◎ケニアを含む多くのアフリカ諸国が遠隔地への医療サービス提供に苦労している。
星空を眺めるラクダ(Vuong Viet/Pixabay)

ケニアの首都ナイロビから340kmほど離れたサンブル県マララルのラクダは医療器具を遠隔地に運んでいる。

ケニアを含む多くのアフリカ諸国が遠隔地への医療サービス提供に苦労している。

NGOコミュニティ・ヘルス・アフリカ・トラスト(CHAT)はラクダを使って遠隔地に医薬品などを届けている。

CHATの看護師チェゲ氏はアフリカニュースの取材に対し、「私たちは医療サービス、家族計画サービス、駆虫などの予防サービスを提供しています」と説明した。

CHATの主な使命は、弱い立場の人々が医薬品を入手できるよう支援することである。

チェゲ氏は、「私を含むCHATのボランティアは遠隔地で患者を探し、必要に応じて医薬品を提供したり、最寄りの医療施設を紹介したりしています」と語った。

CHATの代表によると、ラクダは重い荷物を運ぶことができ、車では近づけないエリアにも入ることができるため、医療サービス支援に適しているという。

ラクダは暑さに強く、砂地や岩場での歩行を可能にする厚く大きな肉球を持っており、砂漠の移動に欠かせない存在である。また長い脚は体温を逃がし、厚いまつ毛は砂から目を守る役割を果たしている。

21年前に誕生した「蹄の移動診療所(The mobile clinic on hooves)」は10頭のラクダと医療従事者、ラクダ使いのチームで構成され、夜明けとともに診療を開始する。

医療スタッフはHIV/AIDSのカウンセラーなどで構成されている。

チームは医療支援を必要とする遠隔地に到着すると、テントを張り、地域の住民に医療を提供する。活動期間は1エリアで2~3日。

ラクダは最大80人に医療サービスを提供できる道具を運ぶ。

CHATによると、利用者の多くが貧困世帯で、食事もままならず、医療施設が近くにないため必要な医療を受けることができないという。

CHATの臨床医であるングイア氏は、「性病に悩む女性が非常に多い」と述べた。「遠隔地で性暴力を受けた女性はひとりで悩み、苦しみ、必要な医療を受けれずにいます。その数は非常に多いですが、蹄の移動診療所が活動を始めて以降、多くの女性が医療を受けられるようになりました...」

半遊牧民のコミュニティは牧草や水を求めて定期的に移動しているため、移動診療所の活動が命を救うことになる。

CHATは半遊牧民のコミュニティにHIV/AIDSの検査やカウンセリング、抗レトロウイルス療法の紹介、性の知識と性教育のパンフレットなども提供している。

蹄の移動診療所の活動開始以来、遠隔地で暮らす10代の妊娠数は大幅に減少したと報告されている。

医療スタッフはマラリア患者も治療している。

CHATは寄付金で運営されているため、移動診療の回数は年間4回、2週間と限られており、その間、遠隔地の住民は猛暑、脱水症状、野生動物、コミュニティ間の紛争といった困難と戦わなければならない。

CHATによると、チームのラクダはおおむね健康で、この10年の間に死んだラクダはわずか4頭だという。

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