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ネパールのZ世代、自分たちが選んだ政府に怒り、要求通らず

2025年9月8日、若者や学生を中心とした数万人のデモ隊は腐敗や機会不足、雇用問題、不適切な統治への怒りから首都カトマンズに集結し、警察のバリケードを突破して議会への突入を試みた。
2025年12月22日/ネパール、首都カトマンズ、反政府デモの参加者と治安部隊(AP通信)

ネパールで若者を中心とするZ世代の抗議デモが政府を転覆させ新政権を樹立したにもかかわらず、その政府への不満が再び噴出している。2025年9月8日、若者や学生を中心とした数万人のデモ隊は腐敗や機会不足、雇用問題、不適切な統治への怒りから首都カトマンズに集結し、警察のバリケードを突破して議会への突入を試みた。治安部隊との衝突は激化し、76人が死亡、2300人以上が負傷する深刻な被害が出た。これを受けてオリ(Khadga Prasad Oli)前首相率いる政権は崩壊、9月12日に初の女性首相となるカルキ(Sushila Karki)氏が暫定政権を率いることになり、2026年3月の総選挙を約束した。

しかし、デモを主導した多くの若者たちは、この暫定政権が公約を果たしていないとして再び抗議の声を上げている。デモに参加した22歳の男性は警察官に撃たれて足を失った。男性はAP通信の取材に対し、「われわれがもたらした政府は何も成し遂げていない」として後悔を語った。腐敗の根絶や暴力を振るった治安部隊関係者の逮捕などの要求が満たされていないと批判しているのだ。

暫定政権はこれまでに大きな汚職事件を調査してきたが、抗議者が名指しした主要政治家は含まれておらず、9月に死傷者が出た際の責任者に対する捜査や処罰も進んでいない。また、腐敗を告発された政治家の多くは3月の総選挙への出馬準備を進めており、抗議者らの不満は高まっている。これらの不満を背景に、年末から首相官邸前などで再び若者たちの抗議集会が複数回開かれ、警察が一部を制止する場面も見られた。

抗議運動は中心的なリーダーや統一された要求が存在しない点も混迷を深めている。若者たちの要求は多岐にわたり、首相の直接選挙の実施、現行憲法の廃止、過去の政治家全員の投獄など、グループごとに異なる目標が提示されている。このため、運動全体の方向性に一貫性が欠けるとの指摘がある。アナリストは、「抗議者グループ間の要求と政府樹立過程に関する明確さの欠如が、現在の混乱の核心だ」と分析している。

暫定政権側は、約束した総選挙を予定通り3月5日に実施する意向を示している。カルキ氏は「選挙の準備はほぼ完了しており、治安環境も大幅に改善された」として選挙実施の確約を強調した。一方で、抗議者の中には選挙だけでは不十分だとし、総選挙自体への反対を唱えるグループも現れている。

専門家は、当初のデモが腐敗とソーシャルメディア規制への反発から始まったものの、その後の展開には計画性が欠け、暫定政権に対する具体的な求心力を失っているとの見方を示している。また、ネパールの憲法には暫定政府設置に関する明確な規定がなく、現状の政治プロセスは例外的な対応によって進められていると指摘されている。こうした政治的混乱の中で、3月の選挙が予定通り行われるかどうかには依然として不透明感が漂っている。

今回の動きは、民主化を求めて立ち上がった若者たちがその後の政治に対して深い失望を抱くという複雑な展開となっており、ネパールの政治情勢に新たな課題を突き付けている。

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