◎首都移転は2045年までに完了する予定。
2022年1月25日/インドネシア、首都ジャカルタの住宅街近くのごみ捨て場(Getty Images/AFP通信)

インドネシア政府と大統領府は混雑し、ゴミで汚染され、地震多発地帯であるジャワ島の巨大都市ジャカルタからボルネオ島に移転する取り組みを進めている。

ジョコ・ウィドド大統領は野心的な首都移転プロジェクトを称賛し、「新しい首都は人口を制限しながら公共交通機関を整備し、自然環境と政府庁舎を統合した素晴らしい都市になる」と述べた。

ウィドド大統領は先週の議会演説で、「首都ヌサンタラの建設はインドネシアの未来を決めると言っても過言ではない」と強調した。「政府の目標はグローバルに活躍できる競争力のある都市を構築し、グリーン経済、イノベーション、テクノロジーに基づきインドネシアを変革させる取り組みを加速させることです...」

しかし、一部の専門家は野生動物の宝庫であるボルネオ島の東部を256,000ヘクタール(東京23区面積の4倍)開拓するプロジェクトを「環境破壊」と呼び、懸念を表明している。プロジェクトの費用は340億ドル(約3.9兆円)と見積もられている。

ジャカルタに拠点を置く環境グループWALHIの代表は地元メディアのインタビューの中で、「首都移転プロジェクトに伴う環境影響調査は、少なくとも3つの問題点を指摘しています」と語った。「ヌサンタラの建設はジャングルを破壊し、動植物を脅威にさらし、島の汚染と環境破壊を加速させるでしょう」

首都移転プロジェクトは2019年に提案され、紆余曲折の末承認された。計画によると、政府はボルネオ島東部のジャングルを切り開き、政府庁舎とその他の建物を建設し、公務員約150万人を移転させる予定。

インドネシアは17,000を超える島々からなる世界最大の群島国家であり、ジャワ島の最大都市であるジャカルタの人口密度は1㎢あたり16,000人以上、ジャカルタ都市圏の人口は3,300万人を超え、インドネシアの人口の約54%がジャワ島で生活している。

ジャカルタは世界で最も急速に沈下している大都市と呼ばれ、現在の速度で沈下が進むと2050年までに都市の3分の1が水没する可能性があると推定されている。水没の主な原因は地下水の抽出で、温暖化による海面上昇が危機に拍車をかけている。

さらに、人口の急増により大気と水源はひどく汚染され、台風などによる大雨の影響を受けやすく、政府の見積もりによると、それらの対策に年間45億ドル(約5,100億円)もの費用がかかっているという。

建設プロジェクトを監視する専門家委員会にはUAE(アラブ首長国連邦)の皇太子、ソフトバンクの創設者である孫 正義CEO、トニー・ブレア元英国首相などが含まれる。

プロジェクト資金の19%はジャカルタ首都特別州が工面し、残りは政府および、国営企業と民間企業による投資で得る予定。

バスキ・ハディムルジョノ公共事業・国民住宅相は26日、「大統領官邸、国会、政府機関、およびヌサンタラと他の都市を結ぶ道路を建設するために必要な56,180ヘクタールの土地開拓事業の初期計画を承認した」と述べた。

ハディムルジョノ大臣によると、この初期計画でヌサンタラの中核地域が形作られるという。完成予定は2024年で、それまでに公務員約8,000人が移転する見込み。

ウィドド大統領は以前、「大統領官邸は2024年完了予定の第2期工事で完成する予定で、それまでに内務省、外務省、国防省、ジャカルタの事務局をヌサンタラに移転させたい」と述べていた。

首都移転は2045年までに完了する予定。

インドネシア大学の公共政策専門家であるアグス・パンバージョ教授はAP通信の取材に対し、「首都移転がジャカルタとそこで生活する人々に与える影響は現時点では分からないため、調査が必要」と強調した。「首都移転は全国の公務員、ジャカルタ都市圏の住民、地域社会、地域経済に大きな変化をもたらすでしょう」

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