SHARE:

米財務省、ベネズエラ政府によるマドゥロ前大統領への弁護士費用支払い認める

これまで問題となっていたのは、弁護費用の支払いをめぐる制裁の扱いである。
2026年1月3日に米当局が公開した写真、逮捕されたベネズエラのマドゥロ大統領(ロイター通信)

米国政府が麻薬関連容疑で訴追されているベネズエラ前大統領の弁護費用をめぐり、対ベネズエラ制裁の一部を緩和する方針を決めた。これにより、ベネズエラ政府が被告の弁護士費用を支払うことが可能となり、裁判の進行に影響を与える可能性がある。

対象となっているのは、米国で麻薬密輸などの罪に問われているマドゥロ(Nicolas Maduro)前大統領である。マドゥロは今年1月、首都カラカスに対する米軍の軍事作戦で拘束され、妻とともにニューヨーク州へ移送された。2人は「麻薬テロ」への共謀など複数の罪で起訴されているが、いずれも無罪を主張、公判を待っている。

これまで問題となっていたのは、弁護費用の支払いをめぐる制裁の扱いである。米国は長年、マドゥロ政権に対して経済制裁を科してきたが、その一環としてベネズエラ政府からの資金が弁護団に渡ることも制限されていた。このため弁護人は依頼人が自ら選んだ弁護士を確保する権利が侵害されていると主張し、訴追の取り下げを求めていた。

弁護側は資金凍結によって適切な弁護ができない状況は、合衆国憲法が保障する「弁護人を選任する権利」に反すると訴えていた。特にマドゥロ自身には十分な私的資産がなく、政府資金に頼らざるを得ないとされる中で、制裁がその権利を事実上奪っていると強調していた。

こうした状況を受け、NY連邦裁判所は制裁によって被告の権利が制限されることに懸念を示していた。司法の公正性を確保する観点から、制裁と刑事手続きのバランスが問われる形となっていた。

今回、財務省が制裁の運用を見直し、ベネズエラ政府による弁護費用の支払いを認めることで、こうした法的対立の一部が解消される見通しとなった。裁判の中断や却下といった事態を回避し、審理を前進させる狙いがあるとみられる。

もっとも、この決定は政治的にも複雑な意味を持つ。マドゥロをめぐっては、米国が長年にわたり強硬な制裁と圧力を続けてきた経緯があり、その資金の使用を一部とはいえ認めることは、対ベネズエラ政策の柔軟化とも受け止められかねないためである。

一方で、刑事司法の手続きにおいては、被告の権利保障が優先されるべきだとの考え方も根強い。今回の措置は外交政策と司法原則の間での調整の結果ともいえる。

今後の焦点は実際の裁判でどのような証拠や証言が提示されるかに移る。麻薬テロという重い罪は有罪となれば長期刑が避けられず、判決は米国と中南米の関係にも影響を及ぼす可能性がある。今回の制裁緩和はその前提となる公正な裁判環境を整える一歩と位置づけられる。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします