNSアプリを閉じる

違和感は重要な警告信号である。即座に距離を取る行動が被害防止につながる。

本当の儲け話を他人に教える人はいない

これは金融教育の基本原則であり、詐欺を見抜くための最も単純かつ有効な考え方である。


今後の展望

今後、SNS詐欺広告はさらに巧妙化すると予想される。AI技術によるディープフェイク動画や自動応答システムの普及により、詐欺師が個別対応するコストは低下し、被害対象は一層拡大する可能性がある。

一方で、プラットフォーム事業者による広告審査の強化、行政機関による法整備、金融リテラシー教育の充実が進めば、被害を抑制できる可能性もある。専門家は、技術的対策と教育的対策を並行して進める必要性を強調している。


まとめ

SNSの詐欺広告は、現代社会の情報環境と人間心理を巧みに利用した高度な犯罪である。有名人を装った広告や投資話は、誰もが被害者になり得る危険性を持つ。重要なのは、「うまい話を疑う姿勢」と「冷静な判断力」を常に保つことである。

個人の注意だけでなく、社会全体での情報共有と教育が不可欠であり、今後も継続的な対策が求められる。


参考・引用リスト

  • 警察庁「特殊詐欺の現状と対策」

  • 金融庁「SNSを利用した投資詐欺に関する注意喚起」

  • 消費者庁「デジタル広告と消費者被害」

  • 総務省「情報通信白書」

  • 日本経済新聞、朝日新聞ほか主要報道機関の特集記事

  • 金融犯罪研究者・心理学者による学術論文および解説資料


以下では、日本におけるSNSの詐欺被害の現状と、世界におけるSNS詐欺事情と対策について整理した説明を示す。公開データや公的機関の統計、報道および関連研究を基に構成している。


日本におけるSNS詐欺被害の現状

被害額と認知件数の増加

日本国内では、SNSを介した詐欺被害が年々増加傾向にある。警察庁をはじめとした統計を総合すると、2024年にはSNS型詐欺(投資詐欺・ロマンス詐欺など)の被害総額が過去最悪水準に達したとの報告がある。警察庁のまとめでは、特殊詐欺とSNS型詐欺を合わせた被害が約2,000億円に上ったとされ、SNS詐欺の大きな割合がこれに寄与しているとされる。

また、SNS型投資詐欺単体でも、2024年4月には単月で100億円を超える被害が観測されたほか、前年同期比で件数・被害額ともに大幅に増加したというデータも確認されている。

さらに、2025年の年間を通じても、SNS型投資やロマンス詐欺は高い水準で推移しているとの指摘があり、警察庁による最新データでも認知件数と被害額の増加が報告されている。

被害の特徴

日本におけるSNS詐欺被害には以下のような特徴が指摘されている。

  • 幅広い年代で被害が発生していること:高齢者だけでなく、若年層から中高年層まで幅広い年齢層で被害が確認されている。特に投資詐欺は比較的高額な金銭被害につながるケースも多い。

  • SNS広告やメッセージアプリによる誘導が主流であること:Facebook、Instagram、Twitter(X)などの広告や、LINE・メッセージアプリへの誘導が起点となるケースが多い。

  • 投資詐欺・ロマンス詐欺の混合型被害が多いこと:恋愛関係を装って信頼を得た上で投資話を持ちかけられ、金銭をだまし取られる「ロマンス詐欺」と投資詐欺が同時に発生するケースが目立つ。

このように、SNS詐欺は単なる情報もしくは広告の誤誘導ではなく、利用者を直接金銭的被害に導く具体的な犯罪として警戒されている。

技術と詐欺の巧妙化

詐欺手口の巧妙化も深刻な問題となっている。フェイク画像やAI生成コンテンツを利用して有名人の顔を偽装した広告を作成したり、精巧に作り込んだ偽の投資プラットフォームに誘導するケースが報告されている。高度な技術的手法により、従来の単純な詐欺とは異なる「本物らしさ」を感じさせる内容が増えており、ユーザーの識別能力を消耗させる傾向にある。

社会的・法的反応

被害拡大に対して、日本の警察や消費者行政機関は注意喚起を強化している。SNSプラットフォーム事業者とも協力して詐欺広告の削除やアカウント停止を進めるが、広告配信の審査強化やプラットフォーマーの責任範囲に関する議論は継続している。また、法的責任を問う取り組みも進みつつあり、広告を放置することそのものが幇助とみなされうるとの議論も出ている。


世界におけるSNS詐欺事情

グローバルな被害状況

SNS詐欺は日本だけの問題ではなく、世界的な現象である。英国の警察統計では、ここ数年間でSNS上の金融詐欺による被害が数千万ポンドに達しているとしており、FacebookやInstagramが詐欺プラットフォームとして最多の報告件数を記録している。

米国の消費者保護機関(Federal Trade Commission=FTC)のデータでも、SNSを起点とする詐欺被害が2021年以降で推定数十億ドルに及んでいるという報告が存在する(これは報告された被害額の一部に過ぎない可能性が高い)。

また、インドやブラジルなど複数の国々でSNS詐欺による高額被害事案が発生しており、特にAI生成コンテンツを利用したフェイク広告事件が摘発されている。ブラジルではディープフェイク(Deepfake)を悪用して有名人を装った詐欺広告で数百万レアルをだまし取った事件が報じられている。

国際的な傾向

複数国に共通するSNS詐欺のトレンドとして次の点が挙げられる。

  • 金融詐欺の増加:投資話や暗号資産取引を装った詐欺が特に多く報告されている。

  • 恋愛・雇用詐欺:ロマンス詐欺や仮想的な仕事オファーを餌に個人情報や金銭を盗み取る手口が広く見られる。

  • AIとディープフェイク技術の悪用:AI技術を用いて偽の人物像や音声・映像を生成し、信頼性を高める詐欺手法が増加している。

学術的にも、グローバル調査ではインターネット詐欺が国によって被害の表れ方や報告率に差はあるものの、全般的にSNSが主要な詐欺接点になっていることが示されている。

国・地域ごとの対策

規制と法執行

欧米諸国ではSNS詐欺に対してプラットフォームへの規制強化が進んでいる。たとえばEUのデジタルサービス法(DSA)では、SNS企業に対して違法コンテンツの迅速な削除と透明性報告を義務づけている。米国でも詐欺広告の掲載やその追跡について連邦法を適用する動きが強まっている。
また、ブラジルの最高裁判所は、SNS事業者が詐欺広告を迅速に削除しない場合に責任を問う判決を下しており、プラットフォーム側の対応責任を強化している。

プラットフォーム側の対策

SNS企業自身も詐欺防止の取り組みを進めている。Metaはスパムや詐欺アカウントの大量削除や検出システムを導入し、WhatsAppでは詐欺センターに関連するアカウントを数百万単位で停止したとの報告がある。ただし、企業の対応は常に十分というわけではなく、利益とのバランスを巡る批判や訴訟も発生している。

教育・啓発

多くの国で、消費者保護機関や教育機関がSNS詐欺に対する教育プログラムや注意喚起キャンペーンを実施している。特に若年層や高齢者を対象に、詐欺の典型的な特徴や注意点を伝える取り組みが進んでいる。


比較と課題

日本と世界のSNS詐欺事情を比較すると、以下の点が共通および差異として挙げられる。

  • 共通点:SNS詐欺は被害拡大が世界的なトレンドであり、金融詐欺やロマンス詐欺の被害額が大きいこと。AIやディープフェイクなど技術的な挑戦が進行していること。

  • 差異:法規制の厳格性やプラットフォーム規制の実効性には国ごとに差があり、欧州は比較的規制が強い一方、米国やアジアでは対応のスピードや強度にばらつきがある。


まとめ

日本国内では、SNSを起点とした詐欺被害の件数・被害額が年々増加し、社会問題化している。投資詐欺やロマンス詐欺は特に重大な被害を生んでおり、技術的に巧妙化する詐欺手口に対応した対策が求められている。一方、世界的にもSNS詐欺は深刻な問題であり、規制強化、プラットフォーム措置、教育啓発など多面的な対策が進められている。今後は各国間の協力やグローバルな対策枠組みの整備が重要となる。

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