◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ハイチ当局は26日、首都ポルトープランスの警察がギャングの暴力に抗議するデモを行い、政府庁舎や空港に突撃したと発表した。
100人以上の警察官がギャングの暴力、同僚の死、そして政府に抗議し、タイヤを燃やし、監視カメラを壊し、パトカーを破壊した。
AP通信によると、数人の警察官が首相府に押し入り、ポルトープランスの国際空港でも乱闘騒ぎがあったという。
ギャングの暴力で今年死亡した警察官は確認できているだけで14人に達した。地元メディアによると、警察官数人の行方が分かっていないという。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは半年ほど前から複数の武装ギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げており、国連はこの抗争で民間人数百人が死亡または行方不明となり、数十万人が国内避難民になったと推定している。
25日には警察官7人が銃撃戦で死亡した。APによると、北部の町の警察署内で署員2人が射殺。さらに署外では4人が処刑され、別の地域で1人の死亡が確認されたという。
ポルトープランスでは警察官以外の市民もギャングの暴力に抗議するデモを行った。
APによると、怒れる警察官数人が首相府に乗り込み、同僚と衝突したという。
別のデモ隊はアルゼンチンから帰国したアンリ(Ariel Henry)首相に直訴するため、ポルトープランスの国際空港に突撃したと報告されている。
デモ隊は空港の窓を割って侵入し、アンリ氏一向に迫ったが、地元メディアによると、アンリ氏はデモ隊の追撃をかわしたという。
抗議デモの影響でポルトープランスの企業や学校は閉鎖を余儀なくされている。
ギャングはポルトープランスの約60%を支配したとみられ、今月初めに任期満了を迎えた上院議員10人の選挙も行えていない。
アンリ氏は昨年10月、国際社会に平和維持軍を派遣するよう訴えたが、国連安保理はギャングに制裁を科すのみで、PKO派遣には言及していない。
国連のグテレス(António Guterres)事務総長も今週、ハイチにPKOを送るよう国際社会に改めて呼びかけた。
米国とカナダはハイチ国家警察に装甲車や装備を供与しているが、同警察は資金および人員不足に悩まされ、ギャングの暴力に圧倒されている。
ギャングは昨年9月、ポルトープランスの港にある燃料ターミナルを占領し、ガソリンの配送を妨害。これにより、医療機関や企業は活動停止を余儀なくされた。
警察は昨年11月に燃料ターミナルを奪還したものの、治安が回復する兆しは見えず、衛生状況の悪化でコレラが蔓延し、子供を含む多くの市民が治療を受けられず苦しんでいる。
国連のハイチ特使は25日、「この国は危機に瀕している」と声明を出し、国際社会に改めて支援を呼びかけた。「ギャングの暴力が新たなレベルに達しているのはご存じのとおりです。2022年には6時間に1件、誘拐事件が発生しました...」
特使は「追加支援なしでギャングに打ち勝つことはできない」と言明した。「支援がなければ、ハイチはギャングが統治するならずもの国家になるでしょう...」