◎国連安全保障理事会は7月8日に同ダムの10年にわたる論争について協議する会合を開く予定。
2019年9月26日/エチオピア、ベニシャングルグムズ地方、大エチオピア再生ダム(ロイター通信/Getty-Images)

エジプト政府は5日、エチオピアがナイル川の主要支流で建設中の大エチオピア再生ダムの貯水を始めたと報告した。

エジプトの灌漑(かんがい)省は5日の声明で、「モハメッド・アブデル・アティ(灌漑)大臣はエチオピア政府からダムの貯水を開始するという公式通知を受け取った」と述べた。

灌漑省は声明の中で、「エジプトはエチオピア政府の一方的な決定に断固として反対する」と非難し、2015年の協定に違反していると述べた。

国連安全保障理事会は7月8日に同ダムの10年にわたる論争について協議する会合を開く予定。アフリカ連合(AU)は今年4月にエジプト、エチオピア、スーダンの3ヵ国協議を仲介したが、交渉に進展は見られず、緊張が高まっていた。エジプトとスーダンの灌漑相も8日の会合に出席する。

エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領は今年、エジプトのナイル川の取水量を減らすと主張するエチオピア政府に強く反発していた。アッ=シーシー大統領はエジプトのシェアに「触れた」場合、「すべての選択肢を開く」と述べ、紛争も辞さない構えを見せたうえで、エチオピア政府にさらなる協議を求めた。

エチオピアの国営メディアによると、ダムは80%完成しており、2023年に運用を開始する予定だという。大エチオピア再生ダムの発電能力はアフリカの水力発電所で最大、世界でも7位に相当する。

エジプトとスーダンはダムに水を充填する速度と、干ばつ発生時の運用方法に焦点を当てている。両国は干ばつが発生した際、下流への放水量が制限されることで深刻な水不足が発生すると懸念している。

エジプトとスーダンはダムの適切な運用方法の確立と、法的拘束力のある協定の締結に向け、アメリカ、国連、EUに繰り返し仲介を呼びかけてきた。

エジプトの水供給はナイル川に大きく依存しており、ダムが適切に運用されなかった場合、エジプトだけでなく下流域の全ての住民に深刻な影響が出る可能性があると主張している。一方、エチオピア政府は、ダムは地域の電力の安定供給に欠かせないと主張している。

スーダンは、「大エチオピア再生ダムはナイル川の主要支流である青ナイル川の水力発電ダムを保護する」と期待を寄せているが、エチオピア政府にダムの運用に関するデータの公開と共有を求めている。

大エチオピア再生ダム

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