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チリ北部でM5.6の地震、津波・被害の情報なし

地元テレビ局は複数のコミュニティで揺れが感じられたと伝えている。ケガ人や建物被害の情報はない。
チリ、タラパカ州の夜景(Getty Images)

南米チリ・タラパカ州で19日、マグニチュード5.6の地震が発生した。

米地質調査所(USGS)と欧州地中海地震センター(EMSC)によると、震源地は北部タラパカ州郊外、震源の深さは89キロ。津波は発生しなかった。

地元テレビ局は複数のコミュニティで揺れが感じられたと伝えている。ケガ人や建物被害の情報はない。

チリは世界有数の地震多発国として知られている。その理由は、南米大陸の西側を走る巨大なプレート境界にある。ここではナスカプレートが南米プレートの下に沈み込む「沈み込み帯」が形成されており、この構造がチリの地震活動の根源となっている。プレート同士の衝突によりひずみが蓄積し、それが限界を超えると大規模な地震として放出される。特にチリ沿岸は世界最大級の地震を繰り返してきた地域であり、地震学において極めて重要な観測対象となっている。

歴史的に最も有名なのは1960年に発生した「チリ大地震」である。マグニチュード9.5を記録し、観測史上最大の地震とされる。この地震は南部バルディビア付近を震源とし、広範囲に甚大な被害を与えた。津波は太平洋全域に到達し、日本やハワイでも被害を出した。さらに2010年にはマウレ地震(M8.8)が発生し、チリ中部に壊滅的な被害をもたらした。このようにチリは数十年おきに世界的規模の巨大地震に見舞われている。

チリの断層は主に2種類に分類される。一つは沿岸付近の「メガスラスト断層」で、これは沈み込み境界に沿って形成される巨大な逆断層である。ここでの滑りが巨大地震の直接的原因となる。もう一つは大陸内部に形成された「二次的断層」で、プレートの衝突による圧縮力が内陸に伝わり、正断層や横ずれ断層を生じさせる。これらは比較的小規模だが局地的な被害を引き起こす。特にアンデス山脈の形成に関連する断層帯は活発であり、地震の分布にも影響している。

また、チリはプレート境界に沿って火山帯が連なり、地震と火山活動が密接に関連している。プレート沈み込みに伴い発生するマグマ上昇はアンデス火山帯を形成しており、地震後に火山噴火が誘発される例も少なくない。地震と火山が同時にリスクとなることは、チリの自然災害を一層複雑なものにしている。

このような地質的背景から、チリは世界で最も地震観測網が発達した国の一つとなった。国内の耐震基準も厳格であり、高層建築やインフラは巨大地震を想定して設計されている。とはいえ、M9級の超巨大地震は甚大な被害を避けがたく、津波被害を含めた防災対策が常に課題となっている。チリの地震と断層はプレートテクトニクスの力学を直接示す典型例であり、その観測と研究は地震学全体にとって極めて重要な意味を持つ。

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