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ネパール総選挙、元ラッパーのシャー氏が首相就任へ

シャー氏は1990年生まれの35歳。土木・構造工学を学んだエンジニアで、2010年代には政治風刺や社会問題をテーマにしたヒップホップで人気を集めたラッパーとして知られていた。
2026年2月28日/ネパール、新興政党「国民独立党(RSP)」のバレンドラ・シャー氏(Getty Images)

ネパールで3月5日に行われた総選挙の結果、元ラッパーの政治家として知られる若手指導者バレンドラ・シャー(Balendra Shah)氏が次期首相に就任する可能性が高まっている。既存の政治勢力への不満が高まる中、若者を中心に支持を集めた同氏の急速な台頭は、同国政治の世代交代を象徴する出来事として注目されている。

シャー氏は1990年生まれの35歳。土木・構造工学を学んだエンジニアで、2010年代には政治風刺や社会問題をテーマにしたヒップホップで人気を集めたラッパーとして知られていた。音楽活動を通じて政治腐敗や社会的不平等を批判するメッセージを発信し、特に若い世代の支持を獲得してきた。

政治家としてのキャリアは2022年に首都カトマンズの市長選に無所属で出馬・当選したことが大きな転機となった。既存政党の候補を破る歴史的な勝利で、カトマンズで初めての無所属市長となった。市長在任中は交通対策やごみ処理の改善など都市行政の改革を掲げ、若者中心の支持基盤をさらに拡大した。

その後、2025年に発生した大規模な反政府抗議デモが政治情勢を大きく変えた。汚職や経済停滞に対する不満を背景に若者主導の抗議活動が全国に広がり、衝突で多数の死傷者が出る事態となった。最終的に当時のオリ(Khadga Prasad Oli)首相が辞任に追い込まれ、政治改革を求める世論が強まった。こうした状況の中で、既存政治への対抗勢力としてシャー氏への期待が急速に高まった。

シャー氏は改革志向の新興勢力である「国民独立党(RSP)」の首相候補として出馬。東部の選挙区で長年政界を主導してきたオリ氏と直接対決し、大差で勝利した。得票数は歴代最多とされ、政治的象徴となる勝利となった。

選挙ではシャー氏率いるRSPが多くの議席を獲得し、政府樹立に向けて主導権を握る可能性が高いとみられている。選挙戦では反腐敗、雇用創出、教育や医療の改善などを主要政策として掲げ、特に若年層や都市部の有権者から強い支持を受けた。SNSを活用した選挙運動も特徴で、従来の政治家とは異なるスタイルが支持拡大につながったと分析されている。

ネパールでは長年、ネパール会議派や共産党系など既存政党が政治の中心を担ってきたが、政治の不安定さや汚職問題への不満が根強い。人口約1900万人のうち半数近くが45歳未満で、若い有権者が政治変革を求める動きが強まっている。シャー氏の台頭はこうした世代の政治参加の拡大を象徴するものとみられている。

一方で、政治経験の浅さや実務能力を懸念する声もある。カトマンズ市長時代には都市の露天商への対応などをめぐって批判も受けた。もし首相に就任すれば、若者の期待を背負いながら、複雑な政治構造や官僚制度の改革に取り組む必要がある。

ラッパーから市長、そして首相候補へと駆け上がったシャー氏の政治的台頭は、ネパールの政治文化の変化を象徴する出来事といえる。若者の政治参加が高まる中、新しい指導者がどこまで実際の改革を実現できるかが今後の焦点となる。

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