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中国再生エネルギー、米イラン戦争が追い風に、世界市場で圧倒的存在感


中国は長年にわたり再生可能エネルギー分野や電気自動車、蓄電池といったクリーン技術への投資を進めてきた。
2025年7月1日/中国・青海省の太陽光発電設備(AP通信)

中東で続くイラン戦争により、世界のエネルギー市場が大きく揺らぎ、原油価格の急騰と供給不安が各国経済に深刻な影響を及ぼしている。こうした中、再生可能エネルギー分野で優位に立つ中国が、今回の危機を追い風に存在感を一段と強めている。

戦闘の激化や海上封鎖により、世界の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の機能が不安定化し、原油価格は一時1バレル=100ドルを超えた。これにより、各国はエネルギー安全保障の脆弱性を改めて認識し、化石燃料依存からの脱却を急ぐ動きが広がっている。

こうした状況は中国にとって戦略的な追い風となっている。中国は長年にわたり再生可能エネルギー分野や電気自動車、蓄電池といったクリーン技術への投資を進めてきた。その結果、現在では電気自動車生産の約7割、バッテリーセルの8割など、世界市場で圧倒的なシェアを握っている。

代表的な企業としては、電気自動車メーカーのBYDや電池大手のCATLが挙げられる。これらの企業は低コストかつ大量生産体制を背景に、世界的な需要拡大の恩恵を受ける立場にある。エネルギー価格の高騰により、各国で太陽光発電やEVへの関心が急速に高まり、中国製品への依存度はさらに増すとみられている。

実際、東南アジアや欧州では再生可能エネルギー導入を加速させる動きが顕著である。パキスタンやインドネシアなどでは太陽光発電の導入が進み、欧州でもEVや再エネへの投資が拡大している。エネルギー危機が「脱炭素化」を一気に後押しする構図となっている。

一方、米国は対照的なエネルギー政策を取っている。トランプ政権は化石燃料の増産を重視し、「エネルギー支配」を掲げて輸出拡大を進めてきた。しかし、今回の危機により、化石燃料中心の戦略は価格変動や地政学リスクに大きく左右されることが露呈した。結果として、再エネ分野で先行する中国との差が浮き彫りになっている。

さらに、中国はエネルギー政策を国家安全保障と結びつけ、長期的な産業戦略として推進してきた点も強みである。習近平政権は10年以上前から再エネ投資を拡大し、五カ年計画でも重点分野として位置付けている。こうした一貫した政策が、現在の競争力につながっている。

もっとも、中国も完全に無傷ではない。同国はイラン産原油の主要な輸入国であり、供給途絶は経済に打撃を与える可能性がある。また、エネルギー価格の上昇は製造コストの増加を通じて輸出にも影響を及ぼすとみられている。

それでも長期的には、今回の危機は「化石燃料依存からの転換」を加速させる契機となる可能性が高い。専門家は1970年代のオイルショックと同様に、エネルギー構造そのものを変える転換点になるとの見方を示している。

世界がエネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を模索する中で、中国はその両方に対応可能な技術と供給網を握る数少ない国となっている。イラン戦争が引き起こしたエネルギー危機は単なる一時的な市場混乱にとどまらず、国際的な産業構造や勢力図を塗り替える契機となりつつある。クリーン技術を巡る競争は今後さらに激化するとみられ、その中心に中国が位置する構図は当面揺らぎそうにない。

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