◎バングラデシュで大規模な工場・建物火災は決して珍しくない。
2022年6月5日/バングラデシュ、南部チッタゴン近郊シタクンダのコンテナ倉庫(AP通信)

バングラデシュ当局は6日、南部の主要港チッタゴンの近郊で発生したコンテナ倉庫の火災について、これまでに少なくとも49人の死亡を確認し、死者はさらに増える可能性があると報告した。

地元メディアは当局者の情報を引用し、「消防と警察は出火原因を調査しているが、原因究明には時間がかかる可能性が高い」と報じている。

火災はオランダとバングラデシュの会社が共同出資する物流拠点(BM Container Depot)で4日遅くに発生した。現場はチッタゴン近郊のシタクンダと呼ばれる地区内。

地元メディアなどは「過酸化水素の入ったコンテナから出火し、急速に燃え広がった可能性がある」と報じているが、事実か否かは不明。

消防当局によると、現場で消火にあたった消防士は化学物質が保管されていることを知らされず、大爆発に巻き込まれたという。ロイター通信は、「最初の爆発が発生した時、コンテナの近くには倉庫の作業員数百人と消防士数十人がいた」と報じている。

この爆発に巻き込まれたとされる消防士9人が死亡した。

バングラデシュ貨物輸送協会は5日、AP通信のインタビューの中で、「化学物質が入ったコンテナは、輸出待ちの他のコンテナと一緒に保管されていた」と語った。

地元メディアは当局の情報を引用し、「十数個のコンテナに過酸化水素が保管されていたことを確認したが、火元はまだ分かっていない」と報じている。

地元紙デイリー・スターは6日、「この火災はバングラデシュのボロボロの安全基準に再びスポットライトを当てた」と報じた。「脆弱な安全基準とボロボロの管理体制でこのような火災を防ぐことはできないでしょう...」

国際労働機関(ILO)は2020年の報告書で、「バングラデシュの安全基準は非常に未熟である」と述べている。

またILOはバングラデシュ政府に、「産業界の管理体制と信頼性を向上させ、説明責任を果たさせる構造を確立する必要がある」と指摘していた。

当局は6日、多くの遺体の身元が確認できないとして、倉庫の従業員家族からDNAサンプルの収集を開始した。

地元メディアによると、現場検証にはバングラデシュ軍の爆発物処理班と思われる専門家が同行したという。爆発は近くの建物の窓ガラスを砕き、4km先まで響いたと伝えられている。

また地元メディアによると、犠牲者は6日午前の時点で49人のままだが、一部の負傷者は重体と伝えられており、その数はさらに増える可能性がある。

バングラデシュで大規模な工場・建物火災は決して珍しくない。

2012年に首都ダッカの衣料品工場で発生した火災では労働者117人が死亡した。工場の出入り口は外側から施錠されていた。

その翌年には、ダッカ郊外のラナプラザの衣料品工場が倒壊し、1138人が死亡するという同国史上最悪の産業事故が発生し、安全基準の低さが浮き彫りになった。

2019年にはダッカのアパート、店舗、倉庫が所狭しと並ぶ密集地で火災が発生し、少なくとも67人が死亡した。この地区では2010年にも化学物質を違法に保管していた施設で火災が発生し、120人以上が死亡している。

2021年には、ダッカ郊外の飲料工場で火災が発生し、少なくとも52人が死亡。工場の出入り口は外側は施錠されていた。

雇用主は労働者の無断外出を防止するため、しばしば工場の出入り口を外側から施錠する。

2022年6月5日/バングラデシュ、南部チッタゴン近郊シタクンダのコンテナ倉庫(AP通信)
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