チリ大統領選決選投票、右派のカスト氏が勝利
選挙管理委員会によると、開票率99.9%時点でカスト氏の得票率は58.2%、ハラ氏は41.8%にとどまった。
と妻(AP通信).jpg)
チリで12月14日、大統領選決選投票が行われ、ホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast、59歳)元下院議員が大差で勝利し、35年ぶりとなる右派政権の誕生が確実となった。
カスト氏は左派のジャネット・ハラ(Jeannette Jara、51歳)前労働・社会保障相を圧倒。チリの政治地図を大きく塗り替えた。今回の選挙は治安悪化や移民問題への不満が強まる中での保守回帰を象徴するものとなった。
選挙管理委員会によると、開票率99.9%時点でカスト氏の得票率は58.2%、ハラ氏は41.8%にとどまった。ハラ氏は中道左派連合を代表し共産党系の政策を掲げて支持を拡大しようとしたが、カスト氏の優勢を覆すことはできなかった。ハラ氏は14日、敗北を認め、支持者に対して「民主主義が明確な意思を示した」と述べた。
カスト氏はカトリック信仰を持ち道徳保守の立場から、厳格な治安対策と移民政策の強化を主張してきた人物である。治安悪化に対して有権者の不安が高まる中、犯罪と不法移民の根絶を重要政策として訴えた。これには不法滞在する移民の大量送還や国境管理の厳格化といった厳しい方針も含まれ、これが支持を集めた一因とみられる。
カスト氏は過去2回、大統領選で敗北、3度目の挑戦で初当選を果たした。この勝利はチリ政治における右派勢力の復権を象徴する出来事であり、南米全体でみられる右傾化の潮流と符合するものと評価されている。多くの有権者は、ボリッチ政権下での犯罪増加や経済政策に不満を示し、より強硬な政策を求めていた。
一方、ハラ氏は労働・社会保障分野での実績をアピールし、社会的公正の実現を訴えてきたが、有権者の安全保障への関心を覆すことはできなかった。同氏は敗北を認める際、支持者に対し、政治的な多様性の重要性と今後の民主主義的プロセスへの参加を呼びかけた。
カスト氏は就任後、治安強化や移民政策に重点を置くと予想されるが、議会内における勢力配分を考えると、すべての公約を直ちに実行に移すのは困難との指摘もある。特に中道勢力や穏健な与野党間での調整が政策実現には不可欠であり、幅広い合意形成が求められる。
今回の選挙は経済・治安・移民といった国民の生活に直結する課題が選挙戦の主軸となった象徴的な戦いであり、チリの政治がより保守的な方向へ大きく舵を切ったことを示している。今後、カスト政権がどのように国内外の課題に取り組むか、大きな注目を集めることは間違いない。
