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オーストラリアSNS禁止法施行、強硬な規制に賛否、裁判も

今回の法改正は「子どものオンライン安全」をめぐる世界初の大きな試みとなる。
オーストラリア、シドニー、スマートフォンを操作する小学生(AP通信)

オーストラリアで12月10日、16歳未満の児童・青少年に対する主要ソーシャルメディア利用を禁止する法律が施行された。対象となるのはFacebook、Instagram、TikTok、YouTube、Snapchat、Xなど主要プラットフォーム。これらプラットフォームは規則に従わなければ最大で5000万豪ドル(約3300万米ドル)の制裁を受ける可能性がある。

この措置により、サウスオーストラリア州の牧場で暮らす15歳の少年アレン(Riley Allen)くんは遠く離れた友人たちとの連絡手段を失うのではないかと不安を口にする。

アレンくんの家族が住む地域は人口1000人ほどの小さな共同体で、学校の友人の中には70キロ以上離れた場所に住む人もいるという。アレンくんはAP通信の取材に対し、「休み中、どうやって互いに連絡を取り合えばいいか分からない」と語った。

アレンくんの母親は「私たちはルールを受け入れるが、子どもたちは抜け道を探すだろう」と語る。実際、昨年彼女は息子のソーシャルメディア利用を数週間禁止した経験があり、それが学業に良い影響を与えたと振り返る。だが今回のような“一律禁止”は、自治や家庭での取り決めとは異なる強制力を伴う。

一方で、この法律は早くも法廷で争われている。15歳の原告2人が憲法で保障された表現・政治的コミュニケーションの自由を侵害されるとして、裁判所に提訴。若者の声を社会から“遮断”してしまう一律の禁止は不当だという主張だ。

このような強硬な規制には賛否がある。支持者の多くは、子どもたちを有害コンテンツや依存から守り、睡眠や学業、精神衛生の改善につなげるべきだとして歓迎している。

しかし批判する声も大きい。特に遠隔地や障害を持つ若者にとって、ソーシャルメディアは友人やコミュニティとつながる貴重な場だった。ある例として、障がいを抱える15歳の少年は、「学校に行けない日が多く、ネット上でしか友人とやりとりできない」と訴えている。

また、専門家の間ではこのような全面禁止は「あまりに粗雑かつ現実的でない対応」との指摘もある。利用者の年齢を正確に確認する技術は完璧ではなく、偽造やVPNの利用といった抜け道を若者が探す可能性が高いためだ。結果として、禁止対象外のアプリや裏ルートへ流れるだけで、問題を根本的に解決できない恐れがあるという。

今回のオーストラリアの法改正は「子どものオンライン安全」をめぐる世界初の大きな試みとなる。しかし、その効果と代償は国民規模でこれから検証されるだろう。若者のつながり、表現の自由、そして社会参加のあり方を問い直す契機となる。

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