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ハイチ首都で燃料価格急騰に抗議するデモ、ギャング戦争続く中


暫定政権は今月初め、ディーゼル価格を約37%、ガソリン価格を約29%引き上げた。
ハイチ、首都ポルトープランスの通り(ロイター通信)

カリブ海の島国ハイチで13日、燃料価格の急騰に対する不満が高まり、首都ポルトープランスで労働者による大規模な抗議デモが発生した。生活費の急激な上昇に対し賃上げを求める声が広がり、社会不安が一層深刻化している。

デモは市中心部にある工業団地の労働者を中心に行われ、1000人以上が参加した。参加者は「空腹では黙っていられない」と叫び、最低賃金の引き上げを強く求めた。多くの労働者は2023年以降賃上げが行われていないと訴え、現在の収入では生活必需品すら賄えないと不満を爆発させている。

背景には燃料価格の急騰がある。暫定政権は今月初め、ディーゼル価格を約37%、ガソリン価格を約29%引き上げた。中東情勢、特にイラン戦争の影響で世界的に原油価格が上昇し、その余波が国内経済を直撃した形だ。

労働者への影響は深刻である。ある縫製工場で働く男性は日給685グールド(約830円)しか得られない一方、ガソリン1ガロンはそれを上回る価格になっていると語る。通勤費の高騰により、以前は公共交通機関を利用していたが、現在は節約のため片道1時間を徒歩で通勤せざるを得なくなったという。

また、交通費の上昇だけでなく、食料や生活必需品の価格も連動して上昇し、日々の食事さえ確保できないとの声も多い。別の労働者はAP通信の取材に対し、「働いても食べられない」と述べ、生活の限界に達している現状を訴えた。抗議参加者の中には、要求が受け入れられなければさらなる行動も辞さないとする強硬な姿勢を示す者もいる。

ハイチではもともと貧困と治安悪化が深刻で、ギャングによる支配が広がる中で輸送コストがさらに押し上げられている。ポルトープランスの9割がギャングの支配下にあり、運送業者は通行料を支払う必要があるため、その負担が最終的に消費者へ転嫁されている。こうした状況が物価高騰に拍車をかけている。

さらに、同国では人口のほぼ半数が食料不安に直面し、今回の燃料価格上昇は人道危機を一段と悪化させる要因となっている。国連もすでに脆弱な社会基盤が崩壊しかねないと警告している。

こうした中、労働者たちは単なる賃上げにとどまらず、労働環境の改善や政府の具体的な対応も求めている。しかし、財政難や国際的なエネルギー市場の影響を背景に、即座の対応は難しいとみられる。

燃料価格の高騰が引き金となった今回の抗議はハイチ社会が抱える構造的な問題を浮き彫りにした。貧困、インフレ、治安悪化が複合的に絡み合う中で、国民の不満は限界に近づいており、今後さらなる抗議や混乱が拡大する可能性も指摘されている。政府はどのように対応するか、社会の安定を左右する重要な局面となっている。

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